軸線の役割について

軸線についてご質問がありましたので投稿いたします。
私は ヴァイオリンやチェロなどの軸線が節として動かないのは”一瞬だけ”であると認識しています。

それは 人間の二足直立歩行が 左の足で体重を支えることで右足を動かし、次の瞬間に移動した右足に体重を乗せ 左足の自由度をあげることでそれを動かすのに似ており、

下図で言えば 赤線が軸線として支えている瞬間に 点 aと点 b の側にゆるみが生まれやすくなり、つぎの瞬間にはモードが反転して線分 ab が軸線の役割をはたすというイメージです。


また、軸線のゆれを表板左側にあるバスバーに由来する軸線ゾーンの破損にみることも出来ます。

表板のなかでも剛性が高いはずの このゾーンが 最も破損していることは一見不思議ですが、私はこれが軸線がゆれた証明となっていると考えます。

これらの事などから 私は箱体のヴァイオリンでは X型と十字型の軸線が”対”で設定されていると考えるようになりました。

この X型と十字型の軸線はつり合った状態から ゆらすのにはより大きなエネルギーが必要となります。弦楽器の場合 これは音の立ちあがりが遅くなったり、鳴りにくい状態につながると思われます。

私は 弦楽器は これを避けるために”対”となっている軸線の一方に年輪をあわせることで意図的に差をつけてあったと思っています。

それは 響胴の左右で剛性差がつけられたことでねじりが生じやすくなり、スムーズなレスポンスが得られると考えられるからです。

それから、軸線は年輪やバスバーだけではなく 私が参考例としてあげている 1736年頃の製作とされるストラディバリウス ( Antonio Stradivari c.1736 violin ” Prince Jussupov ” ) などの表板等厚線図の板厚配置でも取り入れられている事がわかります。

 

この2台のストラディバリウスを比較すると 上下端にしっかり確保してある C部D部の厚いゾーンの幅が左側のヴァイオリンよりも右側が狭くしてあり、 おなじくF字孔外側のA部B部の上下方向の幅が狭く変更してあることが分ります。

私は これらのヴァイオリンには 板厚が厚いゾーンの切れ目である  点e, 点f, 点g, 点hを結ぶ軸線が設定されていると考えています。

この二つのストラディヴァリウスの比較から、私は e-f 軸と g-h 軸が交わるx型の軸線角度を 左側のヴァイオリンより右側は 狭くしたと判断しました。

私はストラディヴァリは 後者のヴァイオリンでこれらの条件を変更することでレスポンスの高速化と『 低音域 』の明瞭化を実現しようとしたと考えています。

 

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2017-9-21                   Joseph Naomi Yokota