『 ヴァイオリン製作 』という仕事について

これは 私が大切にしている新聞記事です。

「 過去へ 」と題されたこの記事の終わりには
そう考えると、私たちの日常はだんだん貧しくなっているようにも思える。極端な例では、あの輝かしい音を響かせるバイオリンの名器は、18世紀からあと二度と私たちの手から生まれなくなった。今後、あの音は失われてゆくだけだ。と書かれています。

ジャーナリストであり西洋音楽史の研究者でもある 梅津時比古さんは、現在 桐朋学園大学学長でもあるようですが、私はこの記事を目にした時には 「流石!」と思いました。

私 自身も ルネサンス末期の1500年代中頃に誕生した ”オールド・ヴァイオリン” は 1650年から1750年頃ヨーロッパ各地で盛んに製作されたものの、 1800年頃にはその製作者が激減し‥ ついには絶えてしまったと考えていたからです。

私は1984年から この仕事に身を投じましたが、そこは真作、贋作が入り乱れた大混乱の渦中でした。

光が見えないと感じる・・その苦しみの中で、私は「ソリチュード ( Solitude )」を立ち位置とすることをいつしか学びました。

英語には「孤独」が二種類あります。一人ぼっちのさびしさを抱えた「ロンリネス ( Loneliness )」と、一人でもさびしくはない「ソリチュード ( Solitude )」ですね。

今では、私が憧れる美しい響きが生み出された過去の世界と一人で向かい合い、その孤独のなかで心が静かに満たされてゆく「ソリチュード」に生きる幸せが与えられたことに感謝しています。

「ソリチュード」は、ヴァイオリン製作に限らず、過去の豊かな世界からのめぐみを受けるための入り口であると思います。

最上の思考は独りの時に生まれ、最悪の思考は混乱の中で生まれる。 
The best thinking has been done in solitude. The worst has been done in turmoil.   Thomas Edison ( 1847-1931 )

 

●  メメント・モリ

●  私は弦楽器製作者を目指す人に”デッサン”を推奨します。

●  ルネサンス期までの “比率”が意味すること