カテゴリー別アーカイブ: 弦楽器製作における 失われた情報について

裏板ボトムブロックの端付近も確認してください。

ご存じな方も多いように 弦楽器製作を取り巻く環境は 1980年代後半からとても良くなりました。

デジタルカメラの高性能化、データ処理技術の向上、そしてインターネットの普及などによる情報交換の高速・広域化は 私にとってめまいを感じるほどのスピードでした。

そして 気がつけば  “オールド・バイオリン” などについての資料が容易に集められる時代となっていました。

Giuseppe Guarneri del Gesù  /  The back thickness
VIENNA micro-CT LAB

こうして‥ グアルネリ・デル・ジェズとされるヴァイオリン裏板の厚さをながめたり、ヤコブ・シュタイナーのそれを知ることができる訳ですから 時代とはいえ 不思議なものだと思います。

Jacob Stainer   /  The back thickness

これらの追い風もうけて‥  私は “オールド・バイオリン”の表板、 裏板にみられる響きにつながる要素と そのへりのオーバーハング部に特徴的な加工がしてあること、そしてコーナーブロックの形状は 音響的目的のために関係( Relation )させてあると考えるようになりました。


私は この連続性こそが “オールド・バイオリン” の発音システムの “失われた技術”の正体であると思っています。

左図では 左側角が振動の起点となり奥の角がリレーションすることで「  ゆるみ 」が生まれます。また右図は対称型で 左側角の起点と手前の角がリレーションします。

ヴァイオリンやチェロ、ビオラなどは F字孔周りの振動と 共鳴部の響きによって独特の音色を生みだしています。私は この発音システムが その時に共鳴部に十分な “ゆるみ”を発生させる役割を果たしていると考えるようになりました。


そこで “オールド・バイオリン”などの高性能型を区別するためのチェック・ポイントとして、私は上図 a. の裏板ボトムブロックの端付近( 高音側 )の剛性差を確認することを皆さんにおすすめしたいと思います。

この例として アンドレア・アマティが 1555年頃に製作したと考えられるヴァイオリンと ニコロ・アマティ ( 1596–1684  ) の 1651年製、そして アントニオ・ストラディヴァリの 1733年製から その部分の画像を並べてみました。
左側の アンドレア・アマティ ( ca.1505-1577 ) のヴァイオリンにおける 点 A の剛性差については異論がないと思います。

そして‥ もし判断が分かれるとすると、あとの二台ですね。

これが意図的な剛性差のための加工と確信するには 下図の 赤線辺りが 響胴のねじり軸として機能するとスムーズにゆるみが生じることを理解する必要があるのではないでしょうか。

“Thickness”   G.B. GUADAGNINI ( 1711-1786 )  Cellos
1743年頃 & 1757 年

そのために‥ 少し話がそれて恐縮ですが 下に私の過去の投稿をあげさせていただきます。

【 ヴァイオリンの音は聴くほかにも “見て‥” 知ることが出来ます。】

弦楽器の表板は スプルース材の年輪がたてになるように使用されています。そのため縦に割れやすい特性があり それが影響してこのチェロの魂柱部には縦方向の割れ( Sound post Crack )が入っていて 表面のニスにも 縦方向のひび割れがはいっています。


私はこのニスに入った縦ひび( a. )はバランスが調和していなかったことで歪みが溜まり 表板が疲労した過程できざまれたものと思っています。

では b. c. そして d. のひび割れはなぜ入ったのでしょうか?
私は この年輪に直交するひび割れは チェロやヴァイオリンに設定された音響システムによって入ったものと考えます。

因みに‥ 私がこのように ニスのひび割れと響きを関係づけて考えるようになったのは  2003年 9月29日 の 16:45頃からです。

長くなりますが、ここで その時のお話をさせて下さい。

それは 2週間前まで 11歳の長女が使っていた 1/2サイズのヴァイオリンを 7歳の二女が使いたいと言い張ったので 、その準備として 弦などの交換を検討するために 工房の入り口に立ってこのヴァイオリンを私がチェックしている時のことでした。

風もなく空が晴れわたったおだやかな夕方で 私が立っている工房の入り口には まだ日差しがさしこんでいました。

そのときニスのひび割れが 『 キラッ ! 』と蜘蛛の糸のように光ったのが 私の目にとびこんできました。 それで私は このヴァイオリンの表板と側板にはいった ニスのひびを確認してみました。 はじめは 『  なるほど。 分数ヴァイオリンでも フルサイズとおなじ入り方をするんだ‥‥ 。』と思いながら観察していたのですが、 当時 私が記憶していた他の事例とあまりにも合致していたので 『  これは‥ もしかして! 』と思ったときに 私の顔色は変ったと思います。

それまでニスのひび割れを特に重大なことと思っていなかった私でしたが、このときヴァイオリン響胴の振動モードとそれが きちんと繋がったのです。 私はこのとき『  ヴィジョンが降りてきた‥‥ 。』感覚のなかで 『  いま自分の頭のなかにうかんでいるヴァイオリンのヴィジョンは本当なのかな? 』と 戸惑いながらも楽器の角度を変えたりしながら観察して、もう一度 頭にうかんだ ヴァイオリンの振動モードに誤りがないかを検討しました。

その最中のことです。  私が表板側と側板に気をとられてよくみていなかった 裏板がレイヤー映像のように頭のなかに浮かんだのです。 『  表板がこう振動して側板はブロックによって こう動き‥ということは裏板のここら辺りにこういう形状のニスひびが‥‥ 。』と 私は 独り言をいいながら 裏板を見るために ヴァイオリンをひっくり返しました。

いまでも その瞬間をときどき思い出します。
とにかく感動しました。  私が予測したとおりの形状の小さなニスひび割れが 裏板の推定した位置に 入っていたのです。 おかげさまで 私は 鉱山技師が鉱脈を発見したような 歓びを経験しました。

下の図は そのニスひびを 2005年になって 私のノートに記録したものです。


この時に私がはじめに気がついたのは下幅広部に真横に入っているニスひびが テールピースの下で繋がっておらず 魚のウロコ状のニスひびとなっている事でした。

それで私は このニスひびは ボトムブロックの端付近( 高音側 )の点 a. から ゆれがはじまる”ねじり”によるものと判断したのです。

その証拠に反対側のネックブロック部をみると 点 b. 辺りからブロックのねじりによるニスひびがはいっています。

【  弦楽器のニスに入ったヒビが物語ること‥。】


このような ネックブロックのねじりは上の動画で確認できます。
おそらく撮影の都合だと思いますが鏡像になっていますので ネックブロックは手前側が高音でその奥が低音側となっています。

“Varnish crack”   1970年製     Karl Hofner Cello( 2006年撮影 )

それから 私が上図で – 7.0° としているねじりの軸線は 下にあげさせていただいた アントニオ・ストラディヴァリ ( 1644-1737 ) が 1679年に製作したヴァイオリンの “サンライズ”の裏板年輪の木取を参考にしました。

私はこれらの仮説と状況証拠によりその楽器が “オールド・バイオリン”の音響システムに基づいているかを確認するために 裏板ボトムブロックの端付近( 高音側 )の”意図的”な剛性差の痕跡を確認することは重要と考えています。


最後に実例として アンドレア・アマティ ( ca.1505-1577 ) が 1566年頃に製作したと考えられるヴァイオリンをあげると‥  裏板へりのオーバーハングの差異は小さかったとしても、点 B. のひび割れを この楽器の特質のひとつと見ることが出来ると思います。

これにより 少なくとも 下に並べた 1555年頃のヴァイオリンと同じ製作者によると考えても違和感はないのではないでしょうか?

このように音響システムの視点を持ちながら 弦楽器を観察すると “オールド・バイオリン” と贋作の違いは 意外と見分けやすいのではないかと 私は思います。

 Gasparo da Salò  /   Violoncello

 

2017-2-09                 Joseph Naomi Yokota

裏板 右回転 21°~23°位置 のオーバーハングについて

 

私は “オールド・バイオリン”の特徴である、へり部分の側板からオーバーハングする設定が “意図的”に少なくされている部分があることは音響的に重要と考えています。

 

Andrea Amati  ( ca.1505-1577 ) ,   Violin “Charles Ⅸ”  1566年頃

これは 裏板の焼いた針などでつけられた痕が明瞭なヴァイオリンで確認すると、オーバーハングする設定が “意図的”に少なくされている部分は 直線状の軸線に対応している事からも同意していただけると思います。

Andrea Amati ( ca.1505–1577 ) ,  Violin  1555年頃

例として アンドレア・アマティのヴァイオリンで確認してみましょう。

Andrea Amati ( ca.1505–1577 ) ,  Violin  1555年頃

このヴァイオリンは 裏板 右回転 22.4°位置の下端部オーバーハングがかなり削り込まれているようです。

このように “オールド・バイオリン”では ライニングのすぐ近くまで削られたヴァイオリンが何台も存在します。

但し、ここまで削り込む加工がされたものは 16世紀から 19世紀までの弦楽器においてその存在は貴重です。

上図のように ニコロ・アマティ ( 1596–1684  ) や アントニオ・ストラディヴァリ ( 1644-1737 ) のヴァイオリンでは オーバーハング部の削り込みは外見上の違和感が少ない仕上げとなっています。

Andrea Amati ( ca.1505–1577 ) ,  Violin  1555年頃

Nicolò Amati ( 1596–1684  ) ,  Violin 1651年

Antonio Stradivari ( 1644-1737 )  Violin  “Rode – Le Nestor”  1733年

いずれにしても下図のように左下コーナー部で パフリングの外側の幅を確認したあとで 左下部のパフリングの外幅を見てみると、あきらかに差異があることが分るのではないでしょうか。

2017-2-04                 Joseph Naomi Yokota

それが本物の”オールド・バイオリン”でしたら 裏板の マークを確認してください。

 

私は”オールド・バイオリン” の特徴を確認 するときは 裏板駒下部と その左下に焼いた針などでつけられた マークが無いかを調べます。

例えば アントニオ・ストラディヴァリが製作したとされるヴァイオリン “ローデ” の裏板には下写真のような位置に それが見られます。
Antonio Stradivari ( 1644-1737 ),  Violin  “Rode / Le Nestor” 1733年

参考にして頂くために‥ このストラディヴァリウスと クレモナ派の始祖と伝えられる アンドレア・アマティが 1555年頃に製作したと考えられるもの、そして その孫である ニコロ・アマティが その 100年ほど後に製作したヴァイオリンの画像を並べました。

A、点 B は3台とも同じ座標です。

これを観察すると ニコロ・アマティ ( 1596–1684  ) の弟子である アントニオ・ストラディヴァリ ( 1644-1737 ) が アンドレア・アマティ( ca.1505–1577 )の 170年以上も後に、その製作方法を誠実に受け継いでいたことが感じられると思います。

私はこのようにして比較対象をしながら”オールド・バイオリン”の研究を進めました。

そのなかで 、参照のためにあげた アンドレア・アマティが 1555年頃に製作したと考えられる このヴァイオリンが 非常に重要な意味をもっていると考えるようになりました。

Andrea Amati ( ca.1505–1577 ) ,  Violin 1555年頃

なぜなら、この楽器は “オールド・バイオリン” に多数入っている焼いた針などでつけられた痕が直線状の軸線として用いられたことを暗示しているからです。

これらのピン・マークを 高解像度の画像で確認していくと、下の参考写真のように それらが連なる軸線を何本も見出すことができます。

Antonio Stradivari ( 1644-1737 ),  Violin  “Rode / Le Nestor” 1733年

この作業は‥ 満天の星空をながめながら星座を探すのに似ていますが、細かい “点” ではなくもっとはっきりした “工具痕跡” として加工された マークをもつ楽器を参考にすれば ニコロ・アマティ ( 1596–1684  ) が 1651年に製作したとされるヴァイオリンのように 拡大すると細かい “点” が多数見られる楽器でも それほど難しくはありません。

私は それらの マークが連なる線が 正中線に対して右回転、あるいは左回転で何度にあたるかを画像ソフト上で確認して資料化しています。


Nicolò Amati ( 1596–1684  ) violin 1651年

例えば このヴァイオリンの高解像度画像では上のストラディヴァリウスと同じ 右回転 21.6度の位置に 14個の焼いた針痕を見ることができます。

また 私は下図のように 右回転 14.8度と 28.2度にも軸線を見出しました。

同じように観察をしていくと 下写真の アンドレアの息子たちである アントニオと ジローラモの兄弟が製作したとされるヴァイオリンでも 21.6度 には 10個の針痕があるようです。

 Antonio and Hieronymus Amati        Cremona 1629

私は このようにして基礎資料を増やしていきました。
そしてその後の研究により 結局これが”オールド・バイオリン” の発音システムに繋がっていることが解明できました。

Gasparo da Salò  /  Violoncello

そういう事で、これは 弦楽器を鑑定する場合にも強力な状況証拠となり得ますので 私は皆さんにヴァイオリンなどを調べる際は 高解像度の写真を撮影し‥ それを 拡大して焼いた針などで付けられたマークの位置関係を検証することをお奨めいたします。

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2017-2-03                 Joseph Naomi Yokota

糸巻きの長さは 弦楽器の響きを左右します。

marco-gandolfi-violin-1994%e5%b9%b4-b-mono-l

Marco Gandolfi,   violin  Cremona  1994年

これは先日 整備のために私の工房に持ち込まれたヴァイオリンのヘッド部です。

私は、この挑戦的なペグは 製作時のままだと判断しました。

なかなか面白いアイデアでしたが 残念ながら 彼が製作した響胴とは調和していませんでした。

それでも‥ 私は このように糸巻きの長さを意識して弦楽器を製作する人を すばらしいと思います。

 

2013-5-04-hところで、糸巻きの役割を皆さんご存知でしょうか。

私は ペグ機構は 単に弦をチューニングしながら固定する役割のほかに、響胴のゆれに積極的に影響をあたえる仕組みとして考案されたと考えています。

これは下の写真のように糸巻きをはずした状態と 4本とも取り付けた状態、それから左側の D線、G線ペグ 2本を取り付けた状態と その逆に右側だけなど いくつか条件を変えて揺らしてみると 響胴部の固さが変わったり 重心位置が移動しますので ‥ 可能な方は 実際にゆらしてみることをおすすめします。

2013-5-04-e-l2013-5-04-f-l2013-5-04-g-l

参考としての実験は こういう感じとなります。

2013-5-04-a-l

2013-5-04-h-l
2013-5-04-d-l
糸巻きでヴァイオリンのゆれ方が変わることを確認したら、最後に エンドピンを差し込んでから 同様にヴァイオリンを揺らしてみてください。

ヴァイオリンの重心が手元近くに移動するので、ヴァイオリンが軽くなったように感じるはずです。

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それでは‥ そもそも歴史の上で 糸巻きの長さはどういう変遷をたどったのかをすこし見てみましょう。

Umgegend von Flensburg gebraucht Bredebro 1909 Verlag Th Thomson Flensburg L

この写真は 1909年頃にユトランド半島の 小さな町 ブレデブロ( Bredebro of Southern Denmark )で撮影されたようです。ここは 1866年にドイツに併合されたドイツ北端の都市フレンスブルク( Flensburg )から北西に30㎞ほど離れた場所です。

下の拡大写真のように 左側の 2人は短い糸巻きで右側の男性は長い糸巻きの楽器を使用しています。写真は 実にわかりやすいですね!

umgegend-von-flensburg-gebraucht-bredebro-1909-verlag-th-thomson-flensburg-i-lこのように 1900年代の初頭に撮影された弦楽器の写真には 長短の糸巻きが混在しています。

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Still-Life with a Violinist      1620年頃

ヴァイオリンの黎明期にさかのぼりますが 1620年頃に製作されたこの油画にも 短い糸巻きを見ることが出来ます。

また 私は 下のような版画にも 十分資料としての価値があると考えています。

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John Gunn   “The Theory and Practice of Fingering the Violoncello”   1789年

それから、この 著名チェリストの肖像画でも糸巻きが短かったことがわかります。

bernhard-romberg-1767-1841-1815%e5%b9%b4-1%e3%80%80%e3%80%80

Bernhard Romberg ( 1767-1841 )  1815年

結論としては‥ 私が調べてみた限りでは 現在のように長い糸巻きが一般化したのは第一次世界大戦以降のようです。

marco-gandolfi-violin-1994%e5%b9%b4-a-l
さて、音響上の証明は残念ながら 実際に設定してみるしかありません。

因みに 私が先日整備のために お預かりしたヴァイオリンの糸巻きは下の写真の設定に変更し響胴の共鳴が起りやすくなりました。

興味がある方は この糸巻きの長さ設定を試してみてください。

marco-gandolfi-violin-1994%e5%b9%b4-c-mono-l
この投稿はここまでです。

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2016-11-09                Joseph Naomi Yokota

 

弦楽器のニスに入ったヒビが物語ること‥。

viola-2002%e5%b9%b4-a-l395mm Viola  /  Pygmalius   anno 2002
F.    393.0 – 186.0 – 126.7 – 238.5
B.    395.0 – 187.5 – 126.8 – 239.5

このビオラは  所有者の方が 今から 14年程まえに大学のオーケストラ部に所属する際に購入され  6年ほど使用したのちに休眠状態だったものです。

この楽器には 写真でもわかるようにニスにヒビ割れが入っています。

viola-2002%e5%b9%b4-b-l
そして、このニスのヒビ割れを確認しやすいように 私がトレースしたのが下の画像です。

viola-2002-2016%e5%b9%b4-%e3%83%8b%e3%82%b9%e3%81%b2%e3%81%b3%e5%89%b2%e3%82%8c-1-lviola-2002-2016%e5%b9%b4-%e3%83%8b%e3%82%b9%e3%81%b2%e3%81%b3%e5%89%b2%e3%82%8c-2-l
これらを検証すると響胴の運動のしかたが理解できます。

viola-2002%e5%b9%b4-c-mono-l
たとえばこの画像は上の二枚を駒側から見たようにレイヤー処理をしたものです。

私の経験では ニスのひび割れが確認できるヴァイオリンやビオラ、チェロでは、楽器としてのグレードが違っても いくつかの共通するパターンが見られました。

このことから 普及型であっても これらの弦楽器は 基本となる弦楽器システムの一部は設定出来ていると 私は考えています。

言い方を変えれば こういう普及型の弦楽器こそ、達成できなかった条件設定を確認するのに適していると私は思っています。

 

2016-11-06               Joseph Naomi Yokota

【  裏板ボトムブロックの端付近も確認してください。】

指板の面取りは 興味深い設定だと思います。

cello-fingerboard-1

1701 ~ 1714年  War of the Spanish Succession
“France : Louis XIV ( 1638-1715 ) × Habsburg : Karl VI ( 1685-1740 )”

●  Cremona governance countries
España ( 1513 ~ 1524, 1526 ~ 1701 ) – France (  1701 ~ 1702 ) –  Republik Österreich / Habsburg  ( 1707 ~ 1848 )
●  Casa Savoia :  1713年 Regno di Sicilia – 1720年 Regno di Sardegna  / Torino – 1848年 The First War of Independence – 1859年 The Second War of Independence –  1866年 The Third War of Independence

 

● Luigi Rodolfo Boccherini ( 1743-1805 ), 1743 Lucca / 1757 Vienna  “The court employed” / 1761 Madrid / 1771 String Quintet Op. 11  No. 5 ( G 275 ) :   Italian cellist and composer 

Marie Antoinette ( 1755-1793.10.16 )
1770年  She married  Louis-Auguste ( 1754-1793.1.21 )  /  ” Louis XVI ( 1774 ) “  at the age of 14.
1793年  ” Louis XVI ” ( 1774 )  /  Louis-Auguste ( 1754-1793.1.21 )  

●  Johann Peter Salomon ( 1745-1815 ), Bonn / Prussia / ca.1780 London / 1791 ~ 1792, 1794 ~ 1795 Franz Joseph Haydn  :  Violinist

□  François-Xavier Tourte ( 1747-1835),  Paris :   Bow maker

●  Carl Stamitz ( 1745-1801 ), Mannheim / 1762 Mannheim palace orchestra / 1770 Paris / Praha, London  :  Violinist

●  Johann Anton Stamitz ( 1754 – ‥ ), Mannheim / 1770 Paris / 1782 ~ 1789 Versailles / ‘ 1798‥1809 Paris ‘  :   Violinist

■  Giovanni Battista Ceruti  ( 1755-1817 ) , Cremona  :  Violin maker.

●  Giovanni Battista Viotti ( 1755-1824 ), Fontanetto Po / Torino, Paris, Versailles, 1788 Paris, London, 1819-1821 Paris,  London :   Violinist

●  Federigo Fiorillo ( 1755-1823 ),  Braunschweig / 1780 Poland / 1783 Riga / Paris / 1788 London  He played the viola in Saloman’s quartet.  / 1873 Amsterdam, Paris

●  Wolfgang Amadeus Mozart ( 1756-1791 ), Salzburg / 1762 München, Wien / 1763 ~ 1766 Frankfurt, Paris, London / 1767 ~ 1769 Wien / 1769 ~ 1771 Milano, Bologna, Roma, Napoli / 1773, 1774 ~ 1775 Wien / 1777 München, Mannheim, Augsburg / 1778 Paris / 1779 Salzburg / 1781 München, Wien / 1783  Salzburg  / 1787 Praha, Wien / 1789 Berlin / 1790 Frankfurt / 1791 Wien, Praha, Wien

ドイツのチェリスト  ベルンハルト・ロンベルクは 父親と共に1790年頃に ボンにおいて ケルン大司教の宮廷オーケストラに参加したとされています。そして そこで知り合ったベートーヴェンの ‘ あなたのためにチェロ協奏曲を作曲する。 ‘という申し出を断った逸話が残る人です。

ロンベルクは、チェロの設計と演奏にいくつかの革新をもたらしたことでも知られています。

例えば 1/2 や 3/4サイズのチェロを作るべきであると提案したことやチェロの記譜法の単純化などがそうですが、弦楽器にとってはなんといっても チェロの指板にフラット面を設定したことが重要だと私は思います。

このアイデアに関しては 演奏上の目的などいくつかの説明が試みられていますが、私の個人的な推測としては ネック振り設定と 指板裏加工の考え方を反映したものと思っています。

皆さんは どうお考えでしょうか?

 

●  Bernhard Heinrich Romberg  ( 1767-1841 ),   “The Münster Court Orchestra” / 1790 Bonn  “The Court Orchestra” /  He lengthened the cello’s fingerboard and ‘Flattened’ the side under the C string  :   German cellist and composer 

●  Rodolphe Kreutzer ( 1766-1831 ), Versailles / 1803 Wien “Kreutzer Sonata ” Ludwig van Beethoven 1770-1827,  Paris 1795 ~ 1826 ‘Conservatoire de Paris’ –  1796年 Caprices – 1807 comprises 40 pieces – “42 Études ou Caprices”  / Genève, Swiss :   Violinist

●  Pierre Baillot ( 1771-1842 ),  Paris :   Violinist

●  Pierre Rode ( 1774-1830 ), Bordeaux / 1787 Paris /  1804 Saint Petersburg, Moscow / 1812 Wien ” Ludwig van Beethoven 1770-1827  Violinsonate Nr. 10 in G-Dur, Op. 96 ” / 1814 ~ 1819年  Berlin,  “24 capricci”  /  1830 Lot-et-Garonne :   Violinist

●  August Duranowski ( ca.1770-1834 ), Warsaw / Paris / 1790 Brussels / Strasbourg :   Violinist

●  Ignaz Schuppanzigh ( 1776-1830 ), Vienna /  He gave violin lessons to Beethoven, and they remained friends until Beethoven’s death.  :  “Schuppanzigh Quartet”  :   Violinist

 

 

2016-11-02               Joseph Naomi Yokota


あなたは 三角フラッグ現象を ご存じでしょうか?

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私は時折 「 三角旗 」はいつごろ発明されたかを考えることがあります。シンプルな現象ですが ニュートン以前に十分意味が理解されていたことは驚愕するような事実だと私は思います。

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ヴァイオリンなどのサウンド・ホールは突き出した部分が単純な固定端振動につながるレベルではなく、エネルギーを収れんさせ激しく振動させる技術が用いられた可能性が高いと私は考えています。

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ともあれ 皆さんも『 オールド・バイオリン 』などのサウンド・ホール周りには これらの現象を誘導するためと考えられる ’焼針跡’が確認できると思います。

この投稿は以上です。

2016-10-24            Joseph Naomi Yokota

非対称楽器であるバイオリンの “名器的響き” を楽しんでください。

疑い深い人のことを英語では ” Doubting Thomas “と言います。新約聖書のヨハネによる福音書( ヨハネ20:24-29 )で 不在だった使徒トマスが他の弟子たちに非常に実証的な要求をしたことからきている訳ですが、悲しいことに 私が ヴァイオリンは 非対称楽器であることをお話しすると‥ 現代の 弦楽器製作学校では ヴァイオリンは左右対称の形をしていると教えられている関係でしょうか  “非対称” の意味が理解できずに似たような反応をされる方が少なくありません。

そこで私は ヴァイオリンのほんとうの響きを疑似体験していただくことで 誤った認識を修正していただこうと決心しました。

では‥ はじめに ルネサンス期にイタリアで製作された一枚の油画をみてください。

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Alessandro Bonvicino( ca. 1498–1554 ) Brescian   1530年頃

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Alessandro Bonvicino detto il Moretto da Brescia ( c.1498-1554 )1530年頃

アレッサンドロ・ボンビチーノは ヴァイオリンという楽器が誕生した時期に ブレシアとヴェネチアで活躍した画家です。 彼は宗教画を中心として すばらしく緻密な油画などを残しました。 因みにこの絵は 1530年頃に製作されたそうですが‥ 私はこのモチーフとされた楽器は本当にすばらしい響きをもっていたと信じています。

解像度が高い画像を拡大してみると‥ おそらくペグは左側 4本で 右側 3本となっていて これに 7本の演奏弦が張られているのですが、それに加えて テールピースの 6番、7番弦の穴を通して弦状のもの( 上図の赤線 )の両端を ペグボックス または糸巻きに刺した金属製ピンに縛りつけてあります。

一部の専門家はこれを レゾナンス弦と考えているようですが、私は一本のガット弦をテールピースの2つの弦穴を通し 両端を金属ピンに固定することで張力を加えるようにしてあると思っています。

上の絵画にある楽器もそうですが‥ この時期に製作されたリュートやヴィオール属、ヴァイオリン属の弦楽器の中には、下のオックスフォードのアシュモリアン博物館に展示されている古楽器や ジロラモ・アマティの リラ・ダ・ブラッチョのように『 回頭機構 』を持った弦楽器があったことが私の念頭にあるからです。

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因みに、ヴァイオリン製作の歴史では イタリア最古の製作者として知られる アンドレア・アマティ( Andrea Amati  ca.1505 – 1579 )は プレヴェザの海戦の翌年である 1539年頃にクレモナに工房を設立したことが知られています。

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このアマティ家は 1740年に アンドレアの曾孫である ジロラモ Ⅱ( Girolamo Ⅱ Amati  1649-1740 )が亡くなるまで四代、およそ200年間にわたって ヴァイオリンなどの名器を製作し続けたとされています。

ですから アマティ工房で 黎明期に製作されたヴァイオリンなどにも『 回頭機構 』として ペグボックス に斜めに金属製ピンを通した跡を見ることができるのです。

残念ながら現代では これらの弦楽器のほぼ全てのピン穴は埋められてしまったため正確な検証が難しくなっていますので、ジロラモ・アマティの リラ・ダ・ブラッチョは本当に重要だと私は思います。

 

それでは、ここからこの『 回頭機構 』のような揺れにより得られる響きの検証実験についてご説明したいと思います。

この実験に使用するために 私は アレッサンドロ・ボルティーニ氏が 1985年に製作したヴァイオリンと、サンドロ・アジナリ氏が 2000年に製作したヴァイオリンを用意しました。

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Alessandro Voltini(  born in Cremona, 1957 ) violin  1985年http://www.voltini.it/bio.htm

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さて 実験は簡単です。私たちが日常的に使用している輪ゴムを 1回の実験で 1本使用しますので 数本準備します。そして、まずなにもしていない状態で鳴らします。それから写真にあるように輪ゴムをかけて同じように試奏してみます。

私はこれまでこの手法を頻繁に試して その結果を知っていますので‥ 皆さんが ご自分のヴァイオリンで試した場合でも響きの差は 驚愕するくらいに違うと思います。

この時 なるべく比較し易いように私は輪ゴムをかけた状態で 1分くらい鳴らしたら、それをハサミなどで切ってはずして すぐにまた試奏をして違いを確認しています。『 無し→有り→無し 』で1回で 、これを2回くり返し 響きの変化を聴き分ければ 実験としては十分だと思います。

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なお‥ 私が 実験に使用した輪ゴムは下写真にあるものです。

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それから サンドロ・アジナリ氏が製作したヴァイオリンに取り付けられたペグは 輪ゴムが引っ掛かりにくかったので市販されているセロテープで止めました。

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sandro-asinari-violin-2000%e5%b9%b4-7-l

 

この実験は輪ゴムの張力( 0.36kg )で ヘッドの回転運動などのゆれや響胴のねじりを増やしたことによる響きの変化を確認するものです。

そして‥ 今回 実例として挙げさせていただいた ヴァイオリン 2台を用いた実験でも響きの差は劇的な違いがあったことをここにご報告しておきます。

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Sandro Asinari(  born in Cremona, 1969 ) violin  2000年
https://www.facebook.com/sandro.asinari

 

最後に この実験のリスクについての考察をしておきたいと思います。

下図にあるように もしペーター・インフィールドの4本セットを張っていたヴァイオリンで、E線を コレルリ・アリアンス・ヴィヴァーチェに変更すると約 0.5kg 張力が増えます。

これとは逆に張力が約 8.3kg のペーター・インフィールドE線を張力が 7.2kg 程とされているドミナントのE線にすれば約 1.1kg 減ることになります。

私は このような状況でヴァイオリンは使用されていて それでも 強度上の大きな問題は起っていないことと、輪ゴムの張力が弦 4本の合計張力の 2%以下であることから‥ 特に問題はないと判断しています。

ただし、ご自分でこの実験を実施される場合は 当然ですが あなたの自己責任となりますので 慎重に状況把握をしながら行なって下さい。

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なお 剛体の『 運動 』につきましては 私の娘が使用した都立高校の物理の教科書を下に引用させていただきました。

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それから‥ 余談で恐縮ですが 私は 剛体の『 運動 』の具体例として私は いつもバトン・トワリングのバトンのお話しをしています。

バトンは中央の棒をシャフトと言い両端のおもりは大きい方がボール、小さい方はティップと呼ばれています。 そしてこの道具で最も重要なのは ボールとティップの重さが異なることで重心がシャフトの中心からずらしてあることです。

この結果‥ バトンを空中に回転させながら投げあげると回転運動を持続しながら落ちて来る現象が生じます。もし両端が同じ重さだったら 重心が中央に来てしまうので 回転運動だけでなく並進運動もおこりやすくなり 安定した回転運動が得られなくなってしまいます。 これはブーメランなどにも共通しています。

   

ヴァイオリンなどの弦楽器でもゆれを持続させることで より低い音域の響きがうまれる条件がそろうために‥ つりあいにくくする工夫がいくつもなされています。

たとえば ヘッドに糸巻きが交互に取り付けられていたり、響胴やF字孔が微妙な非対称とされていることなどが それにあたります。

私はこれらの実験により 新作イタリーに限らず現在 製作されているヴァイオリンの多くが “ねじり”が不足していることで 多くの不具合が生じていると考えています。

それから 私は『 オールド・バイオリン 』ではない 現代のヴァイオリンにおいても その仕組みの一部は継承されているので ‘節’と’腹’の役割を踏まえバランスをとれば 18世紀ころの豊かな響きはある程度は再現が可能と思っています。

 

 

今日はここまでといたします。
ありがとうございました。

2016-7-21         Joseph Naomi Yokota

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2010-12-12 16:20  /  Opening
2013- 8-24 16:08   /  50,000 passing
2013-12-04 13:25  /  60,000 passing
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あなたの楽器とビニールテープで『 オールド・バイオリン 』の響きを疑似体験してください。

弦楽器裏板内側の帯状羊皮紙と 軸組について

『 オールド・バイオリン 』の時代に製作された ヴァイオリンやリュートなどの弦楽器で 裏板内側に帯状に貼られた羊皮紙( The parchment covering )についてお話ししたいと思います。


Jacob Steininger ( c.1751-1823 )violin  Mainz 1781年
“DIE MAINZER GEIGENBAUER”


Jacob Steininger  /  violin  Mainz 1781年

これは ヴァイオリンの場合では 裏板の中央付近に 幅が 6~7mm 程で、長さが 31cm 前後の帯状に貼られていたりします。

このような羊皮紙の利用方法を誰が発案したのかは正確にはわかりませんが、たとえば チロル地方の Absam の弦楽器製作家 Jacob Stainer( ca.1617-1683 )のヴァイオリンによく用いられたことは知られていますし、他の地域で製作された弦楽器でもめずらしくはありません。

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私がこの羊皮紙に着目したのは 1993年に Bologna で出版された ” Strumenti musicali europei del Museo Civico Medievale di Bologna ” に掲載された コレクション番号 97の 下にあげたテナー・リュートの写真を目にしたからです。

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これは Hans Frei in Bologna のラベルが入っていて 1597年製作の テナー・リュートとされています。

私は この写真で ジョイント部ではない中央付近にこのように羊皮紙が貼られているのを目にして‥ 強い衝撃を受けました。

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リュートは ジョイント部が剛性が高く、そのうえに下の製法のようにジョイント部の厚みはそのままにしてフラット部を溝状にスクレープされたことにより メリハリが大きくなるようにして仕上げられています。

    

ですから‥ 上図で羊皮紙が貼られている位置が重要な意味をもっていると 私は直感したのです。 そこで改めて 羊皮紙が貼られたヴァイオリンを調べてみたところ、センター位置から微妙にずれた位置が選ばれていることが分かりました。

その時から私は 音響上の判断としてどのような基準で その位置が選ばれたかを真剣に考えはじめました。

意外とこれは難問で 実際に表板をあけないで F字孔から羊皮紙を貼る実験をして それが実行不可能であることを確認したり‥ さまざまな試行錯誤が続きました。

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たとえば 弦楽器にとって ニカワで接着されている表板を剥がす作業は当然ながらリスクです。上写真の ヴァイオリンと出会った時期に私は『  ヴァイオリン内部に羊皮紙を貼るためだけに表板がはがされる事はあったのか? 』という設問について長考していました。

私は このヴァイオリンの幅の狭い羊皮紙跡を『 大急ぎで剥がしたかのような跡 』と解釈し‥  この楽器は内部の羊皮紙を貼りなおすために表板が剥がされ 幅の狭い羊皮紙をはぎ取り すぐに 幅広の羊皮紙を貼り その直後にふたがされたと判断しました。

これらの羊皮紙については いつ貼られたかの証明が事実上不可能なので あくまで個人的な見解としてですが‥  私は 羊皮紙は製作時だけでなく弦楽器の音響調整としても用いられていたと考えています 。

『 オールド・バイオリン 』などを調べてみると 下画像のシュタイナーのように製作時の位置そのままの可能性がある楽器もありますが、組みあげたときに不調和だった時は新品であっても表板をはがして位置の変更などの調整が必要となったと私は推測します。

なお‥ 話がそれて恐縮ですが、私は皆さんに 下のリンクでこの画像をご覧になることをお奨めしています。

状況証拠ではありますが ‥ 私は Rudolf Hopfner 氏のこのサイトの ” Measuring( 測定 )”の click here. にある羊皮紙下の印の存在は 私も意味深いと思います。

http://www.violinforensic.com/visualizations/measuring
Underneath the parchment covering the center joint of the back of the violin by Jacob Stainer mentioned above, five marking points are hidden. Their distance from the lower end of the body can be measured precisely. To run a video of this procedure click here.
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さて、ここから本題のお話しに入りましょう。
この技術でもっとも重要なのは羊皮紙を貼ることで得られる音響上の効果を事前に予測することです。 そこで私は 表板をはがさない状態で羊皮紙を貼る位置を探る実験方法を考えました。

これは 羊皮紙の効果を市販のビニールテープを利用して推測するものです。

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上写真のように ヘリを 2mm程折り返した状態で ビニールテープの粘着力を低下させるためにケント紙などにまっすぐに貼り 31cm程でカットします。

それから 実験に用いるヴァイオリンのニスを傷めないために‥ 何度か貼ったり剥がしたりをくり返して必ず軽く付着する程度まで粘着力を調整してください。

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粘着力の調整が済んだら カッターで幅が 6.0mm程にカットしてください。
因みに、私が この実験に使用したビニールテープ( 310mm × 6mm )の重さは  0.4g でした。

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ビニールテープの準備が済んだらヴァイオリンを用意します。
なお‥ 私はこの投稿写真を撮影するために 新作イタリー・ヴァイオリンを使用しました。

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これは日本国内で クレモナの製作者がつくったヴァイオリンとして販売されている標準的なグレードのものです。

さて実験は まずなにもしていない状態でヴァイオリンを鳴らし‥ その後で下写真のように裏板の中央より少し左側( E線側 )の位置で、上下ブロックの間にあたる部分に 先ほど準備したビニールテープを貼ります。

そしてこの状態で ヴァイオリンを試奏します。それから、このビニールテープをゆっくり剥がしてから‥ また試奏をします。これを数回繰り返し 響の変化を確認してください。

羊皮紙を貼るためのシュミレーションとしては、ビニールテープを貼る位置を少しななめにしたり左右にずらしたり、あるいは 5mm 位ずつ切って短くしていきながらヴァイオリンの響き方によって最良の位置を決定します。

私が実際に このシュミレーション結果に合わせて 表板を剥がしてからビニールテープの反対側の位置に同じサイズのティンパニーの薄皮を接着する加工を、自作ヴァイオリンやオールド・ヴァイオリンでおこなった限りでは‥ ほぼ同じ効果がみとめられました。

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私は このシュミレーションを皆さんに経験していただければ この投稿のタイトルとした  ” あなたの楽器と ビニールテープ 0.4g を使って 『 オールド・バイオリン 』の響きを疑似体験してください! ”  が 大袈裟な表現ではないことが理解していただけると思っています。
jiyugaoka-violin-cello-6-l
結果としてこのシュミレーションによって 私は響胴中央部の軸組の設定を学び、製作に活かせるようになりました。

では‥ 本日はここまでという事にさせていただきます。
ありがとうございました。

 

2016-10-20     Joseph Naomi Yokota

弦楽器製作における 失われた技術について ‥‥ その確認方法

 

2014-10-22 Cello - B L
私は 18世紀末までの弦楽器製作者は 響胴の’節’と’腹’の原理をほぼ正確に理解し、実際に用いていたと考えています。

この投稿では 黄金期の弦楽器製作技術の特徴を見ていただき、そのあとで検証実験についてお話ししたいと思います。

Matteo Goffriller (1659–1742) Cello Venice 1705年 - 1 L
数年前に亡くなった ヤーノシュ・シュタルケル(János Starker  1924 – 2013 )さんが使用していたチェロは、1705年にベネチアで Matteo Goffriller ( 1659–1742 )  が 製作したものとされています。

Matteo Goffriller Cello Venice 1705年 MONO - 1 L
このチェロにはへり部分の’傷’が 沢山( おそらく200個程‥ )ありますので、A ゾーンと B ゾーンの’傷’もたやすく確認できます。

Matteo Goffriller (1659–1742) Cello Venice 1705年 - 3 L
この部分の’傷’は ストラディヴァリ・ソサエティの エドゥアルド・ウルフソン( Eduard Wulfson 所有し、ナターリャ・グートマン( Natalia Gutmanさんが使用している グァルネリ・デル・ジェスが製作したとされる チェロとも共通しています。

Guarneri 'del Gesù' cello 1731年 - C L
Guarneri 'del Gesù' cello 1731年 - B L
Bartolomeo Giuseppe Guarneri ( 1698-1744 )
Violoncello  1731,  ” Natalia Gutman ”

このガルネリが製作したチェロは  A ゾーンと B ゾーンの’傷’がとくに深くつけられています。

Domenico Montagnana Cello 1730年 - B L

それから 1982年にニューヨークで生まれたチェリスト、アリサ・ワイラースタイン( Alisa Weilerstein )さんが 2014年から使用しているチェロにも同じ特徴があります。

Domenico Montagnana Cello 1730年 - C MONO L
この楽器は Domenico Montagnana が 1730年に製作したとされています。そして この楽器ではA ゾーンとB ゾーンの傷が 確認できるとともに、C ゾーンの ‘深い傷’ も見ることができます。

Domenico Montagnana Cello 1730年 - A L
因みに C ゾーンの傷は、ヨーヨー・マさんが使用している Domenico Montagnana が 1733年頃に製作したとされるチェロにも ついています。

Domenico Montagnana Venezia ( Yo-Yo Ma ) 1733年頃 - A MONO LDomenico Montagnana Venezia ( Yo-Yo Ma ) 1733年頃 - A L

また C ゾーンの傷には このチェロのように ‘修復’として埋められていても、アーチの特徴などから 見分けるのはそれほど難しくない事例も多いようです。

Old Italian Cello c1680 - 1700 ( F 734-348-230-432 B 735-349-225-430 stop 403 ff 100 ) - A L
Old Italian Cello    1700年頃
( F 734-348-230-432,  B 735-349-225-430, stop 403 ff 100 )

これらの特徴的な’傷’が『 オールド・バイオリン 』の時代の弦楽器に認められることを 皆さんはどうお考えになるでしょうか。

私は 同時期に製作されたへり部分がオーバーハングしていない弦楽器に 答えをもとめました。

joachim-tielke-1641-1719-viola-da-gamba-1683%e5%b9%b4-hamburg-1-lJoachim Tielke ( 1641-1719 )  Viola da gamba  / Hamburg   1683年

joachim-tielke-1641-1719-viola-da-gamba-1683%e5%b9%b4-hamburg-2-lJoachim Tielke ( 1641-1719 )  Viola da gamba  / Hamburg   1683年

giovanni_dandrea_lira_da_braccio_1511_khm-2-lLira da braccio  by  Joannes Andreas ( Giovanni d’ Andrea) , Verona

giovanni_dandrea_lira_da_braccio_1511_khm-1-lLira da braccio  by  Joannes Andreas ( Giovanni d’ Andrea) , Verona

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私は下の写真のように これらは ‘節’としての ‘折れ軸’を調整した痕跡と考えています。

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ところで 私は チェロを製作するとき ‘座標’や ‘折れ軸’としてこれらの線分を 表板で 100本、裏板は 60本設定し利用しています。

言うまでもなく、これらは 私が「オールド・チェロ 」などの分析から導き出したものです。

Matteo Goffriller (1659–1742) Cello Venice 1705年 - 3 L

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ルーマニア生まれのチェリスト Mirel Iancovici さんが使用しているチェロもこんな感じです。

これらの軸は弦楽器にとって’節’の要素も兼ねる重要な条件だと 私は考えています。

そこでここから その効果を確認する実証実験についてお話ししたいと思います。

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皆さんは ヴィオール・オイル( Viol )をご存じでしょうか。ポリッシュオイルでは定番の ドイツ製の磨き油です。なお、現在の税込定価は2,160円となっています。

この製品がいつから輸入されているのか正確には分かりませんが、少なくとも私は 34年前から使用しています。

穏やかなポリッシュオイルで 成分的にも安定しているため、弦楽器工房はもとより 多くの演奏家にも愛用されています。

viol-a-lこの ヴィオール・オイルの一般的な使用法は 布に少量をしみこませ ニス部に塗布して、その後に別の柔らかい布でふき取るように磨きあげるそうです。

残念ながら 効力が続くのは  2~3日ですが、ヴィオール・オイルで丁寧に楽器全体をみがくと、明らかに音色が良くなる場合が多いようです。

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さて本題ですが、私は 皆さんに この ヴィオール・オイル( Viol )と綿棒を使って ‘折れ軸’の検証実験をすることをお奨めいたします。
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viol-p-l実験は簡単です。綿棒を使って 私が 【 No. 2 model 】と呼んでいる図の 14本の赤線部に ヴィオール・オイル( Viol )を線状に塗布します。
viol-c-l上写真のように 紙定規を使えば なおさら良いですが、私の経験では フリーハンドでも十分効果があると思います。

下図のように 裏板は 2本ですが、表板は 7本ですのでよろしくお願いいたします。
viol-q-l私の経験では 綿棒を用い 下の写真に指定したように 白字の番号順で、14本の軸にヴィオール・オイルを塗布するのに必要な時間は 約1~2分位だと思います。

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私はフリーハンドで塗っていますが、下のように 紙定規で目測をたててから ガイドとして線状に塗布する作業のほうがやり易いとの意見もありました。

viol-d-l

viol-o-l私の研究では この【 No. 2 model 】は ヴァイオリンなどの2番線を中心に音色を改善する効果がみとめられました。

また、チェロや ビオラなどの場合は 下にあげた【 No. 3 model 】で試すことを私はお勧めします。
viol-r-l【 No. 3 model 】は 裏板の線分AB の角度がすこし違います。こちらのパターンは チェロなどの3番線、そして4番線の改善が見込めるのではないかと 私は思っています。

viol-n-l

この実験では ヴィオール・オイルを塗布していない状態で音階を弾いたあとで、 手早く塗布して すぐに試奏し その後柔かい布でふき取ってから もう一度試奏する。

これを 2セットほど繰り返せば実証実験としては十分ではないかと思います。なお、ヴィオール・オイルは ほとんどのヴァイオリンやチェロのニスに適合しますが 念のために 実験を終了する際には柔かい布でふき取るように磨くのを忘れないでください。

また、この実験は フルサイズ弦楽器だけでなく 分数サイズのヴァイオリンでも コントラバスでも効果が確認できると思います。

なお新作イタリーのようなアーチがフラットな弦楽器だと より劇的な変化が楽しめるのではないでしょうか。

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CONTRABASS - B
これらの軸は響胴に一定のバランスを生みます。

それは例えればバランスが取れずに歪みが溜まり振動板として機能出来なくなったコントラバスの表板に、下写真のように バスバーの形状を工夫して線分 abと 線分cdの曲がりを誘導し 表板に振動板としての機能を回復させるのに似ているのではないでしょうか。

CONTRABASS - F
冒頭で述べましたように 私は 18世紀末までの弦楽器製作者は 響胴の ‘節’と’腹’の原理をほぼ正確に把握し利用していたと考えています。

そしてその本質的な証明は ヴィオール・オイルを塗布する実験方法で、ある程度は可能と考えています。

これは 先程例示した【 No. 2 model 】と【 No. 3 model 】を選択する過程でわかったのですが、ヴァイオリンやビオラ、チェロを演奏できる状態で準備して、塗布していない状態で音階を弾いたあとで 下の表板図から線分を一本だけ選びヴィオール・オイルを塗布したあとで再び音階を鳴らしてみてください。

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ヴィオール・オイルによって’軸線’と’響き’の関係を一本づつ確認するこの実験には 多少の時間と根気が必要になりますが、その結果は 皆さんに 弦楽器音響システムの意味を十分教えてくれると私は信じます。

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この投稿は以上といたします。
ありがとうございました。

2016-10-12    Joseph Naomi Yokota