「オールド・ヴァイオリンの製作技法 ( How to make “High performance stringed instruments”. )」カテゴリーアーカイブ

表板の起伏が少ないヴァイオリンに合う最良バスバーについて


November 22, 2025 / 17:39   
Weight without parts  330.0g
●  Weight without chinrest  371.1g
Total weight with chinrest  415.6g

“表板の起伏が少ないヴァイオリン”のためにバスバーを製作するのは本当にスリリングです。

当然ながら それらの作業はレスポンスや響きが直接的に確認できない、表板がはずされた状態で実行されます。

ですから、担当する人には 起伏が少ない表板に直交するバスバーの自在性のゆえに 、性能についての”構想力”がより問われることになるからです。

ともあれ、先日のことですが “表板の起伏が少ない新品ヴァイオリン”を改作して、私としての最終的な検証実験をおこないました。

① 検証ヴァイオリンの完成日 2025年11月30日
② 所有者に納品した日 2025年12月2日
③ ピアノ三重奏曲演奏会 2025年12月17日
④ 経過観察

それは、改作したヴァイオリンに弦を張って仕上げてから 3週間後に、その新品ヴァイオリンを演奏会で使用するという なかなか緊張する仕事ではありました。

Violin adaptation completed : November 30, 2025
Bass-bar height 14.8mm / Arch height 16.0mm 

December 28, 2025
これは、そのヴァイオリンが完成してから 1ヶ月後の響きです。

( ●  この投稿の最後に December 17, 2025 の昼過ぎに演奏会場で( スイッチを入れたばかりの空調機ノイズがあります。 )キャリング力を確認するために録画したものも参考として置いてあります。 )

因みに、私が このテーマに取りかかったのは2021年のことでした。この時 私は1994年製ヴァイオリンに、“27年前”に入れられたオリジナル・バスバーの交換などを依頼されたのです。

Gio Batta Morassi ( 1934-2018 ) Violin, Cremona 1994年

そのヴァイオリンは表板アーチが高さ16mmで 全体感として重く感じられ、響胴アーチも 剛性のキャラクター設定が難しい”起伏が少ないタイプ”でした。

Gio Batta Morassi( 1934-2018 )  Violin, 1994年
Bass-bar height 14.0mm  /  Weight of the top plate  81.5g ( including bass bar 4.9g )

Fingerboard  68.0g  /  Nut  1.0g
Head( after tuning peg holes ) and neck  71.0g
Total neck weight 140.0g

Weight without parts  405.0g
  Weight without chinrest  455.0g
Total weight with chinrest  521.0g

さて、少し話がそれますがこの時の視点についてお話しさせてください。

私はヴァイオリンやビオラ、チェロの音響上の特質は”共鳴( レゾナンス )”にあると考えています。それは、駆動部である弦の振動エネルギーが 従動部の”変換点”となるゾーンに留まり続けているつかの間だけ生じるものと考えられます。

駆動部である弦の振動は進行波と反射波で成立しており、下記の特徴があります。
●  P波 = 一次波( Primary wave : プライマリー波 )
速度が速く、最初に到達し、縦波であり、波の進行方向に縮んだり( 圧縮 ) 伸びたり( 膨張 )する動きをします。これは 固体、液体、気体のすべてを伝わります。
●  S波 = 二次波( Secondary Wave : セカンダリー波 )
速度が遅く、P波の後に到達し、横波であり、物質を上下に揺らす動きをします。基本的には固体のみに伝わります。

そして、従動部の”運動”では てこ原理による 振動波の増幅と、”変換点”にあたるゾーンの”ゆるみ”が生みだされています。

ですから、弦楽器においては 部位ごとの重さと”対”となるバランス、回転中心設定、回転半径、そして”力のモーメント”( 物体に加わった力が物体を回転させるときの力の大きさ )が重要と考えられます。

これらの事を念頭にオールド・ヴァイオリンなどを検証した結果、私は ペグや魂柱などのパーツを全て外した状態での標準的なヴァイオリン重量( Weight without parts )は 330g~340gであると考えていました。

●  ヴァイオリン( パーツ無し )において”対”をなす部位の重さ比率

  • ヘッド部、指板を含むネック側と響胴の重さ比は 1 : 2  ( 330gとした場合 110g : 220g )
  • ヘッド部をなす渦部( Volute )とペグボックス部の重さ比は 1 : 1  ( おなじく参考値で 18.3g : 18.3g )
  • ルネサンス期までのヘッド、ネック部と指板の重さ比は 2 : 1  ( 73.3g : 36.7g )
  • 響胴部をなす表板とそれ以外( 裏板側 )の重さは比は 1 : 2  ( 73.3g : 146.7g )

ともあれ、表板設定などにより… 絶不調に陥っていたヴァイオリンを、最良のレスポンスや響きが生じるようにとのことでしたので、私にとって この時の仕事は難問でした。
2021年 Bass-bar height 13.4mm  / Weight of the top plate 81.0g ( including bass bar 4.4g )

そして 熟慮の末に、高さ14mmであったバスバーを 高さ13.4mmのものに入れ替え、想定したような性能で仕上げました。2025年 Bass-bar height 14.8mm  /  Weight of the top plate72.7g ( including bass bar 6.1g )

それから時が経ち、ヴァイオリン、ビオラ、チェロでバスバーをいくつも製作し さらに検証を進めた結果、レスポンスや響きのキャリング力を高めるためには、やはり 高さを最大化することが重要だと確信するようになりました。2025年 November 15, 0:18  Bass-bar height 14.8mm / Arch height 16.0mm / Weight of the top plate72.7g ( including bass bar 6.1g )
It is perpendicular to the surface on the F-hole side.

Joseph Naomi Yokota  Cello, Tokyo anno 2025 /  Arch height 32.0mm / Bass-bar height 29.6mm  Antonio Stradivari  Cello,  “The Stauffer-ex Cristiani”

VIENNA micro-CT LAB  /   “Old violin”
Antonio Stradivari  Cello, “The Stauffer-ex Cristiani”, 1700年

バスバーの”大型化”は、チェリストのロンベルクが 1840年に出版した”チェロ奏法”の参照図のように、19世紀には既に ひとつの選択肢となっていました。

Method book “Violoncell Schule”, 1840年刊

Method book “Violoncell Schule”, 1839年著 / Bernhard Heinrich Romberg ( 1767-1841 )
June 26, 2024 / 12:42   I made a bass bar for a violin.

ところで バスバー設定は、外から確認しにくいので演奏者に問題とされることは少ないようですが、実際にはヴァイオリンやチェロの不調の原因となっている場合も多いようです。

   

たとえば、1989年に東京、東五反田で受注製作されたチェロは 演奏による表板変形破損が何度も生じ、その度に 製作工房で改修が加えられました。

   

それでも 不調が解決できなかったので 所有者の判断により、2024年でしたが、私にバスバー交換などが依頼されることになりました。この時にチェロに入っていたバスバーは “27年前”の1997年に作られたものでした。

また、下写真の1700年頃製作されたオールド・チェロの場合は、1986年に取り付けられたバスバーが 外から見て0.4°右回転しかしていない設定だったために、ネックとの連動が不十分で キャリング力が思わしくありませんでした。

 

そこで、2023年( 前バスバーから”37年後” )に私が 1.2°右回転のバスバーを製作して 良好な状態にもどしました。これを 外から見たイメージとなるように下に左右反転画像としてならべてみました。

     

ネックとバスバーが対応しながら響胴に”ねじり”が生じるために、バスバーが垂線方向に対して適度な角度であることが重要であることを理解していただけるのではないでしょうか。

因みに、オールド・ヴァイオリンに取り付けられたバスバーにも このように大きく右回転させた事例も存在しています。

     

このようにバスバーを大きく回転させたものは “Viol属”などで よく見られますが、”ヴァイオリン属”では19世紀になると急激に少なくなりました。それと、参考例として 他のバスバー画像も少しならべておきます。

Antonio Stradivari ( ca.1644-1737 ) Violin,  “Auer”  1699年Antonio Stradivari ( ca.1644-1737 )  Violin, “Conte de Fontana” 1702年Antonio Stradivari ( ca.1644-1737 ) Violin, “Provigny” 1716年Leopold Widhalm( 1722-1776 ) Violin,  Nurnberg‘Pietro Guarneri’ of Venice( 1695-1762 )  Violin, “Baron Knoop” 1740年Santo Serafin( 1699-1776 ) Violin,  Venice 1740年
Giovanni Battista Guadagnini( 1711-1786 )  Violin “Kleynenberg”, Torino 1783年

このような構造になっているために、弦楽器の響胴は 表板の材質やアーチ形状、F字孔の設定などと、バスバーのネック相対角度や傾斜角度 そして“厚さ”“高さ”などの剛性条件と、表板をゆるませる機能が調和する必要があり、上手くいかなかった時にはバスバー剥がれなどの不具合まで起こします。

工場製新品で販売し“1ヶ月後”に剥がれたヴァイオリンのバスバー

たとえば 下写真の、私が 修理を依頼された ピグマリウス”REBIRTH”リバース シリーズの 2001年製ヴァイオリンのような破損です。Pygmalius “REBIRTH” Series  Violin, 2001年 / Bass-bar thickness 6.4mm / Bass-bar height 11.6mm    

写真でわかるようにバスバー両側が完全に剥がれていて、指板下の表板ジョイント部も 140mm程にわたり開いていました。


このとき、中央ジョイント剥がれを撮影するために 表板をさわっていたら『パキッ 』という音とともにバスバーが外れてしまい、この景色となりました。表板を開けなければ このバスバーは響胴のなかで脱落し 「カラカラ」と音をさせていたはずです。  Pygmalius “REBIRTH” Series  Violin, 2001年
  Weight without chinrest  410.0g

これが脱落したバスバーをE線側から見たものです。
Pygmalius “REBIRTH” Series  Violin, 2001年
Weight of the top plate78.9g ( including bass bar 5.9g )

このバスバーは 長さが 275mm、 上下スペースがネックブロック側 39mmのエンドブロック側 40mmで、厚さは 写真向かって左のネック側端が 5.5mmで駒部 6.4mmのエンドブロック側端が 5.8mmです。

そして バスバーの高さは、駒部が 11.6mmで両端が 4.5mmとしてあり バスバーが厚すぎたことで極端に剛性が高まり この高さでもアウトとなりました。

なお、このヴァイオリンのあご当て無しでの重さは 410g程で、そのうちバスバーの重さは 5.9g、 バスバーがない状態の表板は 73gでした。

悲しい状況証拠ですが、この”ピグマリウス”は 響胴の変形疲労のために、魂柱( Soundpost )が立っていた部分が表板、裏板ともに窪んでいました。これこそ、バスバーが響胴と調和しておらず”鳴らすと壊れてしまうヴァイオリン”の典型例だと思います。


Pygmalius “REBIRTH” Series  Violin, 2001年

製作されてから わずか“12年”しか経過していないのに”満身創痍”といった状況ですね。

そして、2008年にバスバーの高さが 15.0mmで製作されたヴァイオリンで、“16年後”の2024年に表板が扁平となりバスバー両端が剥がれたのも同様な事例となります。

December 15, 2024  /  Genji Matsuda Violin, Newark 2008年
Weight without parts  361.3g
●  Weight without chinrest  406.7g
Total weight with chinrest  472.5g

       
December 15, 2024  /  Genji Matsuda Violin, Newark 2008年

バスバーの尾根を尖らせ三角断面とする工夫をもってしても、その高さが 15.0mmもあると 表板の振動と適合させるのは難問です。

それは、上の写真に写っているバスバー両端の剥がれぐあいからも判断できるのではないでしょうか。

December 15, 2024  /  Genji Matsuda Violin, Newark 2008年

また、このようなバスバー端の剥がれを嫌って 現在、修理中のヴァイオリンのように、製作時に バスバー端に”剥がれ防止ニカワ”を垂らして剥がれを阻止したものもあります。

December 5, 2025  /  16:33  Violin, 1980年頃
Weight without parts  414.5g
  Weight without chinrest  460.0g
Total weight with chinrest  510.3g

しかし、これらのバスバー剥がれは表板の”つり合いの破れ”が原因ですから、そのニカワ加工により歪がより増大し バスバーが反対側( 上写真 サドル中央左 )の割れを誘引したり、中央の継ぎ目が開いたりします。このヴァイオリンは30年以上使用されていなかったために、製作されてから“45年後”にバスバーが入れ替えられたことになります。

1980年頃 Violin, bass-bar height 13.2mm  /  Weight of the top plate90.6g 

December 5, 2025 / 16:40  Violin, 1980年頃

December 23, 2025 / 19:32

それから、Charles J. Rufino氏が 2008年に製作した ビオラ( 402mm ) は、魂柱のめり込みからも分かるように 使用して数年で疲労変形が進み鳴らなくなりました。

そのため 困り果てた所有者の依頼により、製作されてからわずか6年後でしたが…  私がバスバー交換などを実施しました。

Charles J. Rufino  /  Long island, New york : Viola( 402mm ) 2008. Bass-bar height 14.9mm  / Bass-bar thickness 6.0mm / Weight of the top plate101.1g / Weight without parts 530.0g
●  Weight without chinrest  592.0g

Viola( 402mm ) Bass-bar height 15.0mm / Bass-bar thickness N5.4mm – B5.6mm – E5.5mm / Weight without parts 495.0g
  Weight without chinrest  555.4g


これが、2013年12月に “自由ヶ丘ヴァイオリン”において 製作したバスバーです。このビオラは 私が定期整備を担当しており、2026年現在でも良好なレスポンスや響きを発揮しています。

   

左:  疲労破損模型  /  右:  修復後資料( 左右反転画像 )


“応力つり合いモデル”

ともあれ こういった不具合を生じさせないように、私は “ねじり”を阻害しない配慮をしながら バスバーの最大化を進めました。

Antonio Stradivari (ca.1644-1737 ) Cello “Stauffer / ex Cristiani” 1700年

July 30, 2023  “Old Italian Cello, ca.1700”  :  Arch height 33.6mm / Bass-bar height 27.9mm
February 13, 2024  Cello “adaptation” made around 1989 : Bass-bar height 27.9mm  Joseph Naomi Yokota  Cello, Tokyo anno 2025 / Arch height 32.0mm / Bass-bar height 29.6mm 

例えば 半年前に製作したチェロのバスバーは 高さ29.6mmで、それなりの”大型バスバー”となっています。

これは 自作チェロですから 不連続形状アーチの剛性も、意図的に設定しています。ですから表板アーチの頂点などと 内部のバスバーは初めから適合する設計となっています。

Joseph Naomi Yokota  Cello, Tokyo anno 2025
Joseph Naomi Yokota  Cello, Tokyo anno 2025

このときに大切なのは、バスバーの頂点位置を二つのF字孔下端を結んだラインと、全長の1/3分割ラインに挟まれたゾーン付近まで下げて、強い非対称型として 響胴の”ねじり”を誘導することです。Joseph Naomi Yokota  Cello, Tokyo anno 2025

また、バスバー自体が単純な板状でなく”ペンデンティブドーム”や”ダヴィンチ橋”のように「積層」されている、あるいは不連続に接合され 節として機能するポイントと、特定方向からの応力に対応した“ねじり”が生じやすい部分とに彫り分けてある必要があります。

   

これは 一見しても識別しにくいでしょうから、参考として 上の 2025年自作チェロのバスバー写真を縦方向だけ5倍とした画像を下にあげておきます。

それから、このように彫り込む以外の技法として、下のドイツ製ヴァイオリン・バスバーのように 加熱した針状の治具で 点々と突き刺し、このポイントで”ねじり”を誘導したものもあります。

下写真のバスバーを 縦方向のみ5倍にした画像
同様に 1870年頃のヴァイオリン・バスバー画像を縦方向のみ5倍にしたものも上げておきます。
Giovanni Baptista Guadagnini ( 1711–1786 ) “Tener viola” Original bass-bar 1757年
February 13, 2024 21:25 /  Cello bass-bar / “adaptation” made around 1989 : Bass-bar height 27.9mm February 13, 2024 21:25 /  Cello bass-bar
October 30, 2025 17:05 / Violin bass-barOctober 30, 2025 17:05 / Violin bass-bar  ( November 8, 2025  “改作”したヴァイオリン )

なお、このような機能設定は 表板が平らな弦楽器の力木や 鍵盤楽器の響胴にも見ることができます。Lute  /  CHRISTOPH KOCH  1654年

たとえば、リュートやマンドリンのような平面響板弦楽器では、表板内側に取り付けられたバスバー端がサイド側と接触しないように製作されます。

つまり これらの複数バスバーは平面響板である表板にのみ作用するように設定されているわけです。

そして、響胴のサイドとスペースを設け 剛性を上げない設定はハープシコードにも見ることができます。

“Mandolin” /  Castello Sforzesco ( Milan ) ,inv. No. 212 from 1759.

それから このマンドリンでいえば、弦方向に直交する関係とされた複数のバスバーがそれぞれ適度に傾斜していて”非平行”に取り付けられています。

これは ヴァイオリン属も含めた多くの弦楽器が”非対称”で製作された理由でもあります。

このように、ハープシコードの場合でも 底板に取り付けられた複数の横木がそれぞれ適度に傾斜しており”非平行”としたバランス設定を見ることができます。

なお、この横木端には下写真の製作中のものとおなじようにスペースが設けられ、側板と接続することで剛性があがりすぎて”ねじり”が阻害されることのないように工夫されています。

ところで、ハープシコードの場合 この複数の横木の上に響板が置かれますので、この横木は”インシュレーター”の役割をもっています。

そもそも… なのですが、楽器にとって固有振動を安定的な響きに役立てるのは 意外と難儀です。それは 音響機器のスピーカーで 簡単に検証できます。

音響機器のスピーカー性能にこだわる人は、下に”インシュレーター”と呼ばれている敷物を挟んだりします。小さなスピーカーでも 机や床とスピーカーの間にインシュレーターを挟むと音が良くなります。
From a Facebook post dated October 1, 2025

なお、インシュレーターの置き方には4点支持と3点支持があります。4点支持はいうまでもありませんが、3点支持はスピーカー正面に対して次のどちらかを選びます。

  

このような、スピーカーの固有振動を妨げない工夫により 響きは豊かにできます。

振動体について このようなイメージがあると、楽器の固有振動に関しての気づきを たくさん得ることができます。¹ Grand Piano by “Erard” Paris, 1844年

“The Liszt House” in Weimar / “C. Bechstein Pianofortefabrik” Berlin, 1860年頃   Franz Liszt( 1811-1886 ) / Carl Bechstein( 1826-1900 )


たとえば、グランド・ピアノに採用された足の数は、スピーカーに敷くインシュレーターの3点支持と似ていると思います。インシュレーター ( insulator )とは、何らかの作用の遮断を目的として用いる”絶縁材”を意味します。

それと、足部の断面形状は 振動が”密”から”疎”へ移っていく現象を鑑み、円錐形と節となるリング状の突起やくびれが組み合わせてあり、さらに先端部をキャスター状とすることで ピアノが床を鳴らしても、 床からピアノ本体の方向には振動が戻りにくい設定となっています。血管の静脈弁みたいですね。

大事なことですが、電線をながれる電流などと同じように横波( S波 = 二次波 / Secondary Wave )は 進行波、反射波とも中心部ではなく 外辺部を通ります。ですから これらの装飾にみえる凹凸は、想像以上に 響きに直結しているのです。

Grand Piano by “BLÜTHNER”  Leipzig, 1870年頃Grand Piano by “Maison Erard” Paris, 1891年Grand Piano by “Maison Erard” Paris, 1897年
Grand Piano by “Maison Erard” Paris, 1906年
( Custom-made with the chrysanthemum crest. )
° Grand Piano by “Erard” Paris, 1914年º Grand Piano by “Erard” Paris, 1914年

“Grand piano legs”

さて 話をもどしましょう。上のマンドリン内部のバスバーは小部品ですから多少傾斜していても“非平行”であっても 、一見しただけでは 大きな意味を持っているように思えないのも仕方がないかもしれません。

しかし、底板に付属するとはいえ 同様な設定であるハープシコードの横木には その曖昧さがありませんので、意識的に”ねじり”が設定されたことが理解できると思います。

上図の赤色で表したヴァイオリンや チェロバスバーに”仮想の複数バスバー”が直交するポイント 6~7カ所で、その断面形状… 特に尾根部の不連続成形をもって 表板のねじりを誘導するという発想はなかなかすばらしいと思います。

その私も 1800年代のものと推測できるバスバーをいくつか観察していて その不連続性に気がついたときは、その有効性に関しては半信半疑でした。

しかし、実際に試みたときに それは杞憂であるとわかりました。

技術的にも左手で表板を水平に保持し軽くゆらして反応をみながら、望ましいと考えられるポイントを彫り込み、表板のゆれ方が より”しなやか”であるように工夫するだけですので それほど難しくありませんでした。

このような試みは 1721年製ガリアーノ・ヴァイオリンに入れられたバスバーのように、すでに18世紀初頭には採用する弦楽器製作者がおり、20世紀初頭までのヴァイオリンなどで 時々 見受けられます。Old Cello

そのような事柄を念頭に置いた上で、検証実験として2020年製 表板アーチが16mmの”起伏に乏しいタイプ”として製作された新品ヴァイオリンを改作し、バスバーを 高さ14.8mmで作り響きなどの確認をおこないました。

●   Let’s go back two months.
2020年 Violin, September 25, 2025 / 9:27
I started remodeling on this day. 

Weight without parts  375.0g
2020年 Violin, September 27, 2025 / 15:26Gio Batta Morassi( 1934-2018 )  Violin, 1994年 
Body weight  265.0g  ( Weight of the back side body  183.5g  )
2020年 Violin, September 24, 2025 / 18:22
Body weight  239.5g  ( Weight of the back side body  156.5g  )
2020年 Violin, September 24, 2025 / 18:46
Fingerboard  70.6g  /  Nut  1.0g
Head( after tuning peg holes ) and neck  64.7g
Total neck weight 136.3g
2025年 Tokyo.  October 8, 2025 16:48 
Fingerboard  51.0g  /  Nut  0.6g
Head( after tuning peg holes ) and neck  56.9g
Forged iron nails  3.75g → Neck side( estimated ) 1.5g
Total neck weight 110.0g
November 16, 2025 / 15:51 
Body weight  220.0g  ( Weight of the back side body  147.3g  )

2025年 Tokyo.  The thinnest zone is 2.1mm, and the thickest zone is 3.7mm.November 8, 2025  
November 08, 2025 / 11:44    Weight of the top plate72.7g ( including bass bar 6.1g )

●  “焼成釘穴”に鍛造鉄釘を埋め込む工程

2025年 Tokyo.  November 14, 2025  15:55  /  Violin
November 14, 2025  20:22   /  Weight of forged iron nails 40.8mm-1.6g / 30mm-1.12g / 26.7mm-1.03g  Total 3.75gNovember 14, 2025  21:01
November 14, 2025  21:02
November 14, 2025  21:03
November 14, 2025  21:04November 14, 2025  21:06
November 14, 2025  21:06
November 14, 2025  21:13
November 14, 2025  21:14
November 14, 2025  21:20
November 14, 2025  21:21
November 14, 2025  21:22
November 14, 2025  21:24

この実施例は 撮影のために 23分間ほどかけています。通常は、鍛造鉄釘の温度が急激に下がるので、手元周りに必要なものを配置して素早くおこない、 15分程でこれらの工程を済ませます。

私が、2025年に製作したチェロに鍛造鉄釘を埋め込むときも、このヴァイオリンと同じやり方で、埋め込む鍛造鉄釘そのものを加熱して釘穴の成型をおこないました。

April 26, 2025 5:04  /  Location of forged nails

 

November 13, 2025 / 11:21   Body weight  220.0g 
November 17, 2025 / 14:36  Weight ( without parts )  330.0g
November 28, 2025  :  Violin completed
Weight without parts  330.0g
●  Weight without chinrest  371.1g

November 30, 2025 / 17:47
Total weight 415.6g ( Includes chin rest  46.0g )November 30, 2025 / 17:48

November 30, 2025  17:49
Total weight 415.6g ( 369.6g+Chinrest 46.0g  /  Dominant strings & 0.26 Gold brokat E )

The 14.8mm bass bar violin was handed over to the violinist on December 2nd. It will then be used next Wednesday ( December 17th ) from 7pm for a concert of Ravel and Debussy sonatas and piano trios. I’m looking forward to enjoying the sound of the violin from my seat in the hall.

December 17, 2025

December 17, 2025 / 13:10
Preparations for the concert begin.

The air conditioner, which has just been turned on, it makes a driving noise.

Program

  1.  モーリス・ラヴェル( 1875-1937 )  / ヴァイオリン・ソナタ ト長調 ( 1927年 )
  2.  モーリス・ラヴェル  /  ヴァイオリンとチェロのためのソナタ ( 1922年 )
  3.  クロード・ドビュッシー( 1862-1918 )  /  チェロ・ソナタ  ニ短調 ( 1915年 )
  4.  モーリス・ラヴェル  /  ピアノ三重奏曲  イ短調 ( 1914年 )December 17, 2025   20:26

 

It was a good concert.
We enjoyed it.

 

Joseph Naomi Yokota.