
November 22, 2025 / 17:39
2021年のことでしたが、私は1994年に製作されたヴァイオリンのバスバー交換などを依頼されました。そのヴァイオリンは 表板アーチが高さ16mmで、剛性のキャラクター設定が難しいタイプでした。

その表板設定などにより、結果として… 絶不調に陥っていたヴァイオリンを、最良のレスポンスや響きが生じるようにとのことでしたので、私にとって この仕事は難問でした。

そして 熟慮の末に、高さ14mmであったバスバーを 高さ13.4mmのものに入れ替え、想定したような性能で仕上げました。
それから時が経ち、ヴァイオリン、ビオラ、チェロでバスバーをいくつも製作し さらに検証を進めた結果、レスポンスや響きのキャリング力を高めるためには、やはり 高さを最大化することが重要だと確信するようになりました。
バスバーの”大型化”は、チェリストのロンベルクが 1840年に出版した”チェロ奏法”の参照図のように、19世紀には既に ひとつの選択肢となっていました。

Method book “Violoncell Schule”, 1840年刊
Method book “Violoncell Schule”, 1839年著 / Bernhard Heinrich Romberg ( 1767-1841 )
ですが 実際に試みると、表板の材質やアーチ形状、F字孔の設定などと調和させる必要があり、極端な場合には バスバー剥がれなどの不具合まで起こします。


たとえば、私が 2013年に修理を依頼された ピグマリウス”REBIRTH”リバース シリーズの 2001年製ヴァイオリンのような破損です。
写真でわかるようにバスバー両側が完全に剥がれていて、指板下の表板ジョイント部も 140mm程にわたり開いていました。

このとき、中央ジョイント剥がれを撮影するために 表板をさわっていたら『パキッ 』という音とともにバスバーが外れてしまい、この景色となりました。
これが脱落したバスバーをE線側から見たものです。

このバスバーは 長さが 275mm、 上下スペースがネックブロック側 39mmのエンドブロック側 40mmで、厚さは 写真向かって左のネック側端が 5.5mmで駒部 6.4mmのエンドブロック側端が 5.8mmです。
そして バスバーの高さは、駒部が 11.6mmで両端が 4.5mmとしてあり 比較的にいえば大きいタイプでした。なお、このヴァイオリンのあご当て無しでの重さは 410g程で、そのうちバスバーの重さは 5.9g、 バスバーがない状態の表板は 73gでした。
悲しい状況証拠ですが、この”ピグマリウス”は 響胴の変形疲労のために、魂柱( Soundpost )が立っていた部分が表板、裏板ともに窪んでいました。
製作されてから わずか12年しか経過していないのに”満身創痍”といった状況ですね。
ともあれ こういった不具合を生じさせないように、私は “ねじり”を阻害しない配慮をしながら バスバーの最大化を進めました。

例えば 半年前に製作したチェロのバスバーは 高さ29.6mmで、それなりの”大型バスバー”となっています。
また、これは自作チェロですから 不連続形状アーチの剛性も、意図的に設定しています。ですから表板アーチの頂点などと 内部のバスバーは初めから適合する設計となっています。


Joseph Naomi Yokota Cello, Tokyo anno 2025


Joseph Naomi Yokota Cello, Tokyo anno 2025
このときに大切なのは、バスバーの頂点を二つのF字孔下端を結んだラインと、全長の1/3分割ラインに挟まれたゾーン付近まで下げて、強い非対称型として 響胴の”ねじり”を誘導することです。


この試みは 1721年製ガリアーノ・ヴァイオリンに入れられたバスバーのように、すでに18世紀初頭には採用する弦楽器製作者がおり、20世紀初頭までのヴァイオリンなどで 時々 見受けられます。
そのような事柄を念頭に置いた上で、先日のことですが 検証実験として2020年製 表板アーチが16mmのヴァイオリンを改作し、バスバーを 高さ14.8mmで作り響きなどの確認をおこないました。
September 25, 2025 / 9:27
November 16, 2025 / 15:51


November 08, 2025 / 11:44
● “焼成釘穴”に鍛造鉄釘を埋め込む工程
November 14, 2025 15:55 / Violin
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November 14, 2025 21:22
November 14, 2025 21:24
この実施例は 撮影のために 23分間ほどかけています。通常は、鍛造鉄釘の温度が急激に下がるので、手元周りに必要なものを配置して素早くおこない、 15分程でこれらの工程を済ませます。
私が、2025年に製作したチェロに鍛造鉄釘を埋め込むときも、このヴァイオリンと同じやり方で、埋め込む鍛造鉄釘そのものを加熱して釘穴の成型をおこないました。


April 26, 2025 5:04 / Location of forged nails


November 15, 2025 / 11:21
November 30, 2025 17:49





