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このバイオリンは、わずか12年で‥ なぜここまで壊れたのでしょうか?

これは私が 2013年に修理を依頼されたヴァイオリンのラベルです。

ご存じの方も多いでしょうが 国内メーカーが製造しているピグマリウス『 REBIRTH(リバース)』シリーズの 4/4サイズのヴァイオリンとして 2001年に製造されました。

表板は中の状態を確認していただくために持ち主の目の前で私がヘラを使ってはずしました。作業に取り掛かるまえに弦をはじくとはっきりノイズがしていましたのでバスバーの剥がれは予想していましたが‥ ここまでとは !!

写真でわかるようにバスバー両側が完全に剥がれていて、なお且つ指板下の表板ジョイント部が 140mm程( 表板全長 354mm )の長さにわたって剥がれていました。

そして表板ジョイントの剥がれを撮影しようと私が表板をさわっていたら『 パキッ 』という音とともにバスバーが外れてしまいました。

そしてこの景色となった訳ですが、私の経験ではそもそもバスバーが脱落するケースはほとんどありませんでした。このようにバスバーがはずれたのは 私の30年間の経験 ( 2013年 )では 3例目となりました。

これが脱落したバスバーをE線側から見たものでバスバー長さが 275.0mm 上下スペースがネックブロック側 39.0mmのエンドブロック側 40.0mmで厚さが写真向かって左のネック側端が 5.5mmで 駒部 6.4mmのエンドブロック側端が 5.8mmとなっています。

そしてバスバーの高さは駒部が 11.6mmで両端が 4.5mmとしてありました。また F字孔間距離の最狭部は 39.8mmにしてあり、これに対しバスバーは 0.1mm内側に取り付けてありました。

因みにこのヴァイオリンのあご当て無しでの重さは 410g程で、そのうちバスバーの重さは 5.9gで バスバーがない状態の表板は 73.0gでした。

このピグマリウス『 REBIRTH(リバース)』シリーズのヴァイオリンは魂柱( Soundpost )が立っていた部分が表板、裏板ともすでに窪みができていました。

このダメージ傷によってピグマリウスに新作時から入れられていた魂柱が 直径 6.0mm であったことが推測できます。

私の経験では、楓材でつくられた裏板は スプルース材の表板に比べて ダメージ窪みはそれほど深くはなりませんが、このピグマリウス程度に識別可能となっているケースは 少なくありません。

ヴァイオリンは疲労破損が進行するときに 魂柱が立つ位置の表板と裏板の空間( 高さ )が少しずつ狭く( 低く )なっていきます。 しかし魂柱は圧力が強くなってもほとんど縮まないので、結果として表板や裏板にめり込むかたちになります。

別のヴァイオリン表板に生じた魂柱窪みの写真

この過程でのダメージ窪みは 緩慢なスピードで深くなっていきますので、初期から中期にかけては下の写真 e. ( チェロ )と f. ( ヴァイオリン ) のように 表板の割れに至っていないことが多く、外見からの確認は難しいようです。

ヴァイオリンのアーチの条件などにもよりますが 、表板の魂柱部の窪みは下写真のヴァイオリン  f. のように魂柱部の厚さが 3.2 mm で、魂柱位置の厚さは 1.9 mm になることすらあります。 ( 1.3 mm めり込んだようです。)

この段階でも このヴァイオリンは魂柱割れ( Soundpost crack )は入っていませんでした。

下の2枚の写真は 参考のために上のヴァイオリン  f. の内側にサランラップを貼り 四角い木の台座に厚塗りした粘土状樹脂で 魂柱部の窪みの型をとったものです。

サランラップですこし不明確にはなりましたが直径 8 mm 程の窪みが凸型で確認できると思います。

     

表板の疲労変形が生じているヴァイオリンは ちょっとしたことで魂柱が倒れたりします。 下の型は上の楽器とは別の5年ほど使用された新作イタリー製ヴァイオリンから同じくサランラップ越しにとったものですが、過去に調整を依頼された楽器屋さんが 魂柱を外に引っ張ったり‥ 場所を変えてたてた跡が10ヶ所ほど残っていました。

あまりに頻繁に魂柱が倒れるのでかなりきつくいれたようでよく見るとサランラップ越しなのに表板のスジ状の年輪と直交するかたちで魂柱の断面にあった年輪のあとがクッキリ残っています。私はこの写真を弦楽器工房の関係者すべてに 心にとめておいていただきたいと思っています。

       

残念ながら魂柱窪みに関してはストラディヴァリウスも例外ではありません。

表板魂柱部の割れをサウンドポスト・パッチで何度修復してもその後に再び窪んでしまうものが少なからず存在します。

それから ガルネリ・デル・ジェズでは 、ヤッシャ・ハイフェッツ ( Jascha Heifetz  1901-1987 ) が愛用していたヴァイオリンが象徴的だと 私は思います。

このヴァイオリンは1950年頃に修復のために表板が外されており、その際の写真で 魂柱部のダメージ窪みなどが確認できるからです。

私はこれらの弦楽器にみられるダメージ傷や割れなどの破損は バランスが調和していない弦楽器を『 演奏した‥ 』結果、表板が歪んだことで生じたケースが多いと考えています。

ヴァイオリンや チェロは「強制振動楽器」であることから、バランスが調和していない楽器は かなり早い段階‥ たとえば弦を張って 組み上げてから数時間後から 数日で初期症状を確認することが出来たりします。

これらを念頭におくと、冒頭に挙げさせていただいた ピグマリウス『 REBIRTH(リバース)』シリーズのヴァイオリンのように 12年で演奏不能になったことも理解出来るのではないかと思います。

 

 

 

 

2019-3-20                Joseph Naomi Yokota

既製品のヴァイオリン 整備見本が仕上がりました。

“Pygmalius Derius”  Violin ( Special – G )  2007年製

私は 弦楽器製作以外に、ヴァイオリンや チェロなどの整備や販売もやっています。

ところで 整備の場合は 費用は内容で違い、特別な整備では ¥1,000,000- を越える場合もまれにありますが ほとんどが¥5,000- ~ ¥500,000- の範囲で、実際に依頼された時に持ち主の方とご相談して決めています。

このとき ¥5,000- ~¥30,000- の整備では、その具体的な内容の説明は難しくは無いのですが、例えば ¥50,000- とか ¥80,000- あるいはそれ以上の場合は 具体的な整備内容の技術的な( あるいは音響システム上の )説明に苦慮することがよくあります。

“Pygmalius Derius”  Violin ( Special – G )  2007年製

このために『 整備済みの具体例があれば 分かりやすいのでは‥。』と考えていましたが、先日 このヴァイオリンの委託販売を依頼されたので、好機と考え 実際に ¥80,000-整備例として仕上げました。

因みに このヴァイオリンは 2007年製の “ピグマリウス・デリウスシリーズ”  4/4サイズ ヴァイオリンで スペシャル モデル  ( グアルネリ型 )  です。購入時の価格は 税込み ¥294,000- ( 本体価格 ¥280,000- ) でした。

私は このヴァイオリンを初心者の方でも購入できるように 整備費込みで ¥210,000- ( 税込み )で販売しようと思います。

内訳は、 整備 ¥80,000 + 本体¥130,000 = ¥210,000 ( 税込み ) です。

それとともに、このヴァイオリンの購入者が決まるまでの間、整備費用 ¥80,000- の実例見本として、皆さんに弾いて頂くことにしました。

私は 整備の説明でよく『 弾けば‥ きっと、分かりますよ。』と お話ししています。その通りのレスポンスや 響きとなっていますので、ご自分のヴァイオリン整備を考えていらっしゃる方には このヴァイオリンを試奏することがよい参考になると思います。

是非、電話 あるいはメールの上で お気軽に このヴァイオリンの試奏においでください。

また、ヴァイオリンの購入を考えていらっしゃる方には 60万円位までの価格帯のヴァイオリンの中では ずば抜けている性能のヴァイオリンに仕上がっていますので、どうかご検討ください。

 

  なお、この整備に必要な時間は おおよそ 4日 ~ 7日で チェロで同じ整備をする場合は 費用するが ¥160,000- ( 税込み )となります。どうか ご理解の程を お願いいたします。

 

この ヴァイオリンは おかげさまで  1月19日にはご縁があったお客様の手元に渡りました。ありがとうございました。

 

 

 

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2019-1-11                Joseph Naomi Yokota

裏板の製作工程

これは 2012年に私が製作したヴァイオリンの裏板です。

私が 2013年に着手したチェロの裏板は これらのヴァイオリンで学んだ要素をかなり反映させました。

2013年10月1日 チェロ裏板 外側アーチ部粗削り終了

ただし‥ チェロは ヴァイオリンの4倍、或いは 8倍程の面積や体積がありますので、削れば消える軸線を鉛筆で書き込み続けるだけでも大変です。

因みに、Giovanni Battista Guadagnini ( 1711-1786 ) が 1743年頃製作したチェロ “Ngeringa”  Piacenza は 総重量 2456g ( Front 716.8 – 338.8 – 231.2 – 425.9 / Back 716.6 – 340 – 228.7 – 423.3 / Stop 391.0 )は、表板の重さ 387g  ( アーチ 25.4mm ) –  裏板の重さ 482g ( アーチ 30.9mm )。

同じく G.B. Guadagnini の 1757年製チェロ “Teschenmacher”  Milan は 総重量 2584g ( Front 717.0 – 339.3 – 247.1 – 420.9 / Back 712.2 – 332.7 – 237 – 419 / Stop 391.1 )では、表板の重さ 319g ( アーチ 28.4mm ) –  裏板の重さ 464g ( アーチ 36.4mm ) とされています。

私は このようなオールド・チェロを参照にしましたので、この時 製作したチェロの表板は バスバー無しの白木状態で 350g以下で、裏板は 550g以下、側板部が 500g以下とバランスを定めて作業を進めました。

このため、その工程で剛性に関する問題も解決する必要を抱えることになりました。

また、最終的には箱状になりますので 裏板、表板ともパフリングより外側の縁部が側板とリレーションし易いように、側板に合わせた状態でアーチの削り込みや 縁の厚さの調整が必要でした。

2014年1月5日 チェロ裏板外側のアーチ部で削り込みによって消えた軸線を書き込んでいるところです。

因みに、私は 軸線設定が狂わないように、このチェロ専用の裏板外型枠を製作しました。

2014年2月6日 この裏板 ( アーチ 32.6mm ) は 外側削りの仕上がり重量が 1900g でした。

2014年8月4日 この裏板は重さが 528g となり駆動性も良い状態で仕上がりました。


「オールド弦楽器」においての音響システムについて

私は ヴァイオリンという楽器は ビオラやチェロと比べて共鳴現象が不全でも F字孔がエネルギー変換の受け皿になりやすいため、チェロやビオラと比べて 破綻しにくい弦楽器であると考えています。

逆に言えば、チェロやビオラは響胴の共鳴部が十分に機能しなければならないので 変換効率の側面から、完成度の高いものを製作することは ヴァイオリンを製作するより難易度が高くなると思っています。

Joseph Naomi Yokota     Violin, Tokyo  2008年

そこで 私は「オールド弦楽器」の特徴から 音響システムとして仮説を立てた上で、まず 検証ヴァイオリンの製作を 2004年11月11日に着手しました。これは 7年程の期間に及びましたが、試行錯誤しながら 7台のヴァイオリンを製作しました。

そして この過程で 仮説の音響システムに修正を加えながら、それをヴァイオリン族のプロト・タイプとして確定させました。

この準備を経た 2011年3月7日に、私は いよいよ‥ チェロの設計に取りかかりました。

ここから この時に製作した、私にとっての 原型チェロ ( Prototype cello ) の お話しをさせていただこうと思います。

■  響胴の軸組み調整

 これは 響胴に組み上げに着手したところで、ネックやF字孔の設定と 駒位置やブロック配置により 表板と裏板の基本となる軸線の組み合わせのバランスを修正しているところです。

私は 表板側の軸線を このように設定しています。

この表板側の軸線は 側板部とも連動します。私は 特にブロック部との関係が重要だと考えます。

そして、これにネックやサドル、エンドピン、それから表板と裏板のパフリングより外側部が 加わることで 楽器的個性が生れていると思っています。

たとえばネックの水平面上での傾きは、この 1700年頃製作されたチェロのようになっていたと考えています。

このチェロは 1986年の接ぎネックの際に、ネックが向かって左回りに起こされていますが、元々NHK交響楽団OBのチェリストが使用していた時は もっと幅が狭くてボタン部もクラウン無しで小さい設定であった製作時の様子が残っていました。

ですから この写真の時点では ネックがだいぶん起こされていますが、元の傾きの名残で右に傾いている様子は確認出来ると思います。




 

 

 

 

 

 

 

このようなネックの役割のうち “ネジリ” に関しては チェロとヴァイオリンは割合が違うだけで類似していますので、私は 1950年代にアメリカで撮影された ヴァイオリン演奏を鏡像の動画にしてあるものが、最も分かりやすい資料であると思います。


そして、サドル位置も同じ理由で黎明期から 上写真のような位置として設定されていたようです。このチェロでは「オールド弦楽器」の復元楽器としてこのように表板と側板、そして裏板のバランスを設定しました。

 

「オールド・チェロ」の製作方法についての検証実験

弦楽器のしくみは多少難解ですが‥「 オールド・ヴァイオリン 」と、「 “写し”として製作されたヴァイオリン 」、そして「 贋作ヴァイオリン 」を見分けるには、『 オールド弦楽器の製作方法 』を知ることが重要ではないかと 私は考えます。

そこで、16世紀中頃から 18世紀の終わりまで製作された弦楽器の音響システムを実証するために、2015年に私が製作したチェロの事例を用いて「オールド弦楽器」の特徴についてお話しさせていただこうと思います。

なお、ここでは ヴァイオリンより多少バランスの違いが見えやすいチェロを用いますが、基本的な仕組みはヴァイオリンや ビオラも同じとご理解ください。

Cello 1700年頃 パーツ無し重量 2280g / 総重量 2789g

弦楽器は固有振動がそのキャラクターを決定します。ですから製作する場合は まず、総重量とそれを構成する それぞれの部分の重量配置 ( 重心コントロール )と、 それらのゆれ方の関係性を決定する必要があります。

そこで まず基本からですが、 オールド・チェロは 響胴サイズが様々です。これを アントニオ・ストラディヴァリ ( ca.1644-1737 )や、ジロラモ・アマティ Ⅱ ( 1649-1740 )、ヨーゼフ・ガルネリ ( 1698-1744 ) などのチェロで見て下さい。

 

● Girolamo Amati Ⅱ ( 1649-1740 ) Cello, 1690年                                      F. 737 -352 – 243 – 439 / B. 738 – 352 – 239 – 431                                    Stop 397mm / ff ( between Tow holes ) 82.2mm                                     Head L. 209mm / Eyes width 63.2mm

● Antonio Stradivari ( ca.1644-1737 ) Cello,”Gore-Booth” 1710年     F. 756 – 343.5 – 230 – 437 / B. 756 – 341.5 – 229 – 437                            Stop 407mm / ff 90.8mm / Head L. 204.5mm / Eyes width 67.4mm

● Antonio Stradivari ( ca.1644-1737 ) Cello, “Pleeth” 1732年頃           F. 719 – 339.5 – 231 – 422 / B. 717 – 340 – 230 – 420                              Stop 398mm / ff 92.8mm / Head L. 214mm / Eyes width 66.5mm

● Antonio Stradivari ( ca.1644-1737 ) Cello, “Josefowitz” 1732年      F. 693.5 – 316.5 – 219 – 403 / B. 690 – 319.5 – 220 – 408                       Stop 375mm / ff 86.2mm / Head L. 204mm / Eyes width 67.5mm

● Guarneri del Gesù ( 1698-1744 ) Cello, “Messeas” 1731年                  F. 730 – 349 – 241 – 434 / B. 735 – 354 – 243 – 437                                  Stop 392mm / ff 102mm / Head L. 210mm / Eyes width 66.0mm

このように オールド・チェロは、総重量の前提となる響胴の大きさを理解するだけでも 難易度は高いと思います。

それらを勘案した上で、音響システムの実証用チェロ製作時に私が直接的に参考としたのは冒頭の画像のものも含めた下記の5台でした。

Nicola Albani / Cello ( Worked at Mantua and Milan 1753-1776 )

① Cello 1700年頃                       パーツ無し重量 2280g ( Back 735 – 349 – 225 – 430 / Stop 403.0 ) 総重量 2789g

② Nicola Albani Cello ( Worked at Mantua & Milan 1753~1776 )パーツ無し重量 2250g ( Back 734 – 343 – 236- 427.5 / Stop 392.5 )総重量 2747.8g

③ Giovanni Battista Guadagnini ( 1711-1786 ) Cello 1757年     総重量 2584g ( Back 712.2 – 332.7 – 237 – 419 / Stop 391.1 )

④ Giovanni Battista Guadagnini ( 1711-1786 ) Cello 1743年頃    総重量 2456g ( Back 716.6 – 340 – 228.7 – 423.3 / Stop 391.0 )

⑤ Cello 1790年頃                     パーツ無し重量 1826g ( Back 707 – 320 – 215 – 408 / Stop 379 )   総重量 2330g

そして、最終的に私は下記の規格を採用しました。

● Joseph Naomi Yokota Cello, 2015年                                                             総重量 2389g

表板サイズ:745.5 – 347.0 – 243.0 – 449.0                                                      裏板サイズ:741.0 – 356.5 – 239.5 – 448.0                                                      側板:ネック側 108.3mm – エンドピン側 120.0mm

表板アーチ:28.7mm                                                                                                     裏板アーチ:31.8mm

ヘッド長:205.0mm( ボトム・ヒール位置まで )                                スクロール・アイ幅:66.2mm 指板:30.0mm – 62.4mm – 583.5mm ストップ:403.0mm

この実証用チェロで重要と考えたのは次の5点です。

① オールド弦楽器の豊かな響きは それぞれの部分の振動が合成されることで成り立っていると考えられます。そして、それは 振動体の質量や長さが整数倍の関係のときに重なりやすいと推測できます。

例えば、下図のチェロのように 指板も含めたネック部と 響胴の重さの関係は 1 : 3 で、ヴァイオリンのそれは 1 : 2 といった設定が望ましいと私は考えます。

また、現代型の指板の場合は 指板が空中に突きでるネック端部に重心を合わせて 1 : 1 にしておくと 音量バランスが整いやすく、そのうえ指板自体の軸組を工夫することで運動特性をある程度 選択できるため、響胴に対してのバランスをあわせるときの大事な選択条件であると思われます。

② 弦楽器で深い響きを生むためには駆動系と変換点のエネルギーロスを減らすこと‥ あえて極端な表現をすれば「 振動の持続時間をすこしでも長くすること。」が大切だと考えられます。

このためには”対” となってゆれが残りやすい天秤の「 腹 – 節 – 腹 」の関係を剛性や運動を勘案し設定すること、そして振動エネルギーが通過する経路の工夫、変換点の「 節 – 腹 」の設定も表板の材料特性をよく観察し適切におこなうことで達成できると信じます。

③ 響胴部のバランスは6本の柱 ( ブロック ) の形状と、1本の交換式柱 ( 魂柱 ) やパフリング外縁部の剛性 ( 形状 ) を工夫して 表板と側板の接着面( Reference plane )に対しての重心位置をあわせることで調和させることが可能と思われます。

④ 響胴中央軸に対してのネック上面の軸は低音側 ( バスバー方向 )に合わせ、ネック下方面 の軸は裏板ジョイント方向にむけて「 ねじり 」を積極的に活用する設定で製作します。

⑤ 低音の共鳴現象が生じやすいように 表板の重さはバスバー無しの白木状態で 350g以下で、裏板は 550g以下、側板部が 500g以下とし、響胴部のなかで 表板と裏板側 ( 側板を含む )の関係を 1 : 3 で製作します。

同じく響胴とネック部の関係を 1 : 3 とするために指板は 200g以下で ネック & ヘッドは 300g以下にします。これらの合計である 2000g以下にするためには、立体的形状や幾何剛性を積極的に利用し安定した状態が持続できるように工夫します。

干渉についてのメモ

■ 自作チェロの重量配分図( 塗装前 )

総重量:2389.2g ( 完成日 2015-12-26 ) パーツ無し重量:1942.0g ( 白木 1885.5g ) / パーツ合計:447.2g

重量配分 ネック部 485.5g : 響胴 1456.5g

塗装前ネック & ヘッド:297.0g – 指板 & ナット:186.0g                   表板部: 411.0g – 側板部:484.7g – 裏板部:531.0g

このチェロは 仕上がり総重量が 2389.2g でしたが、これはもちろん偶々ではなく着手時の目標値が 2250g ~ 2500g でしたので計算の通りといったところです。

なお、 現在一般的に使用されているパーツ重量の合計は 380g~580g 程で、普及品タイプのチェロはパーツ無し( 指板含む )重量が 2300g~2800g 程もあるため総重量も 2300g~3200gくらいあります。

私は チェロの総重量が 2900g を越えるのは避けたほうが望ましいと思っています。例えば、2012年製 GLIGA gemsⅠシリーズの 初心者用チェロは パーツ無し重量が 2800gで、総重量が 3186g もありました。

GLIGA Cello ( gems Ⅰ), 2012年

こういう楽器は響胴からネック、ヘッドが一直線に硬直していて鳴らすとチューニングも狂いやすく、響胴も硬いのでボーイングが難しく 右手が疲れやすいのではないでしょうか。

その上、音量が望めませんので 合奏楽器としては薦められません。こういう現実を常々目にしていますので、私は 初心者用のチェロがもっと楽器として性能が改善されることを心から願っています。

■ 響胴の軸組

私は 18世紀末までの弦楽器製作者は 響胴の「 節と腹 」の原理をほぼ正確に理解し、実際に用いていたと考えています。

それらの要素をバランスよく組み合わせるためには 座標となる多数の軸線が必要と考えられます。

私は 16世紀中頃から 18世紀の終わりまで製作された弦楽器の音響システムとしてこれらに残されている座標軸線の痕跡を検証し、表板や 裏板の軸線としてまとめました。

ヤーノシュ・シュタルケル(János Starker 1924 – 2013 )さんが使用していたチェロは、1705年にベネチアで Matteo Goffriller ( 1659–1742 ) が 製作したものとされています。

 

この部分の’傷’は ストラディヴァリ・ソサエティの エドゥアルド・ウルフソン( Eduard Wulfson )氏が所有し、ナターリャ・グートマン( Natalia Gutman )さんが使用している グァルネリ・デル・ジェスが製作したとされる 1731年製のチェロとも共通しています。

Bartolomeo Giuseppe Guarneri ( 1698-1744 )                           Violoncello 1731, ” Natalia Gutman ”

このガルネリが製作したチェロは A ゾーンと B ゾーンの’傷’がとくに深くつけられています。

1982年にニューヨークで生まれたチェリスト、アリサ・ワイラースタイン( Alisa Weilerstein )さんが 2014年から使用しているチェロにも同じ特徴があります。

この楽器は Domenico Montagnana が 1730年に製作したとされています。そして この楽器ではA ゾーンとB ゾーンの傷が 確認できるとともに、C ゾーンの ‘深い傷’ も見ることができます。

私は これらを ‘節’としての ‘折れ軸’を調整した痕跡と考えています。

私は このような「オールド・チェロ 」などの分析から ‘座標’や ‘折れ軸’としてこれらの線分を製作のために 表板で 100本、裏板は 60本選び設定することにしました。

因みに、軸線が機能していない状態は 壊れた弦楽器で見ることが出来ます。

例えばこれは、壊れたコントラバスの修理をシュミレーションするために写真にしてプリントし切り抜いたあとで 破損個所をカットし表板の変形を実際のように折り込んだものです。

私の所見では‥ この破損の主因は、左右方向の剛性につながるアッパーやロワーの軸の不全です。

そもそも、弦楽器の多くは上図 点C, 点Dに弦の張力をかけることで 点A, 点B が 中央部に向かって倒れ込むような応力がかかるようになっています。

そして 点A, 点B からの応力は駒などによる中央部の剛性が高いゾーンを避けるように 点E と 点F のアッパーとロワー側にむかいます。

これによって弦楽器の多くは響胴にかかる応力で壊れないようになっています。



ですから、例として挙げさせていただいたコントラバスは下図のように折れ軸が機能するように、バスバーの形状を変更することでバランスを合わせ 再び使用出来るようにしました。

 

摩耗したように加工する “パティーナ加工” について

Nicola Gagliano ( ca.1710-1787 ) Violin, Napoli 1737年

「オールド・バイオリン」などでは 摩耗したように加工する “パティーナ加工 ( antique patina) ” が施されているものが多いので、ヘッド部を観察するときも これを念頭に置く必要があります。

その参考例として、このスクロールの右側突起部に注目してください。この部分は 製作された後の “修復” によって 現在この状態となっていると私は判断しました。

それは、この ヴァイオリン・ヘッドの “修理部分”( 上写真右側 )が、同時期に製作されたヴァイオリンの摩耗痕跡( 上中央 )と 同様であったと考えられることが決め手となりました。

このような特殊レベルの “パティーナ加工” が施されているヴァイオリンが複数台あるということは本当に素晴らしいと思います。

私は これらを 製作時に摩耗したような加工をする弦楽器製作者がいた状況証拠のひとつと考えています。

Johann Jais Viola Tölz ( 1715-1765 ) Viola 1760年頃

また、上の事例のように 摩耗仕様で生み出された非対称性については、このビオラのように 着手時の設定段階( 木取り )で意図されたことが分る弦楽器との比較がその理解をより深めることに役立つと思います。

このように、摩耗痕跡タイプの “パティーナ加工 ” は 複数の作品で比較してみると 一定の法則性をとらえることが出来るのではないでしょうか。

Antonio Stradivari ( ca.1644-1737 ) Violin Cremona 1715年”Lipinski” / Giuseppe Tartini ( 1692-1770 )

たとえば このヴァイオリンは、1700年代に ヴァイオリンソナタ『 悪魔のトリル ( Devil’s Trill Sonata ) 』で有名となった 作曲家 ジュゼッペ・タルティーニ( Giuseppe Tartini 1692-1770 )が使用したとされる ストラディバリウスです。

私は 「 クレセント・カット( Crescent cut )」と呼んでいますが 三日月型の” 激しい摩耗痕跡 “があります。

そして写真右側はイタリア・クレモナに展示されている 有名なヴァイオリンです。クレセント・カット部には 修復痕跡が認められます。さて、これは どう考えるべきでしょうか?


残念ながら このような摩耗痕跡を 『 演奏するためのチューニングなどですり減った。』 と思っている方も多いようで、実際にその判断の誤りにより このように ‘修復’ されてしまう弦楽器もあとを絶ちません。

Antonio Stradivari ( ca.1644-1737 ) Violin, “Sunrise” 1677年

これは、 ストラディヴァリが製作した装飾文様入りの有名なヴァイオリン “Sunrise” です。 彼が初期に製作した作品ですが 装飾加工も含めて製作時の状況がよく保存されていることでも知られています。

このヴァイオリン・ヘッドにも 小さなクレセント・カットが入っています。ところがその周りには他に摩耗したような痕跡はあまり見られません。私は このヘッドにみられる摩耗部とそのまわりの’落差’ を不自然( = 意図的 )と感じます。

それから、これは オーストリア国立銀行が ウィーン・フィル( Wiener Philharmoniker )のコンサートマスターに貸与している 1709製ストラディヴァリウス ”ex Hämmerle” の ヘッド写真です。

2008年に定年退団するまで ウェルナー・ヒンク氏 ( Werner Hink 1943 – ) が使用し、その後 1992年から コンサートマスターに就任していた ライナー・ホーネック氏 ( Rainer Honeck 1961- ) が 演奏に用いている有名な楽器です。

クレセント・カットとなっていたと考えられる 赤色部は接木されているようですが、このヴァイオリンで摩耗部とその周りとの’落差’ を 見て下さい。

下画像のように 私はスクロール部を 1段目、2段目、3段目と区別していますが、摩耗痕跡が 1段目のエッジ部でみとめられるのに 2段目、3段目のエッジ部は 完成時のままであるかのように フレッシュです。

この 1709製 ストラディヴァリウス ”ex Hämmerle” の ヘッド1段目とそれ以外のエッジ摩耗の差は、ほかの ストラディヴァリウス‥ たとえば 下写真の 1714年製でも 見ることができます。

この 1714年製のストラディヴァリウスでも、前出の1709年製のヘッド程ではありませんが 同じように三角形の接木がしてあるようです。また、摩耗痕跡も 1段目のエッジ部でみとめられるのに 2段目、3段目のエッジ部は 完成時のままであるかのように フレッシュです。

ヴァイオリンを演奏したことがある方でしたらイメージ出来ると思います。もし チューニングでヘッドに触れたことが摩耗の原因だとしたら 「 この景色 」はあり得ないのではないでしょうか。

これらを検証した結果、ストラディヴァリは 摩耗加工を 多少不自然になるのを承知のうえで、 音響上必要とおもわれる最低限にとどめた弦楽器製作者だと私は考えるようになりました。

さて‥ ヴァイオリン族のなかでも ヴァイオリンと ビオラは 演奏者がヘッドに触れることがある訳ですが、チェロのヘッドは人が触れることは殆どありません。

ところがオールド・チェロの中には、製作者が 前出の ストラディヴァリウスのヘッドと同じように 2、3段目はそのままで1段目だけを”激しく摩耗させた” チェロが存在します。



私も 最初にプロのオーケストラで 2プルトに座っているチェリストから 『 演奏の最中に目の前のオールド・チェロのヘッドをいつも眺めていてね‥ヘッドが ”激しくすり減った” 理由が何度考えてもまったく解からないんだけどどうして?』と質問された時には まったく説明できませんでした。

しかし、同じような質問を何人かから受けましたので 本腰をいれて調べることになりました。

これは 1997年に ヴェネチアの南西80㎞程の街 Lendinara で開催された展示会カタログ ” Domenico Montagnana – Lauter in Venetia ” Carlson Cacciatori Neumann & C. の 109ページに掲載されている 1742年に Domenico Montagnana が製作したとされるチェロです。

16世紀から18世紀にかけて ヴァイオリンやチェロを製作した人は リュート 、シターン や テオルボ 、キタローネや ヴィオラ・ダ・ガンバ をよく知っている弦楽器製作者でした。

左側に1993年に ボローニャの博物館カタログとして出版された ” Strumenti Musicali Europei del Museo Civico Medievale di Bologna ” John Henry van der Meer の105ページに掲載してある、17世紀に製作されたと考えられる テオルボのヘッド写真を置きました。

両者とも、後ろから見たときに中心軸が右側に曲がっていくのが特徴となっています。左右の写真を見比べれば同じ軸取りがしてあるのが理解していただけると思います。

これらのことから、私はクレセント・カットなどのヘッド部の摩耗痕跡は人為的な加工 つまり、ヘッドの中央付近を上下に通る”ゆれるための軸”の調整痕跡であると判断しました。

ヴァイオリン誕生の土壌

Mandora 1420年頃 L 360.0 W 96.0 D 80.0( 83.0 ) / Wt. 255 g

ペグボックス壁部の厚さを左右差があるように製作すること自体は、ある意味では弦楽器製作者の常識でした。

“The Renaissance Cittern” Francis Palmer London 1617年

これは ルネサンス・シターンや テオルボ ( Theorbo ) などで、垂直軸に対して直交方向に取り付けられている ペグ、ナット、フレット、ブリッジなどの傾きや、ペグボックス部の左右壁厚差を見れば明白だと思います。

しかし 検証を進めた結果‥ 従来の宮廷音楽に加えて ヤコポ・ペーリ (1561-1633 ) や、クレモナに生まれ学び 後にヴェネツィアのサン・マルコ寺院楽長となった クラウディオ・モンテヴェルディ ( 1567-1643 ) 達が、1600年前後にオペラを誕生させたあたりから弦楽器には時代の風が吹いていたことが分りました。

オペラは 急速に普及し1637年には ヴェネツィアにサン・カッシアーノ劇場が開設されると歌劇場建設ブームが起こりました。この時期から 器楽や演奏会場の多様化は 急速に進んだようです。

たとえばフランスでは 1661年にルイ14世の親政が始まり ジャン=バティスト・リュリ ( 1632-1687 )は 宮廷音楽監督に任命され、それまで以上に活躍しました。

Plan du Château de Versailles 1664年

1678年 (1678–1684 )                                                                                                The opulent Hall of Mirrors at the Palace of Versailles

また、アルカンジェロ・コレッリ ( 1653-1713 )は 1675年に ボローニャからローマに移り ヴァイオリン奏者として本格的な活動を始め、1679年にはカプラニカ劇場でオーケストラを指揮し、1681年にはトリオ・ソナタ 作品1 ( 全12曲 )を ローマで出版しています。

Arcangelo Corelli ( 1653-1713 )

Michelangelo’s design of New St. Peter’s Basilica

現在のローマにあるサン・ピエトロ大聖堂は 1506年に建設に着手し、ミケランジェロ ( Michelangelo Buonarroti 1475-1564 ) が 担当したドームは 1588年に着工し1593年に頂塔部の工事が終わりました。

そして1666年にやっと全体が竣工し完成しています。また、ヴェネツィア共和国では 1685年にアントニオ・ヴィヴァルディ( 1678-1741 ) がサン・マルコ大聖堂のヴァイオリニストに就任しています。

Guardi 1775年~77年「1763年の総督アルヴィセⅣモセニーゴの選出」

“サン・マルコ寺院” は 他の都市の中心的聖堂とは異なり、ヴェネツィア共和国時代はカトリック教会の司教座聖堂ではなく、公式には共和国総督の礼拝堂だったそうです。ですから 総督の館であるドゥカーレ宮殿と隣接し繋がっています。これはヴェネツィア共和国のカトリック教会からの政治的独立性の象徴とされ、このことにより宗教関連以外で使用されることも多かったようです。

“18世紀の音楽ホール事情”

これらの時代状況により、私は 1600年代中頃から 弦楽器は ペグボックスの上端位置などで左右差を強くすることも含めた基礎性能の改変がおこなわれたのではないか推測しています。

アンドレア・アマティに代表される黎明期の弦楽器より、17世紀中頃から アントニオ・ストラディヴァリ ( ca.1644-1737 )や、ヨーゼフ・ガルネリ ( “Guarneri del Gesù” 1698-1744 ) も含めた 多くの製作者の弦楽器で “動的”な要素が増やされていくのがこの証と言えるのではないでしょうか。

干渉と共鳴についてのメモ

ピタゴラスが見出したことについての説明が短文でわかりやすく書かれているので共有させていただきました。

“ドレミファソラシド”を発明したのは誰か

2018年11月11日 11時15分 プレジデントオンライン

■「音階」を発明したのは誰か?数学と音楽の関係をご紹介したい。

みなさんご存じの「ドレミファソラシド」の音階。実はこれを発明したのは、「ピタゴラスの定理」で有名な古代ギリシャのピタゴラスなのだ。ある日、散歩をしていたピタゴラスの耳のなかに、鍛冶職人がハンマーで金属を叩く「カーン、カーン」という音が入ってきた。そしてピタゴラスは、美しく響き合う音と、そうでない音があることに気づいた。不思議に思い、いろいろな種類のハンマーを叩いて調べたところ、美しく響き合うハンマーどうしは、それぞれの重さの間に単純な整数の比が成立することを発見したのだ。

特に2つのハンマーの重さの比が2:1の場合と、3:2の場合に、美しい響きになった。そこでピタゴラスと弟子たちはさらに熱心に音階の研究に取り組んだ。彼らは「モノコード」と呼ばれる、共鳴箱の上に弦を1本張った楽器を発明し、2台のモノコードを同時に弾いて、弦の長さを変えながら美しく響き合う位置を探した。その結果、やはり弦の長さが2:1になったときに2つの音が完全に溶け合い、3:2や4:3のときにも音が調和することがわかった。

「ドレミファソラシド」の低いドから高いドまでの音程の幅を「1オクターブ」という。そして、その1オクターブ離れた2つの音は同時に響くと、高さの違う「同じ音」に感じられ、濁りなく美しく調和する。音楽では、音程(2つの音の、音の高さの差)を「度」で表す。同じ高さの音どうしは「1度」、ドとレのように隣り合う音は「2度」になる。特に美しく響き合う「完全音程」は1オクターブのなかに「完全4度」(ドとファ)、「完全5度」(ドとソ)、「完全8度」の3つがあって、弦の長さの比と関係は図のようになる。完全8度だけでなく、美しく響き合う音程になるときの2つの弦の長さの比が、簡単な整数の比になることを発見したピタゴラスたちは非常に感銘した。

数字とはかけ離れたものだと思われていた音楽の美しさがリンクしていたという事実。彼らはそこに何らかの神の意思をくみとり、数字はすべてのものとつながりがあるのではないかと考え、その後は「万物は数である」というスローガンを掲げて活動するようになった。ピタゴラスと弟子たちの熱心な啓蒙により、古代ギリシャの人々は、宇宙は数の調和でつくられていると考えるようになる。宇宙の調和の根本原理は「ムジカ」であり、その調和は「ハルモニア」である。英語でムジカは「ミュージック」、ハルモニアは「ハーモニー」だ。

こうして古代ギリシャ以降、中世に至るまで、音楽は哲学や科学に近く、秩序や調和の象徴としてとらえられていた。数学(mathematics)の語源はギリシャ語の「マテーマタ=学ぶべきもの」で、古代ギリシャにおけるマテーマタ(数学=学科)は、「算術(静なる数)」「音楽(動なる数)」「幾何学(静なる図形)」「天文学(動なる図形)」の4分野から成っていたのだ。古代ギリシャ人にとって音楽(美の中にある数)がいかに「学ぶべきこと」であったかが、うかがえるのではないだろうか。

———-永野裕之永野数学塾塾長1974年、東京都生まれ。東京大学理学部地球惑星物理学科卒。大人の数学塾・永野数学塾塾長。著書に『統計学のための数学教室』『ふたたびの高校数学』『東大→JAXA→人気数学塾塾長が書いた数に強くなる本 人生が変わる授業』など。———-(永野数学塾塾長 永野 裕之 構成=田之上 信 写真=iStock.com)

Sotheby’s, October 5th 2018 “Banksy’s question”

Do you have an answer?

この動画のように「Girl with Balloon ( 少女と風船 ) 」の落札価格は、2008年のバンクシー作品の最高記録と同額の 104万2000ポンド( 約1億5000万円 )でした。

しかし‥。自らシュレッダーを仕掛けるとは‥。

2018-10-7  Joseph Naomi Yokota