「弦楽器の鑑定について」カテゴリーアーカイブ

ヴァイオリンの誕生につながった重要な技術 について

Mandora 1420年頃 L 360.0 W 96.0 D 80.0( 83.0 ) Wt 255 g - L L

Mandora 1420年頃 L 360.0 W 96.0 D 80.0( 83.0 ) Wt 255 g - J LMandora 1420年頃 L 360.0 W 96.0 D 80.0( 83.0 ) Wt 255 g - F L

Mandora 1420年頃 L 360.0 W 96.0 D 80.0( 83.0 ) Wt 255 g - K L

 

 

 

 

私は ヴァイオリンなどの コーナー部の非対象性‥  特に A コーナーと B コーナーの剛性差を 音響システムと考えています。

私の考えでは ヴァイオリンの響胴はF字孔端が弦の直接振動により内部の空気に疎密波を生じさせ( 一次振動 )、それがヴァイオリンの “駆動系”により表板の波源部にうまれた「 ゆるみ 」を共鳴振動させる( 二次振動 )仕掛けとなっていると考えています。

コーナー部の剛性差について単純モデルとして考えると 静止状態では 四角形 ABCD の重心が点 G にあるととらえます。それが 響胴のねじりによって 点 A 部が他の剛性に負け、それにより 三角形 ABD が一時的に機能しなくなり 相対的に剛性を保った 三角形 BCD の重心点 H に重心が移動するというイメージとなります。

因みに、コーナー部の剛性差については表板の設定と裏板のそれが違っていることも留意すべきだと考えます。

私は 裏板側 A コーナー部に剛性をさげる工夫がしてある場合には 表板のコーナー部では 裏板 B コーナー部にあたる 表板 Bass side – Lower corner に同じような工夫がしてある可能性が高いと思います。

左図では 左側角が振動の起点となり奥の角がリレーションすることで「  ゆるみ 」が生まれます。また右図は対称型で 手前の角がリレーションします。

私は 裏板の初動として ご説明した ねじりが 確実にすばやく起こるように工夫することで『 オールド・バイオリン 』などの弦楽器は すばやい音の立ち上がり( レスポンス )を確保していると考えています。これには “一定の剛性比”をふくむ 非対称性が重要な条件であると言えるのではないでしょうか。

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“バイオリンの秘密 ” を生んだ 複雑な音響メカニズム

これは 中央下部に黎明期のヴァイオリンが描かれている カラヴァッジオ作の油彩画『 リュートを弾く若者 』です。現代では ヴァイオリンという楽器の初期の状態は こういった絵画などによる検証が重要となりました。

カラヴァッジオ リュート奏者 ( 1595年頃 ) - 1 L
Michelangelo Merisi da Caravaggio  1571-1610
” Suonatore di liuto”  1590年頃    エルミタージュ美術館

 

私は この絵画に描かれた ヴァイオリンのネックと指板の設定、ネック角度と駒の低さなどは、当然ですが響胴の規格に調和するように選ばれたと推測出来ますので 音響システムとして量的にとらえることを助けてくれると私は思っています。

さてバロック・ヴァイオリンではプレーンガット弦を用い、多くの場合A線を415Hz(バロック・ピッチ)あるいは392Hz(ベルサイユ・ピッチ)に調弦する。

さて‥ 私は ここまで ヴァイオリンを見分けるために、コーナー部分の左右の非対象性‥  特に A コーナーと B コーナーの面積差異に注意しながら観察することをお勧めしました。

ここはストラディヴァリが使用したと考えられている F字孔位置を設定するテンプレートでも重要な基準線として書き込まれています。

Antonio Stradivari ( c1644-1737 ) F - HOLE placement template G violin ( MS No 117 ) - 1 Lまた、このテンプレートにより 『 オールド・バイオリン 』における響胴の基本設定が ヴァイオリンの表板や裏板の輪郭ではなく側板のアウトラインによってコントロールされていたことを知ることが出来ます。

VIENNA micro-CT LAB - C L

私は 弦楽器を観察するときには、まず側板から表板や 裏板がオーバーハングした幅をおおよそ把握します。

それから表板や 裏板が正対するように ひっくり返して パフリング位置との関係をめやすに 真正面から裏板や 表板をながめ、非対称性を”一定の剛性比”として観察するようにしています。

 Antonio Stradivari 1720年 Ex Bavarian - J L
Antonio Stradivari ( c1644-1737 ) violin 1699年 Auer - M L
また私は この時、表板と裏板の大きさ( 幅 )の差も大切な観察ポイントとしています。

Matteo Goffriller Venice 1710 (1659-1742 ) X-ray - A L
実際に厳密に計測してみれば分かることですが 『 オールド・バイオリン 』の左右の長さや 幅の差は およそ 1.0 ~ 2.0mmほどの場合が多く、板厚に関しては 0.1mm以下の違いまでが 音響システムとして利用されていると考えられます。

VIENNA micro-CT LAB - D L

ですから 表板や裏板の輪郭線をたよりに見分けようとされる方達の試みは、 このわずかな差を視きることが出来ないことで 確信を持って判断できないという状況に陥ってしまうのではないでしょうか。

また、2次元の画像でそうであった方が‥ 実際に現物を手にもって観察した場合には その上に 左右2つの眼球の視覚差異がかさなり、なおさら混乱が起こっていると 私は推測しています。

ところが‥ 私の場合もそうでしたが 音響上のしかけとして観察すると面白いほど弦楽器の見分けができるようになるようです。ここまで指摘させていただいた4つのコーナー部は関係性をもっている 言わば 4桁ないしは 8桁のパスワードの様なものと私は思っています。

ここまでその具体例としてコーナー部の非対象性‥  特に A コーナーと B コーナーの面積差異に気をつけて観察するのをおすすめしたのは この 4つのコーナー部の剛性バランスの選ばれ方で その弦楽器の製作者の 音響的技術力と その時代性が判断できるからです。

私が資料として手元においている都立高校の 物理 Ⅰにこういう趣旨のことが書かれています。

【  複雑に見える運動でも‥ 】
物体の”重心”は、その物体全体に広がっている質量の代表点です。物体の運動を考えとき 一見複雑に見える運動でも その重心の動きとしてとらえ観察すると、すべてに共通する一定の規則性が浮かび上がってくることがあります。これこそが力学の基礎的な概念を形づくる根源となるのです。

私は 『 オールド・バイオリン 』などの弦楽器を研究した結果、古典的技術に基づいたヴァイオリンは 4つのコーナーブロック部の内で  ひとつのコーナー部の剛性が意図的にさげられた設定とされている事に気がつきました。

私は これをヴァイオリンが鳴り続けられる‥ つまりゆれ続けられる工夫で、『 オールド・バイオリン 』の特質の一つだと考えるようになりました。

また、私は これらのヴァイオリンは演奏時には 弦の振動によって ねじりが加わることで 1:3 として分割され ヴァイオリン弦の振動によって “一対”でスムーズに ゆれ始められるように 非対称の形状が選ばれたと理解しています。

Andrea Amati ( c1505–1577 ) Violin ( 1555 ) - F L

ヴァイオリンの響胴のゆれは 表板側が駒部からで 裏板側は 鳴らす弦にもよりますが上下ブロックに近い Dライン辺りが折れ曲がり両側C字コーナー部が表板側にある F字孔にむけて倒れこむように揺れることからスタートする場合が多いと私は考えています。

因みに、この時にみられる響胴の動きは ティシュ・ペーパーの箱でA部とB部分を指で変形させることで再現できます。

下の写真のように 指でA部とB部に圧力をくわえると 同時にC部とD部が近づく動きをするので、それを横から見ると平行だったC部とD部が 『 ハの字形』に動いているのが確認できます。

実際のヴァイオリンでは 弦のゆれが C部とD部に力を加えるかたちとなり、その作用でA部とB部がゆれている訳です。

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ヴァイオリンを含めた多くの弦楽器は 下図のように指で押されて膨らんだ ティッシュペーパーの箱の表板中央ゾーンに駒をたてて 表板が膨らむ動きを E部とF部にふりわけて響胴が共鳴しやすいように変形していると私は考えています。

このときにA部とB部のそばの適当な位置にカッターなどで 6 ~ 7cm のまっすぐな切れ込みを二筋入れて指で圧力を加えてみてください。 指の圧力に対して『 閉断面 』と『 開断面 』では劇的な 違いがあることが理解していただけると思います。

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この駆動システムは実際のヴァイオリンの破損痕跡でも確認できます。

たとえば このヴァイオリンは製作されてから わずか12年後に バスバーの両側が完全に剥がれ、なお且つ指板下の表板ジョイント部が 140mm程( 表板全長 354mm )の長さにわたって剥がれていました。

ピグマリウス REBIRTH(リバース) 2001年製 2013年8月23日撮影 - 2 L

ピグマリウス REBIRTH(リバース) 2001年製 2013年8月23日撮影 - 3 L
ピグマリウス REBIRTH(リバース) 2001年製 2013年8月23日撮影 - 4 L
ピグマリウス REBIRTH(リバース) 2001年製 2013年8月23日撮影 - 5 L (2)
そして表板ジョイントの剥がれを撮影しようと私が表板をさわっていたら『 パキッ 』という音とともにバスバーが外れてしまいました。

ピグマリウス REBIRTH(リバース) 2001年製 2013年8月23日撮影 - 6 L
そしてこの景色となった訳ですが、このようにバスバーがはずれたのは私の33年間の経験のなかで3例目の事例となりました。

ピグマリウス REBIRTH(リバース) 2001年製 2013年8月23日撮影 - 7 L
これが脱落したバスバーをE線側から見たものでバスバー長さが 275.0mm 上下スペースがネックブロック側 39.0mmのエンドブロック側 40.0mmで厚さが写真向かって左のネック側端が 5.5mmで 駒部 6.4mmのエンドブロック側端が 5.8mmとなっています。

そしてバスバーの高さは駒部が 11.6mmで両端が 4.5mmとしてありました。
また F字孔間距離の最狭部は 39.8mmにしてあり、これに対しバスバーは 0.1mm内側に取り付けてありました。

ピグマリウス REBIRTH(リバース) 2001年製 2013年8月23日撮影 MONO - A L
このピグマリウス『 REBIRTH(リバース)』シリーズのヴァイオリンは魂柱( Soundpost )が立っていた部分が表板、裏板ともすでに窪みができていました。

ピグマリウス REBIRTH(リバース) 2001年製 2013年8月23日撮影 - B L

Violin Sound post MONO - 1 L
ピグマリウス REBIRTH(リバース) 2001年製 2013年8月23日撮影 - C L
ヴァイオリンはバランスが合っていない状態で使用すると、疲労が進行し魂柱が立つ位置の表板と裏板の空間( 高さ )が少しずつ狭く( 低く )なっていきます。

しかし魂柱は圧力が強くなってもほとんど縮まないので、結果として表板や裏板にめり込むかたちになります。この破損につながる疲労の原因が  “つり合いの破れ” という現象です。

破損 - 2 L

この疲労破損がまねいた 最悪な事例です。

私が取り扱った事例ではないので推測ですが、疲労破損がすすみ表板や裏板に変形がおこり 上下ブロックの接着部などもゆるんだ状態だったところで、最後に楽器を落としてしまったのだと思います。

単純な原因でヴァイオリンが真っ二つに割れることはおこりませんので、これは言わば『 競合破損 』と言ったほうがいいかもしれません。

破損 - 1 L
ヴァイオリンを “強制振動楽器”と表現する方がいらっしゃるくらいで 弦をゆらすと思った以上に響胴は動きます。残念ながら、『 新品のヴァイオリンを買って間もないのに‥ 』という破損事例を 私もいくつか経験しました。

SUZUKI-1
たとえば バスバー剥がれの次の事例となりますが、この写真は 1992年5月に私の工房で撮影したものです。この1/2 サイズのヴァイオリン( SUZUKI VIOLIN No.280 )は 私が 1ヵ月前に新品で販売したものでした。

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このヴァイオリンは 新品で使い始めてわずかな期間しか経っていないのにバスバー剥がれによって鳴らすと すごいノイズ ( お子さんのお母さんもビックリするような 『 ダダダーッ!』という音がしました。)がしました。

当然ですが 私も持ち込まれた直後に修理が必要なことが分かりましたので、購入者のショックが深くならないように翌日に仕上げて納品するためにすぐに修理に入りました。このバスバーも 表板の動きにまったく合わない設定となっていました。

そして、このように バスバーが表板からはがれるプロセスが分かるのが下にあげさせていただいた写真です。

この Eugenio Degani (1842 – 1915) が 1910年に製作したとされるヴァイオリンの バスバー剥がれをごらんください。

Eugenio Degani (1842-1915) - 1 L上の2台のバスバーはがれと違って バスバーの先端部はまだ剥がれておらず 表板の幅広部にあたる位置だけが剥がれているのが分かります。

Eugenio Degani (1842-1915) - 2 LBOX-3-300x211

さて‥ 私はこの投稿を ヴァイオリンの見分け方のお話しをするために記述しています。その話のながれで響胴のゆれかたに ふれていますが ここで重要な事実を再確認しておこうと思います。

実際に『 オールド・バイオリン 』で達成されたことは独特の響きが生じるように、 響胴をすばやく 且つ、はげしく揺らし続けられる条件設定であったということです。

本物の弦楽器は 木工製の置物である箱状のものと違い 製作技術は

①  ゆれの初動がスムーズに生じる設定。
② 音高が明確で多様であること。

そのポイントとして 冒頭から例示させていただいたコーナー部の非対象性‥  特に A コーナーと B コーナーの面積差異を 私はヴァイオリンの音響システムの第二段階と捉えている関係で、まず響胴の 第一段階の動きについて説明いたしました。

弦の揺れによって生じさせていると 私は考えています。

Antonio Stradivari ( c1644-1737 ) violin 1699年 Auer - V L

そして 私は 第二段階で コーナー部 A,B,C,D が ねじれ始めると思っています。このとき 裏板コーナーA部が相対的に小さくするなど 剛性を低くしてあると、三角形 BCD が 一定の剛性を持ったまま 線分BDなどを折れ目として曲がると考えられます。

これは あくまで初動のイメージですが、私はヴァイオリンの響胴はF字孔端が弦の直接振動により内部の空気に疎密波を生じさせ( 一次振動 )、それがヴァイオリンの “駆動系”により表板の波源部にうまれたゆるみを共鳴振動させる( 二次振動 )仕掛けとなっていると考えています。

それを 単純モデルとして表現すると 静止状態では 四角形 ABCD の重心が点 G にあるととらえます。それが 響胴のねじりによって 点 A 部が他の剛性に負け、それにより 三角形 ABD が一時的に機能しなくなり 相対的に剛性を保った 三角形 BCD の重心点 H に重心が移動するというイメージとなります。

改訂版 高等学校 物理Ⅰ - 数研出版株式会社 平成23年12月印刷 - B L

Antonio Stradivari ( c1644-1737 ) violin 1699年 Auer - U L

表板につきましては 詳しくは これから先の投稿でふれようと思いますが、私は 裏板側 A コーナー部に剛性をさげる工夫がしてある場合には 表板のコーナー部では 裏板 B コーナー部にあたる 表板 Bass side – Lower corner に同じような工夫がしてある可能性が高いと思います。これを図にすると下のようなイメージとなります。

左図では 左側角が振動の起点となり奥の角がリレーションすることで「  ゆるみ 」が生まれます。また右図は対称型で 左側角の起点と手前の角がリレーションします。

 

私は 裏板の初動として ご説明した ねじりが 確実にすばやく起こるように工夫することで『 オールド・バイオリン 』などの弦楽器は すばやい音の立ち上がり( レスポンス )を確保していると考えています。これには “一定の剛性比”をふくむ 非対称性が重要となるのは言うまでもない事だと思います。

Half Size Violin 1998 - 2000 Varnish crack - B L
  Gasparo da Salò   /   Violoncello

では、ここで一台の 『 オールド・チェロ 』のコーナー部を見てみましょう。

Old cello reference - A L
この楽器は 表板 Bコーナー部( Bass side – Lower corner )に摩耗痕跡と面積差が認められます。

Old cello reference - C L
そうすると‥ 裏板 Aコーナー部はどうでしょうか?

Old cello reference - 2 L
一見したところ左右の面積比はおおきくないように見えます。
ところが 裏板 Aコーナー部をよく見てみると‥ 。

Old cello reference - 3 L
赤色で塗った 点 a.部と 点 b.部に 下の参考写真のような ” 復元加工”が施されていることが認められます。

Old cello - 5 L

私は このチェロも 表板 Bコーナー部と裏板 Aコーナー部にみられるように 響胴全てが 非対称設定で製作されたと 思います。
そう考えて検証すると このチェロのフォルムの歪みが意図されたと理解できるのではないでしょうか。

悲しいことですが、弦楽器を観察するときに踏まえてないといけないのが 19世紀初頭から この 1700年代に製作されたチェロのように 弦楽器工房で 非対称加工などが修復された事例が多数あるという事です。

現在では、弦楽器製作や修復の関係者で コーナー部は8か所とも全て 下の写真のように加工されていたと信じてしまっている人が過半数の状況となっていますので 、弦楽器を観察する場合には その程度が時代性を判断する状況証拠となりうるのではないかと私は思います。

Corner - 1 Lでは 恐縮ですが ここまでの説明を参考に現代のイタリア人製作者が『 オールド・チェロ 』を参考にして昨年製作した新作チェロと その見本で、コーナー部の特徴の差を観察してみてください。

Old cello reference - Contemporary Italian L
私は ヴァイオリンを観察し見分ける場合には “名のある楽器のイメージ”に頼るのではなく 音響システムの到達度や 温存度をヴァイオリンの評価基準とする事が大切と考えています。

 

 

Antonio Stradivari ( c1644-1737 ) 1726年 - B L
Antonio Stradivari ( ca.1644 – 1737 ),   Violin 1726年

Violin Corner block - G MONO L

The middle in the 17th century - F L

Antonio Stradivari ( c1644-1737 ) violin 1699年 Auer - AAntonio Stradivari ( ca.1644-1737 ),   Violin 1699年 ” Auer ”

Antonio Stradivari ( c1644-1737 ) violin 1699年 Auer - F L

Antonio Stradivari ( c1644-1737 ) violin 1699年 Auer - C L

Violin back - C L

Antonio Stradivari violin 1715年 Giuseppe Tartini ( 1715-1770 ) - 1 LAntonio Stradivari,   Violin 1715  Cremona,  “The Lipinski”  .
( Giuseppe Tartini  1692 – 1770  )
Antonio Stradivari violin 1722年 de Chaponay - A LAntonio Stradivari,   Violin 1722  Cremona,  “”

Antonio Stradivari violin 1731年 1715年 1722年 - 1 LT
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弦楽器において非対象が 常識だった時代 について

ここでヴァイオリンなどの弦楽器における時代性について お話ししたいと思います。

私の別の投稿 [ ヴァイオリンと能面の類似性について ]でふれていますが、『 オールド・バイオリン 』を見分けるには おなじ時期に日本で製作された 能面を観察するのと おなじような視点が必要となってきます。

それは『 オールド・バイオリン 』などの弦楽器を理解するには、当時の弦楽器工房で “創作”と  “写し”が表裏一体としておこなわれたという事実に着目するということです。

Noh Masks - 1 L

Cremona Map - A L

■  Violin maker  ●  Violinist, Teacher, Composer  □  Bow maker

Pythagoras ( BC.582-BC.496 )
Archimedes
( BC.287-BC.212 )

1378 ~ 1417年  “Schisma” Roma : Avignon ( 1309-1377 )
1453年  Constantinopolis /  The Eastern Roman Empire ( 330-1453 ),  Extinction.

Christophorus Columbus ( 1451-1506 ),  1492年 Palos de la Frontera,España – San Salvador Island – 1493  Palos de la Frontera

Leonardo da Vinci ( 1452-1519 )
Vasco da Gama ( ca.1460-1524 ), 1497 Lisbon – Inldia – 1499 Lisbon 55 / 147

1517年  “95 Thesen” Martin Luther ( 1483-1546 )

1538年  Naval battle of Preveza / Turkish Empire
1543年  Nicolaus Copernicus ( 1473-1543 )

■  Andrea Amati ( ca.1505-1577 ) Cremona, Violin maker.
1539年   Established a workshop in Cremona.

Andrea Amati ( c1505–1577 ) violin - B L
Andrea Amati ( c1505–1577 ) violin - E LAndrea Amati ( c1505–1577 )  violin, Cremona   1555 ~ 1560年頃

私は現在得られる情報から判断して、この楽器が ヴァイオリンの完成型としては 最も初期に製作されたものと考えています。

また、クレモナ派において このヴァイオリンと共に重要となのが シャルル9世の 摂政カトリーヌ・ド・メデシスによってフランス宮廷で使用された楽器群だと思っています。

これらの楽器は この後 リシュリュー枢機卿が ルイ13世の宰相となった 1626年ころに 5パートからなる弦楽合奏団である『王様の24人ヴァイオリン隊 ( Les Vingt-quatre Violons du Roi )』の設立につながり、 ルイ14世が親政をはじめる 1761年ころまで この合奏団で用いられたとされています。

つまり これらの楽器達は、ヴァイオリンという楽器の黎明期の性能をさぐるときに 実際に演奏された音楽と連動させることで私たちに気づきを与えてくれる 生き証人なのです。

Catherine de Médicis ( 1519-1589 )
1533年  She married Henry II at the age of 14.

Charles Ⅸ de France ( 1550-1574 )
1561年  He was crowned the king of France.

それから ヴァイオリンにとって ” ガスパロ・ダ・サロ ”の愛称で呼ばれた ガスパーロ・ディ・ベルトロッティを 始祖とするブレシア派の弦楽器製作者も重要だと思います。

私は この ジョバンニ・パオロ・マッジーニが製作したとされる ヴァイオリンなどにみられる 彼らの能力の高さを心から尊敬しています。

■  Antonio Amati ( 1540-1640 ) Cremona, Violin maker.
■  Girolamo AmatiⅠ( 1561-1630 ) Cremona, Violin maker.

“Gasparo da Salò”
■  Gasparo di Bertolotti ( ca.1540- ca.1609 )  Brescia, Violin maker.
■ 
Giovanni Paolo Maggini ( 1580- ca.1633 )  Brescia, Violin maker.

Giovanni Paolo Maggini ( 1580 – c1633 ) Brescia c1620 - 3
Giovanni Paolo Maggini ( 1580 – ca.1633 ) Violin,  Brescia  1620年頃

Galileo Galilei ( 1564-1642 )
Johannes Kepler (1571-1630 )
Marin Mersenne  ( 1588-1648 )
René Descartes ( 1596-1650 )

 

●  Biagio Marini ( 1594-1663 ),  Brescia / 1615  Venezia ‘ Basilica di San Marco’ / 1620 Brescia / 1621 Parma / 1623 ~ 1649 Neuburg an der Donau / 1649 Milan / 1652 Ferrara / 1654 Milan / 1656 Vicenza  /  Venezia 1663  :   Violinist
Scordatura”,   “double and even triple stopping”,   “Tremolo”   

 

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■  Nicolò Amati ( 1596-1684 ) Cremona, Violin maker.
■ 
Andrea Guarneri ( 1626-1698 ) Cremona, Violin maker.
1654年  He founded the workshop in Casa Guarneri .

Otto von Guericke ( 1602-1686 )

●  Maurizio Cazzati ( 1618-1678 ), Luzzara / 1641 Ferrara, Bozzolo, Bergamo / 1657 ~ 1671 Bologna / 1671 Mantova

■  Jacob Stainer ( 1617-1683 ) Absam, Tirol.  Violin maker.

 

ca.1626 ~ ca.1761  ” Les Vingt-quatre Violons du Roi ” ( “The King’s 24 Violins” )  The Royal Palace in Paris  

Louis XIV ‘Roi-Soleil’ ( 1638 – ‘1643-1715’ ),  1661 ~ 1682  “Château de Versailles”

●  Jean-Baptiste Lully ( 1632-1687 ),  Firenze / 1646 France / 1652 The Royal Palace in Paris  / 1653 “Petits Violons” / 1661 French subject , 1661 ~ 1682 “Château de Versailles”  / 1685,1686,1687

●  Giovanni Battista Vitali ( 1632-1692 ),  Bologna / 1666 Accademia Filarmonica di Bologna / 1774 Modena  :   Violinist

■  Giovanni Grancino ( 1637 – 1709 ) Milan,  Violin maker.
■  Alessandro Gagliano ( ca.1640–1730 ) Napoli,  Violin maker.
■  Giovanni Tononi ( ca.1640-1713 ) Bologna, Violin maker.

Christiaan Huygens ( 1629-1695 )
Antonie van Leeuwenhoek ( 1632-1723 )
Robert Hooke ( 1635-1703 )
Isaac Newton ( 1642-1727 )

 

■  Antonio Stradivari ( c.1644-1737 ) Cremona,  Violin maker.
1680年 He founded the workshop in Casa Stradivari .

■  Girolamo Amati Ⅱ ( 1649-1740 ) Cremona,  Violin maker.

Arp Schnitger ( 1648-1719 ),  active in Northern Europe, especially the Netherlands and Germany,  Pipe organ builder.

●  Heinrich Ignaz Franz von Biber ( 1644-1704 ), Bohemia / 1668  Zámek Kroměříž / 1671 Salzburg,  ca.1676 ” Rosenkranz-Sonaten ” ( Scordatura )  :   Violinist

●  Arcangelo Corelli ( 1653-1713 ), Fusignano / 1666 Bologna / 1675 Rome / 1681 München / 1685 Roma / 1689 Modena / 1708 Rome :   Violinist

●  Giuseppe Torelli ( 1658-1709 ), Verona / Bologna / 1684 Accademia Filarmonica di Bologna / 1697 ~ 1699 Fürstentum Ansbach / 1699 Wien / Bologna :   Violinist

 


 

■  Francesco Ruggieri ( 1655-1698 ) Cremona, Violin maker.
■  Pietro Giovanni Guarneri ( 1655-1720 ) Cremona / Mantua, Violin maker.

■  Matteo Goffriller ( 1659–1742 )  Venezia,  Violin maker.

●  Giacomo Antonio Perti ( 1661-1756 ),  Bologna / Parma / Venezia / 1690 ~ 1756 Bologna  :   Violinist

●  Tomaso Antonio Vitali ( 1663-1745 ), 1674 Modena :  Violinist

■  Carlo Giuseppe Testore ( c.1665-1716 )  Milan, Violin maker.
■  Filius Andrea Guarneri ( 1666-1744 ) Cremona, Violin maker.

■  Francesco Stradivari ( 1671-1743 ) Cremona,  Violin maker.
■  Omobono Stradivari ( 1679-1742 ) Cremona,  Violin maker.

■  Carlo Tononi ( c.1675-1730 ) Bologna / Venezia,  Violin maker.

●  Antonio Vivaldi ( 1678-1741 ), Venezia 1703 / 1740 Wien :   Violinist
● 
Pietro Castrucci ( 1679-1752 ),  Roma / 1715 London / 1750 Dublin :   Violinist

■  Carlo Bergonzi ( 1683-1747 ) Cremona,  Violin maker.
■  Domenico Montagnana ( 1686-1750 ) Venezia,  Violin maker.

Gottfried Silbermann ( 1683-1753 ) Saxony / Dresden, Pipe organ builder.
Zacharias Hildebrandt ( 1688-1757 ),  Pipe organ builder.

1687年  Philosophiæ Naturalis Principia Mathematica

●  Johann Sebastian Bach ( 1685-1750 ), Eisenach / 1703 Weimar, Arnstadt / 1705.10 Lübeck 1706. 1 /  1707 Mühlhausen / 1708  Weimar / 1717 Köthen, 1721 Anna Magdalena Bach  / 1723 Leipzig

●  Giovanni Battista Somis ( 1686-1763 ),  Turin / 1731 Paris / Turin
:   Violinist
●  Francesco Geminiani ( 1687-1762 ), Lucca / 1711 Naples / 1714 London  :   Violinist

●  Francesco Maria Veracini ( 1690-1768 ), Firenze / 1711 Venezia / 1714 London / 1616 Venezia / 1723 Firenze / 1733 London / 1744 Firenze  :  Jacob Steiner violin  /   Violinist

■  Andrea Guarneri ( 1691-1706 )  Cremona,  Violin maker.

●  Giuseppe Tartini ( 1692-1770 ), Pirano / 1721 Padova, 1726 Violin School  :   Violinist

●  Pietro Locatelli ( 1695-1764 ), Bergamo / 1723 Mantua, Venezia, München, Dresden, Berlin, Frankfurt, Kassel / 1729  Amsterdam  :   Violinist

■  PietroⅡ Guarneri ( 1695-1762 )  Cremona / Venezia, Violin maker.  1718年  moved to Venezia

●  Jean-Marie Leclair ( 1697-1764 ), Lyon / Turin / 1723 Paris, ‘Palais des Tuileries’  / 1733 ~ 1737  ‘ Louis XV ( 1710 – ‘1715-1774’ ) / 1738 ~ 1743 Den Haag  / 1743 ~ 1764 Paris  :   Violinist

 

“Guarneri del Gesù”
■  Bartolomeo Giuseppe Guarneri ( 1698-1744 )  Cremona  :  Violin maker.  1722年頃  He is independent.

弦楽器製作流派である ”クレモナ派”の始祖  アンドレア・アマティ( Andrea Amati  ca.1505–1577 )  からヨーゼフ・グァルネリ( Bartolomeo Giuseppe Guarneri  1698-1744 )の活躍する時期までは、おおよそ 170年ほどです。

そののちに最後の”クレモナ派” J.B. チェルーティ( Giovanni Battista Ceruti  1755-1817 )が亡くなる 1817年までが 約100年、そして厳密な意味でイタリア最後の名工として トリノなどで 弦楽器製作をおこなった ヨーゼフ・アントニオ・ロッカ( Giuseppe Antonio Rocca 1807-1865 )の他界までがまた 50年程 でした 。

 

Giuseppe Guaneri Cremona c1730 Goldberg-Baron Vitta - A L“Guarneri del Gesù”  Bartolomeo Giuseppe Guarneri ( 1698-1744 )
Violin  ‘Goldberg-Baron Vitta’,  1730年頃

その ヨーゼフ・グァルネリが 1730年頃製作したとされる このヴァイオリンのコーナー部は挑戦的と 私は感じます。

Bartolomeo Giuseppe Guarneri - del Gesù ( 1698-1744 ) Violin Carrodus 1743年 - A L“Guarneri del Gesù”  Bartolomeo Giuseppe Guarneri ( 1698-1744 )     Violin  ‘Carrodus’,  1743年

 

Giuseppe Antonio Rocca ( 1807-1865 ) Violin 1845-1850年頃 - C L
Giuseppe Antonio Rocca ( 1807-1865 )  Violin, Turin  1845 ~ 1850年頃

■  Camillo Camilli ( ca.1704-1754 ) Mantua,  Violin maker.

Carlo Tononi Bologna 1705 ( 1675 Bologna 1717-30 Venice ) - A L
Carlo Tononi  (  ca.1675 Bologna, 1717-30 Venice ) Violin,  Bologna  1705年

私は この楽器の左右のコーナー部に設けられた面積の差が 明解な設定とされていることをすばらしいと思っています。

このヴァイオリンが製作されたボローニャは ヴァイオリン演奏史のはじめに輝く アルカンジェロ・コレッリ ( Arcangelo Corelli 1653-1713 )が滞在していたことでも知られています。

彼は Bolognaから約40㎞ほど Ravenna方面に行った Fusignano の出身で 13歳である1666年にボローニャに移り1670年には わずか17歳でアカデミア・フィルアルモニカに入る事を認められ、1675年にはローマの 聖ジョバンニ・ディ・フィオレンティーニ教会の主席ヴァイオリン奏者となり 演奏活動を終えた5年後の 1713年にローマで亡くなりました。

ご承知のように彼が作曲し厳選して残した“ ヴァイオリンと通奏低音のためのソナタ集 ”などのすばらしい音楽は 今日でも演奏されています。 ボローニャはヴァイオリンの演奏でそうであったように、弦楽器製作でも重要な役割を果たしていました。

そして、この街で弦楽器製作者として有名になったのが  Giovanni Tononi ( ca.1640-1713 )と Carlo Tononi でした。

●  Giovanni Battista Martini ( 1706-1784 ), Bologna / 1758 Accademia Filarmonica di Bologna / 1774 “Saggio dl contrapunto”

●  Franz Xaver Richter ( 1709-1789 ), Moravia / 1740 ~ 1747 Kempten i.a. / 1747 Mannheim / 1769 ~ 1789  ‘Cathédrale Notre-Dame-de-Strasbourg’  :  Violinist

●  Jean-Joseph de Mondonville ( 1711-1772 ), Narbonne / 1733 ~ 1772 Paris  :  Violinist

1701 ~ 1714年  War of the Spanish Succession
“France : Louis XIV ( 1638-1715 ) × Habsburg : Karl VI ( 1685-1740 )”

●  Cremona governance countries
España ( 1513 ~ 1524, 1526 ~ 1701 ) – France (  1701 ~ 1702 ) –  Republik Österreich / Habsburg  ( 1707 ~ 1848 )
●  Casa Savoia :  1713年 Regno di Sicilia – 1720年 Regno di Sardegna  / Torino – 1848年 The First War of Independence – 1859年 The Second War of Independence –  1866年 The Third War of Independence

■  Giovanni Battista Guadagnini ( 1711-1786 ), 1711 Cremona / 1729 Parma / 1740 Piacenza / 1749 Milan / 1757 Cremona / 1759 Parma / 1771-1786 Turin, Violin maker.

■  Nicolò Gagliano ( active. ca.1730-1787 ) Napoli, Violin maker.
■  Lorenzo Storioni  ( 1744-1816 ) Cremona, Violin maker.
■  Giovanni Battista Ceruti ( 1755-1817 ) Cremona, Violin maker.

●  Johann Wenzel Stamitz ( 1717-1757 ), Bohemian / Praha / 1741 Mannheim / 1754 ~ 1755 Paris / 1755 Mannheim :  Violinist

●  Leopold Mozart ( 1719-1787 ),  Augsburg / 1737 Salzburg / 1785 Wien, Salzburg :  Violinist
1751年  “Versuch einer gründlichen Violinschule”
– – – 
Wolfgang Amadeus Mozart ( 1756-1791 )

●  Pietro Nardini ( 1722-1793 ), Fibiana / Livorno / Padova / 1762 Stuttgart / 1770 Firenze :   Violinist

●  Pierre Gaviniès ( 1728-1800 ),  Paris /  1744 “The Concert Spirituel”  / 1795 He became a professor at the newly-founded ‘Conservatoire de Paris ‘.  :   Violinist

●  Gaetano Pugnani ( 1731-1798 ), Torino / 1749 Roma / 1750 Torino / 1754 Paris, Nederland, London, Deutschland / 1763 Torino  / 1767 London / 1770 Torino / 1780 ~ 1782 Russia, 1782 Torino :  Violinist

Antonio Stradivari violin 1731年 Lady Jeanne - C LAntonio Stradivari ( ca.1644-1737 )  Violin,  1731年  Cremona
  ” Lady Jeanne “

 

Camillo Camilli ( c1704-1754 ) Violin Mantua 1750年頃 - A LCamillo Camilli ( ca.1704-1754 ) Violin,  Mantua  1750年頃

ボローニャから西北西方向に30㎞ほどのモデナ( Modena )を経て、そこから北に60㎞ほどゆくと マントヴァ( Mantua )があります。因みにこの街道は そのまま北上すれば ブレンネロ( Brennero )の峠を越えインスブルックから ミュンヘンへと至る重要な街道です。

このマントヴァは 1708年に スペイン継承戦争の敗北とマントヴァ公カルロ4世の死により公位が廃止されて ハプスブルク家に支配される事になりました。

このヴァイオリンが製作された時期には ピエトロ・ガルネリ(  “Pietro Guarneri di Mantova”  1655-1720 )の流れをくむ 弦楽器製作者が活躍していました。カミロ・カミリは そのマントヴァ派の 有名な弦楽器製作者です。

このヴァイオリンは コーナー部の左右の非対象性がはっきりと読み取れ、また表板と裏板が 強いアーチをもつ名器です。

● Luigi Rodolfo Boccherini ( 1743-1805 ), 1743 Lucca / 1757 Vienna  “The court employed” / 1761 Madrid / 1771 String Quintet Op. 11  No. 5 ( G 275 ) :   Italian cellist and composer 

Marie Antoinette ( 1755-1793.10.16 )
1770年  She married  Louis-Auguste ( 1754-1793.1.21 )  /  ” Louis XVI ( 1774 ) “  at the age of 14.
1793年  ” Louis XVI ” ( 1774 )  /  Louis-Auguste ( 1754-1793.1.21 )  

●  Johann Peter Salomon ( 1745-1815 ), Bonn / Prussia / ca.1780 London / 1791 ~ 1792, 1794 ~ 1795 Franz Joseph Haydn  :  Violinist

□  François-Xavier Tourte ( 1747-1835),  Paris :   Bow maker

●  Carl Stamitz ( 1745-1801 ), Mannheim / 1762 Mannheim palace orchestra / 1770 Paris / Praha, London  :  Violinist

●  Johann Anton Stamitz ( 1754 – ‥ ), Mannheim / 1770 Paris / 1782 ~ 1789 Versailles / ‘ 1798‥1809 Paris ‘  :   Violinist

■  Giovanni Battista Ceruti  ( 1755-1817 ) , Cremona  :  Violin maker.

●  Giovanni Battista Viotti ( 1755-1824 ), Fontanetto Po / Torino, Paris, Versailles, 1788 Paris, London, 1819-1821 Paris,  London :   Violinist

●  Federigo Fiorillo ( 1755-1823 ),  Braunschweig / 1780 Poland / 1783 Riga / Paris / 1788 London  He played the viola in Saloman’s quartet.  / 1873 Amsterdam, Paris

●  Wolfgang Amadeus Mozart ( 1756-1791 ), Salzburg / 1762 München, Wien / 1763 ~ 1766 Frankfurt, Paris, London / 1767 ~ 1769 Wien / 1769 ~ 1771 Milano, Bologna, Roma, Napoli / 1773, 1774 ~ 1775 Wien / 1777 München, Mannheim, Augsburg / 1778 Paris / 1779 Salzburg / 1781 München, Wien / 1783  Salzburg  / 1787 Praha, Wien / 1789 Berlin / 1790 Frankfurt / 1791 Wien, Praha, Wien

 

●  Bernhard Heinrich Romberg  ( 1767-1841 ),   “The Münster Court Orchestra” / 1790 Bonn  “The Court Orchestra” /  He lengthened the cello’s fingerboard and ‘Flattened’ the side under the C string  :   German cellist and composer 

●  Rodolphe Kreutzer ( 1766-1831 ), Versailles / 1803 Wien “Kreutzer Sonata ” Ludwig van Beethoven 1770-1827,  Paris 1795 ~ 1826 ‘Conservatoire de Paris’ –  1796年 Caprices – 1807 comprises 40 pieces – “42 Études ou Caprices”  / Genève, Swiss :   Violinist

●  Pierre Baillot ( 1771-1842 ),  Paris :   Violinist

●  Pierre Rode ( 1774-1830 ), Bordeaux / 1787 Paris /  1804 Saint Petersburg, Moscow / 1812 Wien ” Ludwig van Beethoven 1770-1827  Violinsonate Nr. 10 in G-Dur, Op. 96 ” / 1814 ~ 1819年  Berlin,  “24 capricci”  /  1830 Lot-et-Garonne :   Violinist

●  August Duranowski ( ca.1770-1834 ), Warsaw / Paris / 1790 Brussels / Strasbourg :   Violinist

●  Ignaz Schuppanzigh ( 1776-1830 ), Vienna /  He gave violin lessons to Beethoven, and they remained friends until Beethoven’s death.  :  “Schuppanzigh Quartet”  :   Violinist

■  Giovanni Francesco Pressenda ( 1777-1854 ),   Lequio Berria / Cremona / 1815 Torino,  1821 was able to open his own firm.    Violin maker.

●  François Antoine Habeneck ( 1781-1849 ), Charleville-Mézières / 1801 ‘Conservatoire de Paris’ / Paris  :  Violinist

●  Jacques Mazas ( 1782-1849 ), Lavaur / 1802 Paris / Bordeaux  :   Violinist

●  Niccolò Paganini ( 1782-1840 )
1802 ~ 1817年  ” 24 Caprices for Solo Violin ”  :   Violinist

●  Louis Spohr ( 1784-1859 ), Braunschweig / 1802 Saint Petersburg / 1804 Leipzig / 1805 ~ 1812 Gotha / 1813 ~ 1815 Wien /  1816,1817 Italiana / 1817 ~ 1819 ‘Oper Frankfurt’  / 1820 England / 1821 Paris / 1822 ~ 1859 Kassel :   Violinist
” Chin rest & Conductor’s stick “

●  French Revolution  1789 ~ 1793年
1791年  Metric system ( metre & kilogram )
Maximilien Robespierre ( 1758-1794 )

Giovanni Battista Ceruti ex Havemann 1791年 Cremona ( 1755-1817 ) 355-163-113-208 Wurlitzer collection 1931 - A LGiovanni Battista Ceruti  ( 1755-1817 )  Violin,  Cremona 1791年   “ex Havemann”  1931 Wurlitzer collection  

●  Joseph Böhm ( 1795-1876 ), Hungarian,  Pest  /  1819 ~ 1848 professor at the Vienna Conservatory,  His many students included Hubay, Joachim, Ernst,  Jakob Dont, Hellmesberger. Sr . :  Violinist

●  Georg Hellmesberger ( 1800-1873 ), Vienna / 1826 ~ 1833 ‘The Vienna Conservatory’ / His students were Joachim, Leopold Auer.  :  Violinist

●  Charles-Auguste de Bériot ( 1802-1870 ), Leuven / 1843  ‘Royal Conservatory of Brussels’ /  ‥ 1852. – 1858 – 1866 Brussels :   Violinist

■  Giuseppe Antonio Rocca ( 1807-1865 ),  Barbaresco / 1834 Turin,   It was during this time that he became acquainted with Luigi Tarisio, a violin dealer  / Rocca won prizes in his craft at a national arts and crafts exhibitions in 1844 and 1846.  / Enrico Rocca ( 1847-1915 ) / 1850 ~ 1865 Genova  :   Violin maker.

●  Auguste-Joseph Franchomme ( 1808-1884 ), 1831, 1833  Paris –  Frédéric Chopin,  In 1843 He acquired the Duport Stradivarius for the then-record sum of 22,000 French francs. He also owned the De Munck Stradivarius of 1730. Franchomme succeeded Norblin as the head professor of cello at the Paris Conservatory in 1846  :  French cellist and composer

●  Joseph Lambert Massart ( 1811-1892 ), Liège / 1829 Paris, 1843 ~ 1890 ‘The Conservatoire de Paris’  :  Violinist

●  Heinrich Wilhelm Ernst ( 1812-1865 ), Moravia / 1825 ‘The Vienna Conservatory’ /  1828 Niccolo Paganini visited Vienna. 1830 He played Paganini’s Nel cor pìù non mi sento. / 1865 Nice :   Violinist

  Risorgimento  ( 1815 ~ 1861 )

●  Jakob Dont ( 1815-1888 ), Vienna / 24 Etudes and Caprices :  Violinist

●  Henri Vieuxtemps ( 1820-1881 ),  Belgium / Liège , Brussels /  1829 Paris /  Brussels / 1833 Germany  /  1835 Wien / 1836 Paris / 1849  ~ 1851 Saint Petersburg / 1850 Paris / 1871  ‘Royal Conservatory of Brussels’ / Paris 1879 / Algeria :   Violinist

●  Joseph Joachim ( 1831-1907), Kittsee / 1833 Budapest / Wien / 1843 Leipzig / 1846 London / 1848  “Gewandhausorchester Leipzig ” / 1850 Weimar / 1852 Hannover  / 1866 ~ 1907 Berlin :   Violinist

●  Henryk Wieniawski ( 1835-1880 ), Lublin / 1843 ‘Conservatoire de Paris’ / 1874 ~ 1877 ‘Royal Conservatory of Brussels’ / Moscow :   Violinist

●  Pablo de Sarasate ( 1844-1908 ), Pamplona / 1854 Madrid / 1855 Paris / 1860 London, Paris, performing in Europe, North America, South America / 1864 Camille Saint-Saëns ‘Introduction et Rondo capriccioso en la mineur’   / 1878 Zigeunerweisen, 1883 Carmen Fantasy  / Biarritz 1908 :   Violinist

●  Leopold Auer ( 1845-1930 ),Veszprém  / Budapest, Wien / Hannover : Joachim / 1868 ~ 1917 Saint Petersburg  : St Petersburg Conservatory / 1918 America / 1824 The Curtis Institute of Music  :   Violinist

●  Eugène-Auguste Ysaÿe ( 1858-1931 ),  Liège / 1886 ‘Royal Conservatory of Brussels’  / 1918 Cincinnati  /  Brussels :   Violinist

●  Jenő Hubay ( 1858-1937 ),  Pest / Berlin / Paris / 1882 Brussels / 1886 Hungary, ‘Budapest Quartet’ / Hubay’s main pupils Joseph Szigeti.    Violinist

●  Lucien Capet ( 1873-1928 ), Paris / 1893 “Capet Quartet”  :   Violinist

●  Regno d’Italia ( 1861 ~ 1946 ) Last Casa Savoia : 1946年 UmbertoⅡ( 1904-1983 )

 

 

Nicolò Amati ( 1596–1684 ) violin 1669年 body L350 W201 - C LNicolò Amati ( 1596–1684 ),  Violin 1669年

Antonio e Girolamo Amati violin 1629年 - G LAntonio e Girolamo Amati,   Violin 1629年

Andrea Amati 1570年頃 ex Ross - D LAndrea Amati ( ca.1505-1577 ),  Violin 1570年頃  ” ex Ross ”
Leopold Widhalm ( 1722- 1786 ) 1769年 - A L
Leopold Widhalm  ( 1722- 1786 ),  Violin 1769年

 

 BALFOUR March 1903 - B L
BALFOUR March 1903 - A L
VOLLER BROTHERS violin 1900年頃 - A L

 VOLLER BROTHERS violin 1900年 - 1 L

 

 

■  William Voller ( 1854-1933 ), Guildford / London   : Violinist,  Violin Maker.

■  Alfred Voller ( 1856-1918 ),  Guildford / London /  Devon  :  Cellist,  Violin Maker.

■  Charles Voller ( 1865-1949 ), Guildford / London / Paignton, Devon  :  Violinist,  Violin Maker.

 

 

 

 

 

 

“オールド弦楽器”の 特徴について

弦楽器の最上の響きは・・  サウンド・ホールで変換された弦の振動と、響胴の ねじりによる「ゆるみ」から生じた共鳴 ( レゾナンス )によって生まれていると考えられます。

このために優れたオールド弦楽器は ねじりが生じやすいように工夫がしてあるようです。

この、ねじりに関しての条件設定は 響胴内部や素材特性のように簡単には判断できない範囲までおよんでいますが、外見上からも それに繋がる要素を見いだす事は可能です。

それが 非対称条件を観察する理由です。

Antonio Stradivari 1673年Harrell - Du Pre - Guttmann - C LAntonio Stradivari  1673,  Violoncello ” Harrell, Du Pre,  Guttmann ”

例えば チェロを観察する場合に、上図で A とした コーナー部に大きな摩耗が見られるようでしたら、それほど判断に迷う必要はないと思います。

それらが単純な摩耗ではなく 製作時に人為的な左右差として設定された可能性を見つければ済む訳ですから。

では、このストラディヴァリが 1673年に製作したチェロはどうでしょうか?

Giovanni Baptista Rogeri cello 1695年頃 - C L
また 、これは、ロジェーリ作とされていますが、コーナー部の左右差は どのように考えられますか。

Grancino cello made around 1690 cooper-collection - A LGiovanni Battista Grancino ( 1637-1709 ) Milan 1697年 - A L 次は 左右の面積差が見えやすい グランチーノと ストラディヴァリのチェロです。

Antonio Stradivari cello 1707年 Boni-Hegar - G L
そして、私自身が 摩耗説が誤りであることに気づく きっかけとなった『 オールド・チェロ 』を見てください 。

Old Italian Cello c1680 - 1700 ( F 734-348-230-432 B 735-349-225-430 stop 403 ff 100 ) - 1 LOld Italian Cello    1700年頃
( F 734-348-230-432,  B 735-349-225-430, stop 403 ff 100 )

また、有名な楽器で 参考例を挙げるとすると、エドゥアルド・ウルフソン( Eduard Wulfson 所有し、グートマン( Natalia Gutmanさんが使用している グァルネリ・デル・ジェスによる このチェロが 思い浮かびます。

Guarneri 'del Gesù' cello 1731年 - A L

” Guarneri del Gesù ”
Bartolomeo Giuseppe Guarneri ( 1698-1744 )
Violoncello  1731,  ” Natalia Gutman ”

私はこのチェロを 知らなかった8年ほど前に 共通の知人から ウルフソン( Eduard Wulfson 氏が グートマン( Natalia Gutman )さんたちと美術館のなかでトリオで演奏している DVDをいただき拝聴したのですが 、このチェロがもつ深い響きには衝撃をうけました。 

この グァルネリ・デル・ジェスのチェロでも 裏板高音側コーナーに施された摩耗加工を見ることが出来ます。

Guarneri 'del Gesù' cello 1731年 - C L

Guarneri ‘del Gesù’   Violoncello  1731,  ” Natalia Gutman ”

Bach :  Suite for solo cello No. 3 in C major
( Paris, Musée du Luxembourg,  2002/11/16 )
Natalia Gutman,Violoncelle

【Bach, Mozart, Schubert 】”La Société Stradivarius”
Yvietta Matison, Alto ( instrument )
Eduard Wulfson, Violin


それから、 Francesco Ruggieri が 1675年に製作したとされるチェロでも同じ景色を見ることができます。

Francesco Ruggieri cello 1675年 - A L

Francesco Ruggieri  ( ca.1645-1695 ),  Violoncello 1675年

確かに、チェロは A コーナーにひざを添えたり グリップしたりする際に触れることがあるので 摩耗痕跡は それにより生じたように思えます。

Joseph Thomas Klotz Violoncello piccolo Mittenwald 1794 ( 1743-1809 ) Sebastian 1696-1768 - C LJoseph Thomas Klotz  ( 1743-1809 )  Violoncello piccolo  Mittenwald 1794年

ところが 摩耗痕跡をよく見ていくと、それが不自然である事に気がつきます。

上のクロッツで これを見ると コーナーである A 部の塗装は多少はがれていますが、それよりも Q 部の方がもっと 剥がれています。問題なのは この Q 部に 演奏時にチェリストが 触れることは まず無いということです。

これは R 部についても言えますが、 実際にチェロの肩にはさわりますので 判断しにくいのですが、上のクロッツでいえば 摩耗したようになっているゾーンの中でも特に Q 部と S 部はアーチの不連続面の間にある谷状にくぼんだ部分ですから 自然な摩耗ではないことが分かります。

Giovanni Battista Genova ( warked ca.1740-ca.1770 )
Cello,  Turin  1770年頃

Nicolò Amati ( 1596-1684 )  Cello, “Herbert”  1677年

Girolamo Amati Ⅱ ( 1649ー1740 )  Cello,  “Ex Bonjour”  1690年

Carlo Ruggeri ( 1666–1713 )  Violoncello,   1706年

このように、演奏によって出来たとは思えない Q 部の摩耗痕跡は、オールド・チェロでは めずらしくはありません。

Guarneri del Gesù ( 1698-1744 )   Violin, “Enescu – Cathedral”  1725年頃

また、当然のことですが・・  この位置は オールドヴァイオリンでも意識されていることが確認できます。

Giuseppe Antonio Rocca ( 1807-1865 ) Violoncello 1850年 - D L
もし仮に、これらを 演奏や運搬による摩耗であるとすると、それなりの期間使用される必要があります。

とすると・・・『オールド』より使用された期間が短い『モダン』の弦楽器はどうなっているでしょうか。

170年程前のことですが、厳密な意味で最後の名工である ヨーゼフ・アントニオ・ロッカ( Giuseppe Antonio Rocca 1807-1865 )は、トリノで 弦楽器製作をおこなっていました。

彼の作品は、非対称条件に  摩耗痕跡の要素も取り込まれ あたかも”様式化”されたかのような工夫がなされています。

Giuseppe Antonio Rocca Torino 1850年頃 - A LGiuseppe Antonio Rocca( 1807-1865 ) Contrabass,   1850年頃

その端的な例が、彼が製作した摩耗や打撃痕跡があるコントラバスです。チェロと違ってコントラバスは A コーナーをグリップしませんので、これらの傷跡は 製作時の加工である状況証拠となっています。

Giuseppe Antonio Rocca Torino 1850年頃 - B L

Giuseppe Antonio Rocca( 1807-1865 ) Contrabass,  1850年頃

このように観察をしていくと『オールド弦楽器は、コーナー部などの 摩耗痕跡も駆使して 非対象( アシンメトリー )なバランスで製作されている。』と定義することが出来ます。

 

 

 

2016-10-22      Joseph Naomi Yokota

グスレという弦楽器について

Gusel - 1 L

グスレはバルカン半島地域(ボスニア・ヘルツェゴビナ、セルビア、モンテネグロ、クロアチアなど)に伝わる一本弦の弓奏楽器です。
楓材などの木をくり抜くように削り出して製作され、胴体部のくぼみを覆うように皮が張ってあり、ネック部やヘッド部はシンプルな形状のタイプや 馬や猛禽類の鳥などの彫刻がされているタイプなどがあります。

弦はネックから距離をおいて張られていて、音程を変える時はネックに弦を押さえ込まずに音程を変えるようになっています。
この楽器の伝統的な演奏者(guslar)は、英雄や歴史の物語・抒情詩を語るときに伴奏楽器として用いるそうです。


グスレは 54分20秒から出てきます。
( セルビア語:2010年にモンテネグロの村で撮影されたようです。前半は村の教会でのミサが入祭から聖体拝領までほぼすべてが記録されており、その後 集会所で奉献祭の食事会がおこなわれています。そして その終盤でグスレが登場します。)


クロアチアの独立記念日の祝いとして クロアチア共和国の首都ザグレブ(ヤルン)で 数千人の観客のまえでグスレが演奏されています。

Gusel - 2 L

私が このグスレという弓奏楽器に着目したのは 響かせるのが難しい 一本弦( 例外もあります。)という条件に加えて、 彫りおこしの響胴の関係から使用するためには “コツ” が必要と考えられたからです。

おなじ一本弦の弓奏楽器であっても 14世紀から18世紀半ばまでドイツなどを中心としたヨーロッパで流行した トロンバマリーナのように 響胴が板材で箱状となっていれば極端な “コツ”は必要なかったと 私は推測しています。

Canon Francis Galpin (1858-1945) - 1 L

Trumpet Marine Switzerland c1675-1750 - 1 L
Trumpet Marine Switzerland c1675-1750 - 3 L

Trumpet Marine Switzerland c1675-1750 - 4 L

 

このトロンバマリーナの駒部です。 この駒は ヴィヴラート・ブリッジと説明されています。
Trumpet Marine Switzerland c1675-1750 - 5 L

さて、グスレという楽器の特徴についてお話しすると、バルカン半島のそれぞれの地域で製作されるときに音響上の理由で 表皮部のサウンド・ホール( 一組型と二組型が基本です。)が選ばれ、また 響胴部の裏側中央に穴をあけるかどうかが考慮されているようです。

Gusel - 8 L

しかし最後は演奏者が 駒をどの位置にどの角度でたてるかが問われ、 その判断により 楽器の響きに極端な差が出ていると‥ 私は思っています。

Gusel - 7 L
そのいくつかの実例を下にあげたグスレ奏者( Guslar )の写真で ごらんください。

GUSLAR - 1 L

因みに さきほど 私が「  演奏者が使用するときの “コツ” 」 といったのは、ネックに対する 駒の角度と 位置を意味します。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA

私は グスレという楽器は 左右の非対象性( アシンメトリー )が大きいタイプと、そうでないものに大別できると考えています。

そして非対象性が小さい楽器では『 ねじり 』の不足を補うために正中線に対して駒を極端に斜めにたてたり、響きを聴きながら 駒位置を微妙に左右にずらすことで 残響を保つ工夫をしながら演奏されていると私は推測しています。

一組型のサウンド・ホールをもつ グスレはこの工夫が 顕著です。

Gusel - 9 L

また、二組型の場合は表皮部のサウンド・ホールを 左右非対称とすることで『 ねじり 』の不足が補えるために、一組型よりも 駒の角度が正中線に直交するイメージに近い立てかたで演奏されていることが確認できると思います。

GUSLAR - 3 L私は 表皮部サウンド・ホールが 二組型で左右非対称タイプを このグスレ奏者の楽器のようなイメージとして捉えています。

the traditional Montenegrin gusle - B Lそれから この表皮部で駒がたてられた跡を見てください。

私は このグスレという弓奏楽器は バランスを変えないで連続使用をすると、演奏することで生まれるひずみにより 結局 響かなくなってしまうという特徴があると思っています。

ですから この駒跡にみられるようにグスレ奏者はこれを解決するために 駒位置と角度を時おり移動しながら使用しているはずと推測しています。
the traditional Montenegrin gusle - C L

 

私は グスレの専門ではありませんが 弦楽器がゆれ続ける条件について検証した結論として、これらの問題は 左右の非対象性( アシンメトリー )が大きいタイプでは生じにくいと考えています。

Gusel - 3 L
私はこの左右の非対象性( アシンメトリー )が弦楽器における古典的技術の特質だと考えています。

Gusel - 4 L

Gusel - 6 MONO L

たとえばルネサンス期の弦楽器で非対象性をみてください。
多くの部位で『 ねじり 』を生むために工夫されていることが解ります。
Gasparo da Salo - Cetera Brescia c 1560 ( c 1542-c 1609 ) L
Cittern by Gasparo da Salo ( c 1542 - c 1609 ) Brescia c 1570  L

これにより残響が確保され それにより独特の響きがうみだされていると 私は理解しています。

 

Cetera di anonimo - Ashmolean Museum L

Cittern c1600 English ( Length 616 - String length 340 ) National Music Museum - 1 L

Cittern c 1600 English ( Length 616 - String length 340 ) National Music Museum L

 

 

 

 

 

 

Bass viol  - 1    L

Hieronymus Brensius  -  Testudo theorbata  in Bologna    -  L

Hieronymus Brensius  -  Testudo theorbata  in Bologna   -  L
Ottavio Smidt    Liuto ( Tenore ) Parma 1612年  - 1     L
Magno Stegher  -  Gran liuto basso   Venezia 1607年  - 1     L

Magno Stegher  -  Gran liuto basso   Venezia 1607  - 1
Hieronymus Brensius  -  Testudo theorbata  in Bologna    - 1    L

私は “オールド・バイオリン”などの弦楽器も この左右の非対象性( アシンメトリー )が揺り籠となり 誕生につながったと考えています。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA
H F - Liuto tenore in Bologna - 1 L

この 弦楽器における古典的技術の特質といえる 左右の非対象性( アシンメトリー )は『螺鈿紫檀五弦琵琶』にもその要素を見いだす事ができます。

「螺鈿紫檀五絃琵琶」(長さ108㌢ 幅31㌢) - A L

この『螺鈿紫檀五弦琵琶』は知られているように 聖武天皇の崩御にともない 765年に光明皇后が天皇遺愛の品を 東大寺に献納したことにより北倉に収蔵され今日に至っています。

この校倉造りの倉庫には ほかにも 四弦琵琶,四弦阮咸(げんかん),七弦琴(きん),十二弦新羅琴,六弦和琴(わごん),大破した竪型ハープの箜篌(くご)があり,この他に箏に似た二十四弦瑟(しつ)の残欠などが残されているそうです。

この五弦の琵琶はインドが発祥とされ,中央アジア天山南路(西域北道)のほぼ中央で栄えたキジル(亀茲)国,現在のクチャ(庫車)を経由し,北魏に入り,唐を経由して日本にもたらされたとされています。

私はこの『螺鈿紫檀五弦琵琶』の画像に丁寧にコンパスをあててみたことにより、非対象性( アシンメトリー )が調和した見事なバランスで製作されていると理解しています。

ともあれ グスレという弓奏楽器を考察することで 響かせる条件をととのえるために『ねじり』が用いられていることが 皆さんに理解していただければ幸いだと私は思います。

これらの経験をするたびに 私は本当に弦楽器の世界は奥深いと感じます。

この投稿は以上といたします。

 

2016-8-04    Joseph Naomi Yokota

 

弦楽器の鑑定について

● 本物の弦楽器を見分ける方法

1.   “オールド弦楽器” の 特徴について
2. コーナー部差異の検証実例
3. パティーナ( Patina ) 加工について


4.   表板、裏板のふちの特徴を知るには


5.  ヴァイオリン属と 改変の歴史

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  Niccolò Paganini ( 1782-1840 )
1827年7月12日( 木曜日 )プログラム

イタリア・ジェノヴァ 生まれの パガニーニは ナポレオンの妹のエリーザ・バチョッキ( Elisa Baciocchi ) が 1805年にトスカーナ大公妃として設けたルッカの宮廷における独奏者として演奏活動をはじめます。

そしてナポレオンが失脚するとパガニーニは独奏者としての活動をはじめました。彼は 1809年より北イタリアからはじめた演奏会の開催場所をイタリア全土にひろげました。

その後の 1828年にはウィーンでも成功をつかみ、ついでプラハ そしてドイツ各地で開催した後である 1831年には 3月から4月にかけて有名なパリ・デビューを成功させ 5月にロンドンに渡り翌年にかけて イギリス、スコットランド、アイルランドでも大成功をおさめました。

 

 

 

1848年  :  ウィーン体制が崩壊しヨーロッパの不安定化が進みます。

たとえば イタリアでは 1861年にヴィットーリオ・エマヌエーレ2世がイタリア統一をおこない、プロイセンは 鉄血宰相ビスマルク( 1815-1898 )の指導のもとクルップ社の鉄鋼製品( 鉄道、大砲 )を背景として 1866年の普墺戦争に勝利して 1867年に北ドイツ連邦に領土を拡大します。

そしてその後 の普仏戦争により 1871年には ワーグナーを擁護するとともにノイシュヴァンシュタイン城を建設させたルートヴィヒ2世( 1845 – 1886 )のバイエルン王国( Bavaria )やフランス領だったロレーヌ・アルザスを併合してドイツ帝国が成立しました。

また 1842年にアヘン戦争に勝利したヴィクトリア女王( 1819 – 1901 、在位 1837 – 1901 )のイギリスも植民地拡大をすすめ大英帝国を構築し繁栄します。 こうして帝国主義を国是としたヨーロッパ列強( ドイツ、イギリス、フランス、イタリア、オーストリア、ロシア )が世界地図を分割していったことで『 諸戦争を終わらせる戦争( War to end wars )』と言われた1914年の第一次世界大戦( 1914 – 1918 )が発生することになりました。

 

正しさを競うと戦争が起きますが、美しさを競うと感動が生まれ、人が幸せになります。奇異な表現かもしれませんが・・ 私は、古の弦楽器制作者が究極に求めたものは  “The violin is a singing instrument, not a stringed instrument.” ということではないかと思っています。

そして彼らの思想の根底をながれていたのは、「美」や「調和」「利他の心」であったと信じています。

しかし、残念ながら それは1800年代の半ばを境とするかのようにして薄れていったようです。

STRADIVARI’S FABLED “MESSIAH” THREE CENTURIES ON: THE MOST CONTROVERSIAL VIOLIN IN HISTORY?

It was donated to the Ashmolean Museum in 1940 by the firm of W.E. Hill & Sons to become a benchmark for future makers.


The world’s most valuable violin? The Messiah Stradivarius
0:57 ” 1716 ‥ It is the only as new Stradivarius ‥”

Violin   1854年頃

●  Eugène-Auguste Ysaÿe ( 1858-1931 ),  Liège / 1886 ‘Royal Conservatory of Brussels’  / 1918 Cincinnati  /  Brussels :   Violinist

●  Jenő Hubay ( 1858-1937 ),  Pest / Berlin / Paris / 1882 Brussels / 1886 Hungary, ‘Budapest Quartet’ / Hubay’s main pupils Joseph Szigeti.   :   Violinist

▶  1870年  Großer Musikvereinssaal( Wien )1680席,  48.8m  ×  19.1m  (  H 17.75m  )

1861年 Wilhelm I ( 1797 – “1861 – 1888”  / “Deutscher Kaiser 1871 – 1888” ) : Otto von Bismarck ( 1815 – 1898  / “Eiserner Kanzler 1862 – 1890″ )

▶  1870年9月2日 普仏戦争
[ 投降したナポレオン3世とビスマルクの会見 ]

Napoléon III ( 1808-1873 / 1848 -“1852 -1870” )

▶  1884年  Neues Concerthaus – “Leipzig Gewandhaus ”

 

 

 

Violin   1854年

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

● 響胴の観察ポイント


Hendrik Jacobs (1639-1704)     Violin,  Amsterdam 1690年頃

真の意味で‥ 完成度が高いヴァイオリンなどの弦楽器は その響きと操作性を達成するための工夫がなされています。

そこで 私は、ヴァイオリンや チェロで それを「 識別 」する際には 響胴低音側の 肩口から観察をはじめます。

Giovanni Battista Ceruti ( 1755-1817 )
Violin “Ex Havemann”,  Cremona 1791年

Giuseppe Antonio Rocca ( 1807-1865 )
Violin, Torino  1845-1850年頃

Giuseppe Leandro Bisiach ( 1864-1945 )
Violin,  Milano 1910年

Nicolas Lupot ( 1758-1824 )
Violin,   Paris  1807年

その参考例として 4台のヴァイオリンを並べましたが、観察ポイントは 下図の 点A、点Bの辺りです。

では、拡大写真でご覧ください。

そして これらのポイントは、チェロにおいても検証が可能です。

Domenico Montagnana ( 1686-1750 )
Cello,  Venezia  1733年頃

Old Italian Cello,  1680-1700年頃
(  F 734-348-230-432 / B 735-349-225-430 / Stop 403 / ff 100  )

Antonio Stradivari (ca1644-1737 )
Violoncello,   “Stauffer – Ex Cristiani”   Cremona  1700年

ヴァイオリンや チェロの響を生みだす響胴は木製の箱ですから、共鳴現象を誘発する 表板などの瞬間的な「 緩み 」は、正中線を挟んだ左右の非対称性や 弦の張力差による「 ねじり 」により発生していると考えられます。

私が 表板低音側の 点A、点B としたポイントは 裏板側の軸が回り込むための加工で、完成度が高い弦楽器であれば “意図的” な痕跡を確認できます。

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