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● モダン弓の製作方法が “簡略化”された時期と、その後について
1. 響胴の共鳴振動について
● 目視できる共鳴現象
弦楽器の特質を考えるときには、まずは 弦が “緩む” ことで波のような “運動”をし、それが進行波、反射波となり振動するということが 基礎条件として思い浮かびます。
私は、それと同じく 響胴の共鳴部 ( 変換点 )が “緩む”ことで 響きが生じている。という事実が大切だと考えます。
なぜなら、共鳴音( レゾナンス )こそが ヴァイオリンや チェロにおいての”歌声”そのものであると思っているからです。
ヴァイオリンやチェロの響きは、弦からではなく 響胴内部の共鳴から生じています。それを 振動系として表現すれば、振動する演奏弦、音叉は駆動部で、響胴、共鳴箱は従動部として構成されています。
現在 製作されているヴァイオリンなどは このシステム解釈から混乱しているようです。
ヴァイオリン製作研究の着手時に、私は そこから整理して、最終的に 弦楽器は響胴のバランスが「剛体のつり合い」でいう”安定なつり合い”となれば良いことを理解しました。
なお、ここでいう高性能弦楽器( High performance stringed instruments )とは ピリオド( period )状態でなく、ヴァイオリンが誕生した1550年頃から1860年頃まで続けられた改良を反映したものを指します。
つまり、レゾナンスにキャリング力があり 演奏者のインスピレーションを助ける素早いレスポンス性能も兼ね備えた弦楽器のことです。
それでは まず 振動を目視できるチェロの表板で、共鳴部のひとつ( +位置 )が “緩む”とともに振動していることを確認してください。
参考とするのは 下のリンク動画で『 0:41』の位置から『 1:24 』までの部分です。( なお 残念ながら先日から画質が下げられました。Facebook動画下部右メニューの”設定”で画質を360P→720Pに変更すると見分けやすいと思います。)
www.facebook.com/CellistAmitPeled/videos/498893131566443
P2720547
私は 表板のこのような振動現象が、共鳴音を生み出していると考えています。
また、このような表板の”緩み”は、響胴部がネック部を介して対をなすヘッド部と連動して それぞれの部材が”ねじり”つまり回転運動をおこすことによって誘導されていると理解してます。
響胴は箱状のものですから、ルービックキューブで言えば X軸、Y軸、Z軸により対とされる”それぞれの面にある中央ブロック”のふるまいと同じように、響胴でも 対をなす6面の回転軸が空間にある中心位置を回転運動の”みなし中心”として”ねじり”を反復しているといったイメージです。
これは、チェロやヴァイオリンのニスに入ったひび割れで確認できます。因みに‥ 私がこのように考えるようになったのは 2003年9月29日の16:45頃からとなります。
それは、長女が使っていた 1/2サイズのヴァイオリンを 7歳の次女が使いたいと言い張ったので、その準備として 弦などの交換を検討するために 工房の入り口に立ってこのヴァイオリンをチェックしている時のことでした。
風もなく空が晴れわたったおだやかな夕方で 私が立っている工房の入り口には まだ日差しがさしこんでいました。
そのとき、ニスのひび割れが キラッ ! と蜘蛛の糸のように光ったのが目にとまりました。はじめは『 なるほど、分数ヴァイオリンでもフルサイズとおなじ入り方をするんだ。』と思いながら観察していたのですが、私が記憶していた他の事例と驚くほど合致していることが分かりました。
私はこのとき 戸惑いながらも楽器の角度を変えたりしながら観察して、頭に浮かんだ 響胴の振動モードに誤りがないかを検討してみました。
その最中のことです。 私が表板側と側板に気をとられてよくみていなかった 裏板がレイヤー映像のように頭のなかに浮かんだのです。『 表板がこう振動して側板はブロックによって こう動き‥ということは裏板のここら辺りにこういう形状のニスひびが‥』と 独り言をいいながら 裏板を見るために ヴァイオリンをひっくり返しました。
いまでも その瞬間をときどき思い出します。
とにかく感動しました。 私が予測したとおりの形状の小さなニスひび割れが 裏板の推定した位置に 入っていたのです。
下の図は その1/2ヴァイオリンのニスひび( 表板側 )を 2005年になって 私のノートに記録したものです。
この時、私がはじめに気がついたのは下幅広部に真横に入っているニスひびが テールピースの下で繋がっておらず 魚のウロコ状のニスひびとなっている事でした。
それで私は このニスひび a. は、エンドブロックの端付近( 高音側 )の点から ゆれがはじまる”ねじり”によるものと判断したのです。その証拠に反対側のネックブロック部をみると左回転のねじりによるニスひびがはいっています。
これらのニスに刻まれたひび割れは、弦楽器の”ねじり”に関する 決定的な状況証拠といえるのではないでしょうか。
“Varnish crack” Cello, 1970年製 / 2006年撮影
それから、他にチェロの実例をあげたいと思います。
私はこの”X状”のニスひび割れは響胴が左右にねじりを繰り返しながら揺れたことで生じ、その 回転中心点には X軸が位置していると思っています。
また、ネック接続部の側面だけでなく、C字部コーナー側面にも同じような”X状”のニスひび割れパターンが確認できたりします。これは、Z軸と想定できます。
“Varnish crack” Cello, 1970年製 / 2006年撮影
このように”X状”のニスひび割れから、響胴が”ねじり”を反復しながら揺れたことと、対をなす面の中央付近に”ねじりモーメントの軸”があると考え、6面が相互に関係するイメージとして整理すると 響胴における”緩み”のメカニズムは理解できると思います。
● “回頭機構 “により共鳴音を増加させる検証実験
ところで、このような響胴の本当の響き”共鳴音(レゾナンス)”は 簡単な実験で 増加した状態が体験できます。Alessandro Bonvicino( ca. 1498–1554 ) Brescian 1530年頃
Alessandro Bonvicino detto il Moretto da Brescia ( c.1498-1554 )1530年頃
アレッサンドロ・ボンビチーノは ヴァイオリンという楽器が誕生した時期に ブレシアとヴェネチアで活躍した画家で、すばらしく緻密な油画などを残しました。
この絵画にある楽器もそうですが、この時期に製作されたリュートや、ヴィオール属、ヴァイオリン属の弦楽器の中には、下のアシュモリアン博物館に展示されている古楽器や、ジロラモ・アマティの リラ・ダ・ブラッチョのように”回頭機構 “を持った弦楽器が遺されています。
そこで、私は 2001年に 次のような検証実験をおこないました。まず、この実験に使用するために A. ボルティーニ氏が 1985年に製作したヴァイオリンと、S. アジナリ氏が 2000年に製作したヴァイオリンを用意しました。
Alessandro Voltini( born in Cremona, 1957 ) violin, 1985年
さて、実験は簡単です。私たちが日常的に使用している輪ゴムを 1回の実験で 1本使用しますので 数本準備します。そして、まずなにもしていない状態で鳴らします。それから写真にあるように輪ゴムをかけて同じように試奏してみます。
私はこれまでこの手法を頻繁に試して その結果を知っていますので‥ 皆さんが ご自分のヴァイオリンで試した場合でも響きの差は 驚愕するくらいに違うと思います。
この時 なるべく比較し易いように私は輪ゴムをかけた状態で 1分くらい鳴らしたら、それをハサミなどで切ってはずして すぐにまた試奏をして違いを確認しています。”無し→有り→無し”で1回とし 、これを2回くり返し 響きの変化を聴き分ければ 実験としては充分だと思います。
それから、アジナリ氏が製作したヴァイオリンに取り付けられたペグは 輪ゴムが引っ掛かりにくかったので、市販されているセロテープで止めました。
この実験は輪ゴムの張力( 約0.36kg )で ヘッドの回転運動などのゆれや、響胴の”ねじり”を増やしたことによる響きの変化を確認するものです。念のために申し上げれば、もしペーター・インフィールドの4本セットを張っていたヴァイオリンで、E線を コレルリ・アリアンス・ヴィヴァーチェに変更すると 計算上 0.5kg ほど 張力が増えます。
これとは逆に張力が約 8.3kg のペーター・インフィールドE線を張力が 7.2kg 程とされているドミナントのE線にすれば約 1.1kg 減ることになります。
このような状況でヴァイオリンは使用されていて、それでも 強度上の大きな問題は起っていないことと、輪ゴムの張力が弦4本の合計張力の2%以下であることから、この実験は 特に問題はおきないと私は判断しています。
ともあれ、このような実験でも、響きに劇的な違いがあり その考察によって”共鳴音(レゾナンス)”に関する 多くの気づきが得られると思います。
● 太鼓などにみられる共鳴音を豊かにする工夫
“小鼓”は、2枚の馬革と、桜の木をくぬいた胴を、調緒(しらべお)と呼ばれる麻紐で緩く組んだ楽器です。
左手で持って右肩の上に構え、右手で打ちます。
“大鼓”に比べて音は柔らかく、調緒を緩めたり締めたりすることで数種類の音色を打ち分けるほか、調子紙(ちょうしがみ)と呼ばれる和紙の小片を裏革に付けて振動をととのえ、革に息をかけて湿気を保つなどして、音色を調節します。”大鼓”とともに、ひとつの曲が進行するのを司る要の役割を演じます。
ところで、”ねじり”などによって響胴を変形させ、共鳴音を豊かにするという仕組みに着目すると、世界各地でその知見があったことを理解することができ、興味深く感じられます。
たとえば、インドが起源とされ、中国を経て雅楽の楽器として日本に伝わり、室町時代( 1336-1573年)に大成した「能楽」に用いられる”小鼓(こつづみ)”があります。
外見上の静かな佇まいと 打って変わって内側は振動を誘導するための彫り込みなどが見られ、ゆたかな響きを追い求めた製作者の息遣いが伝わります。
材木となる”桜”は”旋回木理”といいますが、幹が捻じれていることで知られています。まあ、樹木の幹が捻れているのは”ソメイヨシノ”に限らず、程度の差はあるとはいえ多くの植物種に見られる現象ではあります。しかし響胴材として考えれば、その”ねじり”特性が音色にはたす役割は大きいと思われます。
そして このような彫り込み加工は、ギニア、セネガル、マリ、コートジボワールなどの西アフリカ諸国で かなり昔から受け継がれている、”ジャンベ”と呼ばれる太鼓の、内部に精巧に彫られた螺旋模様とも共通しています。
“ジャンベ”は鼓面の直径が30~35 cm程度、響胴の高さが55~65cm位で下端が開口部となっていて、内部を下からのぞくと 内壁に螺旋状に彫り込みを見ることができます。
響胴には”Djalla”と呼ばれるセンダン科アフリカマホガニー属の木、”Dugura”と呼ばれるマメ科コルディラ属の木、”Gueni”と呼ばれるマメ科のアフリカローズウッド、”Gele”と呼ばれるマメ科ネムノキ亜科の木、”Iroko”と呼ばれるクワ科ミリキア属の高木ミリキア・エクスケルサなどの木が用いられています。これらは、いずれも木理のクセが強い樹種だそうです。
片喰紋蒔絵太鼓胴( かたばみもんまきえたいこどう ) 元禄5年(1692年) / 直径266mm / 高さ145mm / 重さ807g
能楽で用いる打楽器である”太鼓”は、胴、革、調べ緒からなり、木製の台に掛けて2本の撥(ばち)で演奏します。胴は直径26cm程、高さ15cm程で 欅(けやき)や 栴檀(せんだん)で作られ、革は牛革を用い、胴と革は 調べ緒で連結され、きつく締め上げられています。
この”太鼓”の内壁にも 個々で程度の差はありますが、螺旋状の彫り込みを見ることができます。
また、日本の”琴”や”三味線”の内側に施される彫り込みも同じ目的で彫られています。”琴”は桐材を加工して製作し、全長は約182cmで幅が約25cm、重さは約5.5kgぐらいです。それから、”三味線”の響胴は 紅木(こうき)、紫檀(シタン)、花梨(かりん)などで製作されています。
このように楽器を観察すると、響胴内部に”ねじり”を誘導したり振動を複雑化させる工夫を見ることができますが、”機能”として 厚さの差を設定し”ねじり”や”共鳴”として反映させている鍵盤楽器の”響板”は より明快だと思います。
“Harpsichord” Soundboard thickness contours” for the 1640b Ar double-manual Harpsichord ( 独:Cembalo / 仏:Clavecin ).
その例として、ベルギー、アントウェルペンで1579年設立のハープシコード工房で有名なルッカース工房の、3代目 アンドレアス( Andreas Ruckers 1579-1645 )が1640年頃に製作したハープシコード響板の厚さ配置図をみてください。
鍵盤楽器の響板も複雑な”ねじり”変形をしてゆるみながら共鳴音をさせますが、そのなかの4分割振動モードを参照のためにあげました。
ルネサンス期の鍵盤楽器を評して”弦楽器的”ととらえる考え方がありますが、Andreas Ruckers ( 1579-1645 )が 1640年頃に製作したハープシコード響板は、まさにそれが具現化されていると感じられます。
この視点で、1733年頃製作されたストラディバリウス・ヴァイオリンと 1736年頃のそれを比較すると、同一の製作者がであっても、後者が”ねじり”を大胆に取り込む改変を試みていることが判ります。
Stradivari violin “Thickness ca.1733 ( Soundpost Position – Right side )
Stradivari violin ” Thickness ca.1736 ( Soundpost Position – Right side )
Andrea Amati ( ca.1505–1577 ) Cello, 1572年頃
また 木伏(きぶせ)といいますが、 このアマティ・チェロのように 2枚接ぎ裏板でありながら、片側をひっくり返して接合することで 樹木の木理により”ねじり”が強化されたチェロや、ヴァイオリンの存在は重要です。
Nicola Albani ( Worked at Mantua and Milan 1753-1776 ) Cello, Milan 1770年頃
そして、板目の木取位置が離れていることで、左右のキャラクター差を強化したうえに”幅はぎ”加工をして、より複雑化されたチェロ裏板もあります。
Nicolò Amati ( 1596–1684 ) Cello, “Herbert” 1677年
このような 2枚接ぎの裏板や表板で左右が異なる事例研究は、下記のガルネリ・ヴァイオリン25台で表板左右の”年輪数”と”年輪パターンによる年代推定”を検証したものが知られています。
年輪本数の左右差は63本の 1737年”Stern”が最大で 高音側年輪161本 : 低音側98本とされ、次が43本の 1741年”Kochanski” 高音側77本 : 低音側120本など、ガルネリが2枚接ぎ表板を製作するのに あえて左右違う材木で組み合わせていたという状況証拠となっています。
Andrea Amati ( ca.1505–1577 ) Cello, 1572年頃
最後に このアマティ・チェロと同じような”木伏”で製作された、ストラディバリウス・チェロ “de Barjansky” 1690年頃のCT画像で、反転された木理のようすを観察してみてください。
Antonio Stradivari ( ca.1644-1737 ) Violoncello, “de Barjansky” 1690年頃
● ヴァイオリン奏者やチェロ奏者が忘れたこと
ところで そもそも話ですが… 現在、クラシック音楽で使用される楽器の多くが1830年~1860年頃に発明されたり、改変されています。
■ Nicolò Paganini ( 1782-1840 ) 1820年 “24 Capricci” 出版
1831年4月17日( 日曜日) “パリ・デビュー” 1828 Vienna, 1831 London
■ 1830年 ベルリオーズ ( 1803-1869 )《幻想交響曲》が初演。
■ 1831年~1847年 ベーム式フルートが発明され普及が始まります。 Theobald Böhm ( 1794-1881 )
■ 1835年 メンデルスゾーン ( 1809-1847 )が、ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団の指揮者に就任します。
Friedrich Dotzauer ( 1783-1860 ) “113 Studien” Klingenberg 1837年
■ 1838年 Dominique Peccatte ( 1810-1874 ) 工房設立 ヴァイオリン弓やチェロ弓を”モダン型”に差し替える流れが始まりました。
■ 1814年~1850年 バルブの発明により、ナチュラル・ホルンが次第にバルブ付きのフレンチ・ホルンに置き換えられました。
■ 1843年 ベーム式クラリネットが開発されました。Hyacinthe E. Klosé ( Louis Auguste Buffet / jeune (
■ 1844年 ベルリオーズ ( 1803-1869 ) 「管弦楽法」出版
【 1855年 補訂版 】
■ 1855年 オーボエ / コンセルヴァトワール式 ( Conservatoire system )が普及しました。 コンセルヴァトワール式とは、トリエベール ( Frédéric Triebert 1813-1878 )が開発し、現在一般的となったオーボエのキーシステムです。
“Oboe vs. Flute” 時代の流れによりオーボエもフルートなどとおなじようにキーシステムを取り入れました。その過程でフルートは曖昧な表情をある程度捨て去ることで成功を得ました。しかし、オーボエは繊細な深さのある表現に最後までこだわりました。機動性を犠牲にしてでも…
オーボエなどの”ダブルリード”菅楽器では、その特質が音色を左右することもあり、多くの奏者が葦材そのものか、半完成品のリードを入手した上でプラークと呼ばれる船型の下敷きをリードの間に挟み、自分に合ったリードに削った上で使用しています。
また、シングルリードと異なりダブルリードは演奏の前に水につけてから演奏しますので、奏者は水入れを携帯し 演奏中は少しの休符であればそのままで、多少の乾きは舌で舐めて湿らせ、それ以上に乾いていれば水入れに再度浸してから使用します。
そのリードはケーン( 葦 )という天然素材でできており、使用すると疲労していきますので寿命は短く、一般的には 良い状態で使えるのは約30~40時間程と言われています。また、個体差はありますが 使用できる期間はだいたい2~4週間ほどだそうです。
張りのある状態が完全になくなった時にリードが寿命を迎えたと判断されます。新しいリードは張りが強く、馴染ませないと吹きにくいため、ある程度硬さがとれるように調整します。
ですから 長持ちさせるために、なるべく1本だけ使用し続けるのではなく、3~5本をローテーションして使用するなどしながら演奏されています。
■ 1853年 ベルリンに ベヒシュタイン・ピアノ 社 “C. Bechstein Pianofortefabrik” が創業。
■ 1853年 ニューヨークに “Steinway & Sons”社が創業。
■ 1830年~1850年 英国において 1830年に開設されたマンチェスター・リヴァプール鉄道にはじまる鉄道開設ブームがおこり、1850年までに営業開始した旅客鉄道のイギリス国内総延長は およそ9656km に達しました。
■ 1851年5月1日~10月15日 第1回万国博覧会であるロンドン万国博覧会がハイド・パークで開催されました。
■ 1852年 大統領であったルイ・ナポレオンは 前年にクーデターを起こし、独裁体制である「第二帝政」を確立し、1852年に皇帝ナポレオン三世( Napoléon III 1808-1873 )として即位します。
■ 1848年~1871年 サルデーニャ王国が主導してミラノ、ヴェネツィアに反乱が起こり、最終段階の1871年に教皇領であったローマを占領しサルデーニャ国王 ヴィットーリオ・エマヌエーレ2世( 1820-1878 )が統一イタリアの国王( 在位1861-1878 )として正式にローマを首都として定め、近代国家であるイタリア王国が成立しました。
Christian Heinrich Hohmann ( 1811-1861 ) “Praktische Violinschule” 1850年以前
Heinrich Ernst Kayser ( 1815-1888 ) “36 Studies Op.20”, 1848年
Jakob Dont ( 1815-1888 ), Vienna / “24 Etudes and Caprices” Vienna, 1849年頃
このように響胴に共鳴現象を誘導する工夫は、西欧圏で誕生し普及した ヴァイオリン属の響胴にも響板の立体的形状や板の厚さ、2つのF字孔の関係による”ねじり”誘導、固定式柱である6個のブロック設定、移動式柱である1本の魂柱( soundpost )、そして人為的なナイフ痕や不連続凹凸、そして焼いた治具で引っ掻くように入れられた工具痕跡などとして沢山見ることができます。
オールド・・ヴァイオリン表板F字孔内側Nicola Gagliano ( 1675-1763 ) Violin, Napoli 1737年
Nicola Gagliano ( 1675-1763 ) Violin, Napoli 1737年
Antonio Stradivari ( ca.1644-1737 ) Violoncello,”Pawle” Block 1731年
Giovanni Battista Guadagnini ( 1711-1786 ) Violin,”Nebel” Turin, 1785年
Giovanni Battista Guadagnini ( 1711-1786 ) Violin,” L.A.T” Turin, 1784年Matteo Goffriller( 1659-1742 ) Violin 1702年右側F字孔の外側中央にスジ状の”キズ”が見えますが、これも製作者本人が このヴァイオリンを作った時に入れたものです。
この写真でわかるように、”キズ”に見えたスジは傷が最も付きにくい窪みの底にあたる“谷”に入っています。 当然ですが偶発的なものでないと理解していただけると思います。
Johann Adam Popel( Ende17.-Anfag 18.) Viola、1664年頃
このビオラの右側F字孔に 2本のスジ状キズが入っているのも M.Goffrillerと 同じ考えによるものと思われます。このように、スジ状のキズを入れてある弦楽器は、音響的条件を推測するのに重要です。
Carlo Antonio Testore( 1687-1765 ) Violin, 1740年頃このヴァイオリンの右側F字孔の”スジ状のキズ”も見てください。そして下に角度を変えて撮影した写真をあげました。
これにより”スジ状キズ”は”谷線”として刻まれていることが確認できます。このようなキズが偶発的にはいることはほとんどありません。● 音色を整え響きを改善するやり方【4:01】~【6:30】鼓は 革と胴を固定する麻紐である”調べ( しらべ )”のしめ具合で響きの調整をしますが、微調整は “調子紙”、唾( つば )、息などで工夫し音色を生みだします。
皆さんは ヴィオール・オイル( Viol )をご存じでしょうか。ポリッシュオイルでは定番の ドイツ製の磨き油です。なお、現在の税込定価は 2,160円となっています。穏やかなポリッシュオイルで 成分的にも安定しているため、弦楽器工房はもとより 多くの演奏家にも愛用されています。この ヴィオール・オイル( Viol )の一般的な使用法は 柔らかい布に少量をしみこませ ニス部に塗布して、その後に別の柔らかい布でふき取るように磨きこみます。残念ながら 効力が続くのは 2~3日ですが、ヴィオール・オイルで丁寧に楽器全体をみがくと、明らかに音色が良くなる場合が多いようです。さて本題ですが、私は 皆さんに この ヴィオール・オイル( Viol )を綿棒で下のように塗ることで響きが改善することを確認していただきたいと思います。
実験は簡単です。綿棒を使って 私が 【 No. 2 model 】と呼んでいる図の 14本の赤線部に ヴィオール・オイルを線状に塗布します。
上写真のように 紙定規を使えば なおさら良いですが、私の経験では フリーハンドでも十分効果があると思います。
煩雑に見えるかもしれませんが 下の写真の白字の番号順で、ヴィオール・オイルを塗布するのに必要な時間は 約1~2分位だと思います。
また チェロやビオラでは この【 No. 3 model 】の方がバランスがよい場合も多いようです。
皆さんに この塗り方の劇的な効果を楽しんでいただければ幸いだと思います。2016-10-19 Joseph Naomi Yokota
振動膜を”しなやかに支える”という考え方
小鼓の鉄輪(かなわ) 【1:30】~【2:33】鉄輪(かなわ)と 仔馬の革の”しなやかな”関係について● 三番三 ( Sanbaso )上に添付したYoutube動画で、大倉源次郎さんが”鉄輪(かなわ)”のしなやかさが 小鼓の音色にとって重要であることを お話しされていますが、弦楽器の側板と表板や、裏板との関係も共通する要素があります。特に、コーナー端の角度は 重要です。
ひとつ残念なのは、響胴には 2つのF字孔の機能を高めるために 4つのコーナーブロックや縁部による複雑な剛性が設定されていますので、システムとして正確に捉えようとすると難易度が高くなるということです。
しかし、この 4つのコーナーブロックによる工夫こそが 古の弦楽器製作者の音響的構想力を暗示する”証”と考えて、詳細に観察しましょう。
少なくとも 私は、このコーナー部の特徴のうちで、 4つのコーナー部トップにあたる”側線”が 傾斜して組み合わせてあることを、“音響的な充実度が高い弦楽器”として識別するための判断基準としたことで随分助けられました。
因みに 私が知る限り、コーナー部トップにあたる”側線”が 基準面に対して”4つ全てが直角”という事例は ありませんでした。ですから、弦楽器を観察する場合は すべての響胴コーナー部で側線がホリゾンタル面に対して垂直に作られているものは最近のものか修復者によるか、贋作である可能性を念頭におきます。
それから あまり知られていない事ですが、前出の”基準面に対して直角”という設定は、赤線で示した上下コーナーブロックの括れ部ではよくあります。ここでしたら 4つ全てが直角であっても、ネックからコーナーまでの側板を傾斜させることで、“ねじり”設定としてバランスが成り立つからです。
Francesco Linarol ( ca.1502–1567 ) “Viola da gamba ( viol )” 880mm-270mm-130mm ca.1515~1520 vor 1601
Wien Sammlung alter Musikinstrumente
ところで、この コーナー部トップにあたる”側線”が傾斜しているヴァイオリンの代表格は、高音側ロワー・コーナーで 4.2度も側線を傾けて製作された Stradivari( ca.1644-1737 ) “Hamma” 1717年と、”Guarneri del Gesù”( 1698-1744 ) “Enescu-Cathedral” 1725年頃であると 私は思っています。下の比較図で考えてみてください。Violin corner lateral line angle
( 上記の角度数値は、画像解析による参考値です。)
Antonio Stradivari ( ca.1644-1737 ) Violin, ” Wurlitzer Collection” No.1 ( #7502 ) 1681年
Antonio Stradivari ( ca.1644-1737 ) Violin, “Hamma” 1717年
Francesco Goffriller ( 1692–1750 ) Violin, 1719年頃
“Guarneri del Gesù” Bartolomeo Giuseppe Guarneri ( 1698-1744 ) Violin, “Enescu – Cathedral” 1725年頃Nicola Gagliano ( ca.1710-1787 ) Violin, Napoli 1737年
“Guarneri del Gesù” Bartolomeo Giuseppe Guarneri ( 1698-1744 ) Violin, “Carrodus” 1743年ここで 残念なことは、写真を撮影しその画像を解析するのは意味があるのですが、ヴァイオリンの側板幅( あるいは高さ)は 30mm程しかないために”側線”角度は、CTスキャナーなどの高価な計測機を用いる以外に、正確に測定することが ほぼ不可能だということでした。
ところが時が経ち オールド・チェロを観察するうちに『 この両者は共通の考えに基づいて製作されており、側板幅が120mm程あるチェロの場合は測定誤差がすくない。』と思いなおし 再検証をしてみました。
Giovanni Battista Genova ( worked ca.1740-ca.1770 )
Cello, Turin 1770年頃Giovanni Paolo Maggini ( 1580- ca.1633 ) Violin, Brescia 1620年頃
Giuseppe Guarneri “Filius Andreae” ( 1666- ca.1740 ) Violin, Cremona 1703年
Antonio Stradivari ( ca.1644-1737 ) Violin, “Viotti” 1704年
Giuseppe Guarneri “Filius Andreae” ( 1666- ca.1740 ) Violin, Cremona 1717年頃
Camillo Camilli ( ca.1704-1754 ) Violin, Mantova 1735年頃
Giovanni Baptista Guadagnini ( 1711–1786 ) Violin,
“Ex Sinzheimer” Turin 1773年頃
このようにして得た結論が『オールド弦楽器では 4本ある側板のコーナー部トップの”側線”角度の組み合わせで F字孔の振動を強め、それとともに響胴のねじりを誘導している。』というものでした。コーナー部側線角度の組み合わせは いくつも類型がありますが、私は ヴァイオリンでもよく見られる AU側線と 対角の CL側線を”対”として傾けてあるタイプが、響胴のねじりが素早そうですから 気に入っています。
Antonio Stradivari ( ca.1644-1737 ) Cello ( Length of back 765mm – 369 – 265 – 473 ) , “Harrell – Du Pre – Guttmann” 1673年
Antonio Stradivari ( ca.1644-1737 ) Cello, Cremona 1667年
Antonio Stradivari ( ca.1644-1737 ) Cello, Cremona 1724年
“Old Cello” ( F. 734-348-230-432 B. 735-349-225-430 / Stop 403mm / F-F b.100mm ) 1680~1700年頃
Giovanni Grancino ( 1637–1709 ) Cello, Milan 1701 年
Giovanni Grancino ( 1637–1709 ) Cello, Milan 1690 年
Gioffredo Cappa ( 1644-1717 )
Cello, “Jean-Guihen Queyras” 1696年頃Matteo Goffriller (1659–1742)
Cello, “Daniel Muller – Schott” 1727年頃August 28, 2024 14:38 / Cello side 448g
Antonio Stradivari ( ca.1644-1737 ) Violin, “Soil” 1714年
Neck Original Stradivarius 1725年 / “Brancaccio – Carl Flesch”
“Antonio de Torres” Guitar, 1882年
“Violin” Markneukirchen, 1920年頃.
A fiddle used by Jerry Rivers (1928-1996), around 1950.
“ with Hank Williams( 1923-1953 )! ”“第 187 回 アメリカ音響学会”
2024年11月18-22日 / 音楽音響 : 論文 1aMU1 より引用Quoted from 187th Meeting of the Acoustical Society of America
18–22 November 2024 / Musical Acoustics: Paper 1aMU1
Proc. Mtgs. Acoust. 55, 035001 (2024)Visualization of three-dimensional acoustic radiation of Stradivari and Guarneri violins
4. Acoustic radiation simulation results for “Willmotte” Stradivari.5. Acoustic radiation simulation results for “Plowden” Guarneri.
“Willmotte” Stradivari 273.44hz
“Plowden” Guarneri 269.16hzReference pitch 442hz
- 65.7hz (C) Frequency of cello string 4
98.4hz (G) 1st string of a 4-string contrabass
131.4hz (c) Frequency of viola string 4
196.9hz (g) Frequency of violin string 4
221.0hz (a) Frequency of cello string 1
442.0hz (a1) Frequency of viola string 1
884.0hz (a2) Frequency of violin string 1
周波数とは、1秒間に出力されるサイクルのことですね。
人間の可聴音域は 20hz~20,000hz( 20khz )とされており、ヴァイオリンは楽譜上の音程としてハーモニクス( 倍音 )で 4,435hzあたりまでが演奏音程とされているようですが 実際にはそれ以上の高音も生じさせることができます。
Giovanni Battista Guadagnini ( 1711-1786 ) Violin, “L.A.T.” Turin 1784年
Giovanni Battista Guadagnini ( 1711-1786 ) Violin, “Nebel” Turin 1785年“Willmotte” Stradivari 516.22hz“Plowden” Guarneri 512.03hz
“Willmotte” Stradivari 516.22hz
“Willmotte” Stradivari 1853.3hz
“Willmotte” Stradivari 2374.4hz
“Plowden” Guarneri 512.03hz
“Plowden” Guarneri 1945.7hz
“Plowden” Guarneri 2334.0hz
“Willmotte” Stradivari 1853.3hz“Plowden” Guarneri 1945.7hz
“Willmotte” Stradivari 2374.4hz“Plowden” Guarneri 2334.0hz
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▶ 2. 弦楽器の”ねじり”設定● 弦楽器の共鳴音( レゾナンス )が増す基礎条件とは