ヘッドは “ネック端上の構築物”であるということ

弦楽器のネック端 ( Neck end )とリレーションするヘッド基部には、表情豊かな響きのために 緻密な工夫がされていました。

それは、外力が加えられても接合部が変形しない剛接合( 一体化するようにした接合方法。)ではなく、ピン接合( 部材同士を一体化させずに留める接合方法。)のような構造に似せて彫り起すことで、回転運動などの揺れを誘導するイメージであったと 推測できます。

引いては、ヘッド部においても揺れの基本原理は『ねじり』によるものだということを証していると感じられます。

因みに 私はそれを考えるとき、類似した事例として ブロー・ノックス・デュアル・キャンチレバー・タワー 、別名 “ダイヤモンド・アンテナ” ( Blaw-Knox dual cantilevered towers.  A.k.a. “Diamond antenna”. )を思い浮かべます。

“ダイヤモンド・アンテナ”は多数建設されましたが、たとえば 1933年にハンガリー・ブタペスト(  Lakihegy )に建設されたものは 314.0m( 1,031 フィート )という高さで、これは当時のヨーロッパでは 最も高い構造物だったそうです。

その” Lakihegy ” タワーは ドイツ軍により破壊されてしまいましたので、その竣工翌年である 1934年にアメリカ・オハイオ州 メイソンに WLWアンテナとして建設された “ダイヤモンド・アンテナ”を具体例として挙げたいと思います。

この WLWアンテナは 高さが 831フィートで竣工して、その後の事情により 227.5m( 747フィート )に改造されて現在に至っています。

Blaw-Knox dual cantilevered tower, “WLW”.

冒頭にあげさせていただいた、この “ダイヤモンド・アンテナ”の設置作業写真で確認できるように、上部に置かれた 226m程もある構造物 136t の荷重はこのフレキシブル・ベースの一点で支えられています。

このために台座部は 落雷などの厳しい自然現象にも耐え、また 塔全体をアンテナとして機能させるために 地面から絶縁されていなければならないなどの条件もクリアーした上で、300t 以上の負荷がかかっても破損しないように設計されているそうです。

ともあれ・・ ここで 注目したいのは、部材同士を一体化させずに留める接合方法であるピン接合では、回転できることにより構造物上部の変形( 運動 )は大きくなるということです。

●  支持ケーブル 2段型( “Diamond antenna”, Support cable 2-stage type )

●  支持ケーブル中央型( “Diamond antenna”, Support cable central type )

この時に重要なのは、その “ダイヤモンド・アンテナ”が 支持ケーブルが取り付けられた 支線塔( Guyed mast )であるということです。

下図のように、強風や地震などにより支線塔に生じる 水平変形は『節』となる支持ケーブルの取り付け方が 大きな違いの原因となっています。

私は、支持ケーブルが 2段以上で建設された“ダイヤモンド・アンテナ”で生じる『スネークダンス』と言われる変形モードを、特に興味深いと感じました。

ちなみに 五重塔のような多層塔でも、強風や地震時に構造体の上方になるに従い揺れが大きくなる基本モードのほかに、地震の揺れが細かく加速度が大きい場合には『スネークダンス』モードを観察できるそうです。

ですが、五重塔は 外見上の印象が似通っている割には『くせ者』で、 下図のように”心柱”の条件設定ひとつとってもバリエーションが多く、因果関係が判断しにくいと思います。

ついでにもう一項目いくと・・ この表から 先端に行くほど”腹”として揺れるはずの屋根に乗せられた寺社瓦や檜皮、木板などの荷重条件を確認してから、そのゆれ方を想像してみてください。難問であることがすぐにわかります。

さて、ここから シンプルな“ダイヤモンド・アンテナ”の変形モードの話に戻りましょう。

私は ヴァイオリンや チェロのヘッドに生じる振動モードのひとつは、取り付けられた複数のペグが 支線塔の支持ケーブルと同じように”節”として機能する『スネークダンス』モードだと考えています。

この時に その基礎部となるネック端と ペグボックスが繋がっている部分を『ピン接合』のようにまでとはいかなくとも、多少でも 回転運動が生じやすいような条件設定をすると、構造物上部、特に頂点にある渦部( ボリュート )の振動は確実に激しくなります。

それが この投稿のテーマとしたヘッドは “ネック端上に構築されているという視点です。

では ここで、それが意識された状況証拠を 幾つかの”オールド・チェロ”で ご覧ください。

 

 

●  ヘッドとペグ位置の関係

 

2022-5       Joseph Naomi Yokota