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○  オールド・ヴァイオリンの製作技法 ( How to make “High performance stringed instruments”. )

▶   1.  弦楽器製作者や、演奏者が忘れたこと

    2.  弦楽器の”ねじり”設定

▶   3.  渦部( Volute )の摩耗加工について

▶    4.  ヘッド部とネック部、響胴の連携設定

▶    5.   渦部( Volute ) とペグボックス部の”境界線”について

▶    6.  ペグ組による機能設定

▶    7.  ペグボックス内側上端部について

▶   8.  ヘッド部と”響き”の因果関係

▶   9.  ヘッド背面の 不連続面設定について

▶  10.「螺鈿紫檀五弦琵琶」の”工具痕跡”が意味することについて

▶  11.  ヘッド下端部の役割について

▶  12.  “Nut”の基本条件

▶  13.  響胴に生じる”回転軸”について

▶  14.  弦楽器が”テンセグリティ構造”であるということ

▶  15.  バスバーについての考察

▶  16.  弦楽器内部の 鍛造鉄釘について

○  モダン弓の製作方法が “簡略化”された時期と、その後について

○  “伝承”が修正されるべき時が来ています。

○『 ヴァイオリン製作 』という仕事について

○  私は 弦楽器製作者を目指す人に “デッサン” を推奨します。

○ ”不安定( 自由度 )”によって得られる豊かさについて

○  ヴァイオリンや チェロの、豊かな響きについての考察

○  『 巾接ぎ( はばはぎ ) 』で製作されたチェロが、教えてくれること。

○  ヘッドは “ネック端上の構築物”であるということ

○「螺鈿紫檀五弦琵琶」の “工具痕跡” が 意味することについて

○  ルネサンス期までの “比率”が意味すること

○  弦楽器に用いられる”木材”について( 指板材の失敗例 )

○  弦楽器のヘッド端に与えられた役割について

○   スクロール基礎部のキズについて

 

○    弦楽器製作者として ペグホール位置について思うこと

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○  “オールド弦楽器”の 特徴について

○  オールド・ヴァイオリンのコーナー側線角度は 75%以上の確立で傾斜させてあります。

○  コーナー部側線角度の自由さは どこからくるのでしょうか?

○  弦楽器のコーナー部には “音響技術”が 集積されています。

  コーナー部差異の検証実例

○  パティーナ( Patina ) 加工について

○  表板、裏板のふちの特徴を知るには

〇  弦楽器を研究し見出したこと ( ネック部についての考察 )

○  弦楽器を研究し見出したこと( 誤った修理事例について )

 

○  弦楽器を研究して見出したこと。( スクロール基礎部キズについて )

○   弦楽器を研究して見出したこと。( ペグボックス内側上端部について )

〇  弦楽器の性能を確認する方法






○   弦楽器の鑑定について

Antonio Stradivari ( c1644-1737 ) violin 1699年 Auer - V L改訂版 高等学校 物理Ⅰ - 数研出版株式会社 平成23年12月印刷 - B L

 

【  “オールド・チェロ” の 特徴について 】
【  弦楽器において非対象が 常識だった時代 について  】
【  “バイオリンの秘密 “を生んだ 複雑な音響メカニズム  】
【  グスレという弦楽器について  】
【  ヴァイオリンの誕生につながった重要な技術  】
【  本物の弦楽器を確認する方法  】

 

○   弦楽器製作における 失われた情報について‥はじめに

Violin Made in West Germany - Antonius Stradivarius 1713 - 1950年代 - 5 LUmgegend von Flensburg gebraucht Bredebro 1909 Verlag Th Thomson Flensburg - A L

 ピアノの弦数について
『 オールド・ヴァイオリン 』の時代と 自然科学

  弦楽器製作における 失われた情報について ‥ その確認方法
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○   あなたの楽器と ビニールテープ 0.4g を使って 『 オールド・バイオリン 』の響きを疑似体験してください。

sandro-asinari-violin-2000%e5%b9%b4-11-lVIENNA micro-CT LAB - D L

   弦楽器製作者として ペグホール位置について思うこと

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○  
非対称楽器であるバイオリンの “名器的響き” を楽しんでください。

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○   あなたは 三角フラッグ現象を ご存じでしょうか?

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○   自作弦楽器

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弦楽器の『響』の話

ヴァイオリンと能面の類似性について    –   前編
ヴァイオリンと能面の類似性について    –   後編

● 立体的形状により剛性を高める技術について
● 18世紀の音楽ホール事情
● 残響と干渉について
パイプオルガンの 『音の数』について
● ピアノの弦 ( ミュージックワイヤー) の本数 について

 

4 - Bb L
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○   更新前の 2015年までの  “自由ヶ丘ヴァイオリン” ウエブサイト

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弦楽器の”巾はぎ材”についての考察

ヴァイオリンや チェロの 豊かな響きについて知りたいと熱心に調べてみても、ルネサンス以前は弦楽器に関する直接的な資料は 楽器以外ではほとんど残っていません。

たとえば 13世紀では カスティーリャ王国の アルフォンソ10世の宮廷で出版された頌歌集に、挿絵として何種類かの弦楽器があるのを確認できるくらいにとどまります。

聖母マリアの頌歌集 (Las Cantigas de Santa Maria)1221年~1284年頃

そして、15世紀になると オランダ、ツヴォレ出身で フランス宮廷で活躍したアンリ・アルノー( HenriArnaut de Zwolle ca.1400 Zwolle–1466 Paris)の「楽器の設計と構造に関する論文集」などが出てきます。

Henri Arnaut de Zwolle(ca.1400, in Zwolle-1466 in Paris)

ただし 残念なことに、この資料は 楽器においての比率に関しては意味深いものですが、それ以外の弦楽器の特質には 踏み込んでいません。

Henri Arnaut de Zwolle(ca.1400, in Zwolle-1466 in Paris)

また、ヴェネツィアの音楽家で器楽に関する重要な論文の著者となった Silvestro di Ganassi dal Fontego(1492-1565)が、1542年に Viola da gambaに関する研究書として出版した”Regola Rubertina”と、1543年刊の”Lettione Seconda”にも、振動比に関して興味深い事柄があらわされています。

Silvestro di Ganassi dal Fontego(1492-1565)

Silvestro di Ganassi dal Fontego(1492-1565)Venice, 1543年頃

しかし、この資料も比率に関しては素晴らしいのですが、弦楽器の具体的特質については ごくわずかな知見が得られるだけです。

結局、現存する楽器を細かく検証する以外に 製作に関しての具体的な知識を得る方法は見いだせませんでした。

そのため、私は弦楽器制作者として、ルネサンス期を中心に ヴァイオリン属だけでなくヴィオールや リュート、マンドリン、ギターなども含めた研究により、いくつかの仮説をたててみました。

ここでは、そのなかでも特に大切と考える『巾はぎ材』の使用について少しお話したいと思います。

●『巾はぎ ( 平はぎ )材』が用いられた弦楽器について

表板、裏板を作るために直径60~70cm以上の原木が必要なチェロだけでなく、小さいので材木が入手しやすいヴァイオリンでも、ロワー・バーツ端や アッパー・バーツ端に別の板を接着した『 巾はぎ( 平はぎ)材』で製作された弦楽器がいくつも残されています。

 

●1  Antonio Stradivari(ca.1644-1737) Violin, “Tartini” 1715年

このヴァイオリンは、ヴァイオリン・ソナタ『悪魔のトリル(Devil’s Trill Sonata)』で知られるジュゼッペ・タルティーニ(Giuseppe Tartini1692-1770)が使用したとされるストラディバリウスです。

個人的なことで恐縮ですが、このヴァイオリンのおかげで 私は巾はぎ材』に着目するようになりました。

●2  Andrea Guarneri(1623-1698) Violin, Cremona 1662年

●3  Jacob Stainer(1617-1683) Violin, Absam-Tirol 1665年

●4  Nicolò Amati(1596–1684) Violin, Cremona 1669年

●5  Shop of Amati ( Smithsonian Institution ) Violin 1670年頃

●6  Francesco Rugeri(ca.1645-1695) Violin, Cremona 1675年頃

●7  Francesco Rugeri(ca.1645-1695) Violin, Cremona 1680年頃

●8  Antonio Stradivari(ca.1644-1737) Violin, “Ex Stephens – Verdehr” 1690年

●9  Antonio Casini(1630-1690) Violin, Modena 1690年頃

さて、このヴァイオリン裏板は『巾はぎ 材』ではなく、楓材の一枚板です。でも 何もしていない訳ではありません。

なんと・・・8枚組の『巾はぎ』で作られた表板を支えています。

●9  Antonio Casini(1630-1690) Violin, Modena 1690年頃 

●10  Francesco Rugeri(ca.1645-1695) Violin, “anno 1672” 1690年頃

●11  Girolamo Amati II(1649-1740) Violin, Cremona 1693年

そして、フェラーラのAlessandro Mezzadri (fl.1690-1740)は 裏板を4枚接ぎで作りました。

●12  Alessandro Mezzadri ( fl.1690-1740) Violin, Ferrara 1697年

●13  Antonio Stradivari(ca.1644-1737) Violin, “Thoulow” 1698年

●14  Giovanni Grancino(1637-1709) Violin, Milan 1702年頃

●15  Antonio Stradivari(ca.1644-1737) Violin, Cremona 1705年頃

●16  Antonio Stradivari(ca.1644-1737) Violin, “La Cathédrale” Cremona 1707年

●17  Antonio Stradivari(ca.1644-1737) Violin, “Stella” 1707年

●18  Girolamo Amati II (1649-1740) Violin, Cremona 1710年

●19  Vincenzo Ruggeri(1663-1719) Violin, Cremona 1710年頃

●20  Antonio Stradivari(ca.1644-1737) Violin, “De Barrou – Joachim” 1715年

●1  Antonio Stradivari(ca.1644-1737) Violin, “Tartini” 1715年

●21  Antonio Stradivari(ca.1644-1737) Violin, “Smith” 1727年

そして、ストラディヴァリウスの 裏板5枚接ぎがあります。

●22  “Guarneri del Gesù” Bartolomeo Giuseppe Guarneri(1698-1745) Violin, “Ex Zukerman” 1730年頃

●23  Camillo Camilli(ca.1704-1754) Violin, Mantova 1735年頃

●24  “Guarneri del Gesù” Bartolomeo Giuseppe Guarneri(1698-1744) Violin, Cremona 1737年

 

●25  Carlo Bergonzi(1683-1747 ) Violin, “Appleby” 1742年頃

●26  “Guarneri del Gesù” Bartolomeo Giuseppe Guarneri(1698-1744) Violin, “de Bériot”  1744年

●27  Camillo Camilli(ca.1704-1754) Violin, Mantua 1750年頃

●28  Lorenzo Storioni(1744-1816) Violin, Cremona 1769年頃

●29  Tommaso Balestrieri(ca.1735-ca.1795) Violin, Mantua 1770年

●30  Giovanni Baptista Guadagnini(1711–1786) Violin, “Kochanski” Turin 1774年頃

●31  Interesting 18th century violin

●32  Giovanni Battista Ceruti(1755-1817) Violin, Cremona “Ex Havemann” 1791年   BOL 355mm-163mm-113mm-208mm / “Wurlitzer collection” (1931年)

このように 接ぎ材の大きさは色々ありますが、ヴァイオリンの裏板を多数観察すると、ロワー・バーツ端やアッパー・バーツ端に別の木材が接着されたものはいくつも確認できます。

また、『巾接ぎ』は 表板でも同様にみられます。

Carlo Bergonzi(1683-1747) Violin, “Appleby” 1742年頃

Andreas Ferdinand Mayr(1693-1764) Violin, Salzburg 1750年頃

Tommaso Carcassi( worked 1747-1789) Violin, “EX STEINBERG” Firenze 1757年頃

Giovanni Battista Ceruti(1755-1817) Violin, “Ex Havemann” 1791年

これらを観察すると、『巾はぎ』で製作されたヴァイオリンや チェロは 表板と裏板が『対』として考えられていることが見えてきます。

Antonio Stradivari(ca.1644-1737) Violin, “Lipinski-Tartini” 1715年

Carlo Bergonzi(1683-1747) Violin, “Appleby” 1742年頃

Giovanni Battista Ceruti(1755-1817) Violin, “Ex Havemann” 1791年

私は、『巾はぎ』で製作された弦楽器は、そうでないものと比べて より音響的にこだわって製作されたと考えています。

なぜなら、1300年ほど前に製作された 五弦琵琶の最高傑作とされる「螺鈿紫檀五弦琵琶」( 響胴の幅 30.9cm )まで『巾はぎ材』の使用は容易に遡れるなど、多くの弦楽器でそれを見ることができるからです。

「螺鈿紫檀五弦琵琶」700年~750年頃(全長108.1cm、最大幅30.9cm )

●「螺鈿紫檀五弦琵琶」の “工具痕跡” が 意味することについて

“Vihuela de arco” ( around the mid-16th century ) The collection of the Encarnación Monastery in Ávila.

1500年代中頃の製作とされる、スペイン、アビラの修道院にある “Vihuela de arco” の表板は 5枚接ぎのようです。

Antonio Stradivari(ca.1644-1737) Guitar, 1679年 & 1680年

これは、ストラディヴァリが製作した有名なギターですが、どちらの裏板も 4枚接ぎで製作されています。

   Mandolin, Antonio Stradivari(ca.1644-1737) 1700年~1710年

そして、彼は その後にマンドリンも作りました。

Andrea Guarneri(1626-1698) Viola, “Josefowitz” 1690年頃

Andrea Guarneri(1626-1698) Viola, “Primrose” 1697年

Matthias Albani(1621-1673) Viola( 436mm )

Giovanni Francesco Leonpori( The work of a little-known 18th-century maker ) Viola, Rome 1762年頃

また、『巾接ぎ』で製作されたビオラは、どれも知る人ぞ知る・・・ といった名器です。

“Brothers Amati”( Antonio Amati ca.1540-1607 & Girolamo Amati ca.1561-1630 ) Cello, Cremona 1622年

Steven Isserlis

そして、チェロの『巾接ぎ』は 弦楽器製作者にとって、ある意味で頼りがいのある加工技術だったようです。

Antonio Stradivari(ca.1644-1737) Cello, “Marquis de Corberon” 1726年

Matteo Goffriller(1659–1742) Cello, Venice 1710年頃 ( Paris, “COLLECTIONS DU MUSÉE” )

Matteo Goffriller(1659–1742) Cello, Venice 1710年頃 ( Paris, “COLLECTIONS DU MUSÉE” )

https://fb.watch/ihSOpziGjq/

●21  Antonio Stradivari(ca.1644-1737) Violin, “Smith” 1727年

『巾接ぎ材』が使用された理由を「材木幅が狭くてたらなかった。」と説明をされる方がいますが、チェロや ギターのような幅の広い弦楽器だけでなく、わずか20cm~21cm位しかないヴァイオリンでも、ダブルで幅接ぎをしてあるものがあり、その最外部の木理を観察してみると、後世の修復による可能性がほとんど無いという状況証拠は重要だと思います。

このように考察した結論として、私は ヴァイオリンや チェロの『巾はぎ』は、豊かな響きを生み出すための“木伏”として用いられたと判断しました。

もっと言えば、『巾はぎ材』で製作された弦楽器は、その境地まで達した人間の豊かさを象徴しているように 私には思えます。

実に、すばらしい事ではないでしょうか。

 

●  『 巾接ぎ( はばはぎ ) 』で製作されたチェロが、教えてくれること。

 

2022-2-07       Joseph Naomi Yokota

つり合いという現象

私は ルネサンス期の1500年代中頃に誕生した ”オールド・ヴァイオリン” は 1650年から1750年頃ヨーロッパ各地で盛んに製作されたものの、 1800年頃にはその製作者が激減し‥ ついには絶えてしまったと考えています。

そして その状況は、イタリアの ヴァイオリン博物館に遺された ストラディヴァリの木型( モールド )や、型紙などの製作補助具の扱われ方が象徴していると思っています。

これらは、最近も新しい器材を用いた丁寧な再計測がおこなわれており 考古学的な資料としては大切にされてはいますが、実際の弦楽器製作には それほど活用されていません。

ストラディバリウスなどの “オールド・ヴァイオリン”の名器は、音の立ち上がりが俊敏で 倍音の響きがとても良く、指板上だけではなくフラジオレットなども含めて指向性を持った響が作り出せます。そして演奏者自身の耳でも 音程や響きの輪郭が捉えやすく、弾き方によったヴァリエーションが工夫しやすいため豊かな色彩感を生みだすことが可能です。

そのような “オールド・ヴァイオリン”ですので、弦楽器製作者や演奏者にその特質について尋ねると『 音が生みだせる 』という要素に意識が向きがちのようです。

しかし、私の結論は違いました。
私は “オールド・ヴァイオリン” の特質は 端的に言って『 演奏者が随意に音を止められる 』という操作性こそにある思っています。

1700年代の弦楽器製作者にとって、演奏時に レスポンスが良いことはとても大切で、その探求は 最終段階で『 音の始末が良い‥ 』という高難度の演奏が生みだせる操作性能にまで至ったと考えられるからです。

この仮説で 重要な意味をもつのが、ストラディヴァリが 弦楽器を製作するために使用した木型( モールド )や、型紙などに製作時の基準として刻まれた 印しや括弧、あるいは 同心二重括弧 (  Concentric double parenthesis ) などの読み解きです。

Stradivari’s moulds

Form G  Length  347  UB  161  CB  103  LB  201

Antonio Stradivari made his violins by utilising a thick ca.14 mm wooden mould or ‘form’, to which the four C-bout corner blocks, together with the top and bottom blocks, were lightly glued, and around which the thin lengths of rib were shaped and then strongly glued to the blocks. Simplistically, once all the glue had dried, the ‘garland’ of blocks and ribs could be carefully detached from the inner mould, and the front and back plates could then be attached to the garland to create the soundbox. Although Stradivari’s moulds, made of walnut wood, have varying lengths, widths and proportions, these variations are often by no more than a few millimetres and sometimes the difference between a particular measurement on one mould and the same measurement on another is just one millimetre; for example, the three bout-width measurements of the P mould, and those of the PG mould, are identical, while the body lengths differ by just one millimetre: P mould 343.5 mm; PG mould 344.5 mm (Stewart Pollens’s measurements).

Almost all the moulds bear identifying letters, inked or incised in block capitals: for example, the letters P, S, and T, G, PG, and MB. Because there are so few extant documents known to be written in Stradivari’s hand, it is not certain which, if any, of these mould letters were drawn by him. Some of the moulds have dates, also inked or incised into the surface of the wood: the mould marked SL is dated  November 9, 1691 (incised), and one of the two moulds marked S is dated September 20, 1703. The two B moulds are dated June 3, 1692 and December 6, 1692 (both incised), while the PG mould is dated June 4, 1689 (also incised).

弦楽器の音響メカニズムは難解ですが、これらを少し読み解くとすれば‥ まず、上図の点 P が “オールド・ヴァイオリン “の裏板にみられる『 セントラル・ピン 』とほぼ一致するという状況証拠から、点 P を 裏板におけるつりあいの中心点として印されていると考えることができます。

Jacob Stainer ( ca.1617-1683 )  Violin,   Absam ( Tirol )

Underneath the parchment covering the center joint of the back of the violin by Jacob Stainer, five marking points are hidden.Their distance from the lower end of the body can be measured precisely.

ヤコブ・シュタイナーによる このヴァイオリンの裏板では、中央部を縦に覆う羊皮紙の下に、5つのマーキングポイントがあります。余談ですが  現在では、それらと響胴の下端からの距離は正確に測定されています。

Nicolò Amati ( 1596–1684 )  Violin,   “The Brookings”   1654年

“Guarneri del Gesù”  /  Bartolomeo Giuseppe Guarneri ( 1698-1744 )

また、グァルネリ・デル・ジェズ や ニコロ・アマティのヴァイオリンのなかには 裏板中央部のピンだけが埋め込んであるものが見られるので、それは『 セントラル・ピン 』、『 背部ピン ( Dorsal Pin ) 』と呼ばれています。裏板の表面に達するまで円錐状の穴を穿った上で、埋め込まれた木片は 皆さんにとっても興味深いのではないでしょうか。

Nicolò Amati ( 1596–1684 )  Violin,   “The Brookings”   1654年

さて、弦楽器の音響メカニズムの読み解きでは『 セントラル・ピン 』以外にも、下図のように 『 同心二重括弧 』から同心円を導きその中心に点 C を置き 点 P との距離の意味や、コーナーブロックとの関係を検討することもできます。

Antonio Stradivari ( ca.1644-1737 )  Violin,  “San Lorenzo”  1718年

また、それらの モールド と対応している可能性がある楽器‥ この ヴァイオリン製作用木型 “Form G” の場合は、1718年製の ストラディバリウス “San Lorenzo” などと照らし合わせて 駒位置や 魂柱位置の条件設定も学ぶことも可能です。

 

しかし 残念なことに、 現代では このような 音響システムに関する研究はおざなりにされ、”販売”を目的とした “製品”としての “現代ヴァイオリン”が盛んに製作されています。

そのような昨今ですので、ヴァイオリンネック材として ヘッド部がこの状態まで加工されたものを インターネットを検索することにより、私たちは ¥5,000 以下で購入出来たりします。

まあ‥ 機械加工のものや「工場制手工業」タイプなど出来はいろいろユニークですが‥ 。

また、下写真の製作学校系の人達のように、敢えてネック部が全体価格の20%だと換算すると ヘッドを削りあげた状態でそれが おおよそ¥100,000 を超えると考えられる製作者も 大勢います。


しかし残念なことに 音響上の特性において、この両者にほとんど差はないのではないかと 私は思っています。

そこで まずこの点に関する資料として、 レオポルト・モーツァルト著の書籍( 翻訳版 )を紹介させてください。

レオポルト・モーツァルト( 1718-1787 )は 息子のヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトが誕生した年である 1756年の秋に『 Versuch einer gründlichen Violinschule( ヴァイオリンの基礎的入門の試み ) 』を出版しました。

この書籍は 日本でも 塚原晢夫氏が翻訳したものが 全音楽譜出版社から1974年に『 バイオリン奏法 』として出版されています。

ところがこの翻訳底本は 1951年に出版されたクノッカーの英語版の改訂版であったため、私たちの間では ながらく原典版の翻訳が待ちのぞまれていました。

そうして時が経ちましたが‥‥、 今年5月に 同じ全音楽譜出版社から 原典版である「初版」がついに レオポルト・モーツァルト『 ヴァイオリン奏法 』新訳版( ISBN978-4-11-810142-2  C3073  ¥3800E )として出版されました。

これは音楽学の久保田慶一氏が 初版( 1756年 )、第2版( 1770年 )、第3版( 1787年 )、第4版( 1800年 )などを検証した上で 「初版」を底本として翻訳したものだそうです。

献呈文に続く「はじめに」の部分に書かれたあいさつ文の署名は
” ザルツブルク、1756年7月26日 モーツァルト “ となっており、そのあとに『 ヴァイオリン奏法への導入 』として 第1節が  『 弦楽器、とりわけヴァイオリンについて 』のテーマで 7項目に分けて並べられていて(本文 P.1~P.11)、 全文は 295ページです。

[  Small size violin of Wolfgang Amadé Mozart  ]
Andreas Ferdinand Mayr  1746年頃
Worked for the Salzburg Court ( 1720-1764 ).

少し長くなりますが、18世紀半ばの弦楽器製作を考証するために この翻訳本の一部をここに引用させて頂きたいと思います。

【  第1節    弦楽器、とりわけヴァイオリンについて  】

第3項目

Füssen trained maker.  

(中略)‥‥  ヴァイオリン製作者は、カタツムリのような優雅な曲線や 巧みに彫られたライオンの頭などを最後に装着して、楽器を完成させる。

彼らは楽器本体よりも こうした装飾にしばしば手間をかけるのだ。そのためにあろうことか、ヴァイオリンは 外面的な虚飾という、俗に言うごまかしの犠牲になってしまうのである。


Salzburg,  1713年

 

Ole Bull ( 1810-1880 ) Violin / West Norwegian Museum of Decorative Art

鳥を羽でもって、馬をブランケットでもって評価する人は、きっとヴァイオリンも、色艶やニスの色でもって判断して、本体部分の状態を詳しく調べたりはしないであろう。

またこのような人たちすべてが、頭脳ではなく、 見た目 を判断基準にしているのである。ぼさぼさ髪のカツラをかぶったところで、生身の人間の頭がよくならないのと同じように、美しく彫られたライオンの頭がつけられても、ヴァイオリンの音はよくならないだろう。

こうは言っても、多くのヴァイオリンは見た目のよさだけで評価されるのである。身なりのよさや 金を持っているだけで、そして華やかで巻き毛のカツラをかぶっているだけで、多くの人々は、やれ学者だの、助言者だの、医者だのと思ってしまうのである。

それにしても、私は何の話をしているのだろうか!うわべの見かけだけで判断してしまう習慣を嫌うあまり、脱線をしてしまったようだ。

第5項目

とりわけ嘆かわしいことは、今日の楽器製作者たちが、自分たちの仕事に対して あまり努力していないことである。注( 3 )

では何が必要なのだろうか? ひとりひとりが 自分なりの考えや 想像で仕事をしていて、楽器の諸部分についての確かな基準を持っていないのだ。

例えば、側板が低い場合には、胴は高く湾曲させなくてはならない、しかし反対に、側板が高くても、表板を少しだけ湾曲させて高くするだけで、音の通りがよくなる

【  所有者の依頼により 側板の高さを増やした事例  】

注( 3 )
楽器製作者は今日でも たいていは生活のために仕事をしている。ある点で彼らは批判されるべきではないだろう。それというのも、人々はいい仕事を求めるが、それに対して多くを支払おうとしないからだ。

―― 要するに、音は側板の高さからは それほど悪い影響は受けないという原則を、ヴァイオリン製作者は 経験から得ているわけである。

さらに裏板となる木は 表板の木より強くなくてはいけないこと、そして表板も裏板も周辺よりも中央部分で厚くなっていること、さらに次第に薄くなったり厚くなったりするにしても、木の厚みにはある一定の均一性がなくてはならないことを知っていて、このようなことを 外側カリパス( 訳注:厚みを計測するはさみ尺のこと )を使って検査するのである。

● どうして ヴァイオリンは ひとつとして同じではないのだろうか?

●  どうして あるヴァイオリンは大きな音が出て、別のヴァイオリンは小さな音しか出ないのであろうか?

● どうして ある楽器は、いわば鋭くとがった音がし、別の楽器の音は響かないのだろうか?

●  荒々しく叫ぶような音がしたり、悲しく押し殺したような音がするのは、どうしてなのだろうか?

これ以上 問うのはやめよう。

これらすべては 楽器製作者のやり方の違いに起因しているのだ。ある製作者は目分量で 高さや厚さなどを決めていて、十分な確固とした原則に立っているわけではないのである。

そのために、ある人にはうまくできるのに、別の人には まずい結果に終わるのである。このことこそ、音楽から 多くの美しさを現実に奪っている諸悪の根源なのである。

第6項目

(中略)‥‥ それよりも、私たちがいい楽器にあまりに出会わない、そして出来映えも不揃いで 音質もさまざまであるということを、もっと真剣に考えた方がいいのではないだろうか?

そうすれば 学者先生たちの研究の力を借りて、もっと進展だってできるであろう。

○  例えば、どんな種類の木が弦楽器には適しているのか?
○  そのような木をどうすればうまく乾燥させられるのか?
○  製作にあたって、表板と裏板とで木の年齢が違うとうまくいかないのではないだろうか?

これは 1998年にロンドンで Peter Biddulph さんが出版した ジュゼッペ・ガルネリ( 1698-1744 )の原寸大写真集 ” Giuseppe Guarneri del Gesu “の 161ページから引用させていただきました。

年輪年代学の研究者である ピーター·クラインさんが 25台の ガルネリ・デル・ジェスのヴァイオリン表板を研究した結果を表にしたものです。

現代ではヴァイオリンを製作する場合‥ 材木のスプルースを上からみて放射状に切断して、その板の外側どうしをジョイントすることで左右対称の木組みが なされているために、表板の年輪は左右で違ったとしても数本以内で製作される場合がほとんどです。

ところが ピーター·クラインさんの研究では、これら25台のガルネリ・デル・ジェス( ロワー・バーツ部での左右の年輪合計は 131本から 260本です。)のうち 16台が ジョイントされた左右の年輪数が 10本以上( 10~63本 )も違うことが指摘されています。

これに 年輪年代学 の材木の時代考証をあわせて考えると、ガルネリ・デル・ジェスは 積極的に” 木伏技術 ” として左右が非対称の表板によってヴァイオリンを製作したと考えられます。

私は、ジュゼッペ・ガルネリは 表板に” 木理 ”を考慮して別々の時期に伐採された木材をジョイントした” 疑似的な一枚板 ”を 強いねじりを生みだすために使用していたと思っています。

○  どうしたら 木の気孔はうまく埋めることができるのだろうか?
○  そのために内側にもニスを塗るべきなのかどうか、そして どのようなニスが適しているのか?

○  さらに大切なこととして、表板、裏板、そして側板がどのくらいの高さや厚さであればいいのだろうか?

第7項目

とにかく研究熱心なヴァイオリン奏者というのは、弦、上駒、魂柱を改良しては、自分の楽器をできる限りいいものにしようと努力している。

ヴァイオリンの胴が大きければ、確かに太い弦がいい効果を生むだろう。反対に小さければ、細い弦を張らなくてはならないだろう。

魂柱は高すぎても低すぎてもいけないし、駒の足の下の少し右側に置かなくてはならないだろう。魂柱を正しく置くことのメリットは決して小さくない。

かなり大変ではあるのだが、ときどき魂柱の位置を変えるべきだろう。そのつどすべての弦でいろんな音を出して、楽器の響きを調べ、いい音の状態が見つかるまで、これを繰り返し続けてみるとよい。

駒もまた大いに役にたつ。例えば、音が荒々しくて刺すような、言うなれば、鋭くて、心地よく響かないときには、低い、幅広の、いくぶん厚めの、とりわけ下部を少し切り抜いた駒を使うと、少しはましになる。

音そのものが弱く、静かで、沈む場合には、薄い、あまり幅広でない、そしてできることなら、下方だけでなく中央部も大きく切り抜かれた駒を使うとよくなる。

しかも このような駒の材料は総じて、とても木目が細かくて、気孔のない、よく乾燥した木でなくてはならない。この駒は、表板のローマ字のf形に切り抜かれたふたつの孔の間に置かれる。

 

また 音が沈まないようにするために、弦が固定されエンド・ピンにつけられた、一般には狩人たちの言葉で「緒留め」と呼んでいるテールピースを置くにしても、下方の細くなった端が ヴァイオリンの表板から突き出したり、はみ出したりしないよう、表板と同じ高さになるようにうまく調節しなくてはならない。

最後に、自分の楽器はいつもきれいにしておくように。特に演奏をはじめる前には、弦と表板にある ほこりやコロフォニウム( 訳注:松ヤニのこと )は取り除いておかなくてはならない。

ものごとがしっかりと考えられる人には、とりあえずは この程度のわずかなことで十分であろう。やがて私の望みどおりに、私のこの小さな試み( 訳注:この「ヴァイオリン奏法」のこと )を さらに広げて、すべてのことがらを 正しく規則として示してくれる人が、きっと現れるだろう。

( 引用終了 )

[  Concert violin of Wolfgang Amadé Mozart  ]
until November, 1780.
Klotz family of violin makers in Mittenwald.

私は この レオポルト・モーツァルト著『 ヴァイオリン奏法 』において、音楽家の立場から 弦楽器製作者に対し 告発文のような怒りが込められた意見や疑問が提起されているのは、現代の私たちににとっても本当に重要だと思っています。

少なくとも 1756年頃にはすでに 弦楽器製作者達のなかに『 楽器の諸部分についての確かな基準を持っていない。』実力に問題を抱えた人が増えていたことがハッキリと証言されているからです。


話しは変わりますが、これは 私が大切にしている新聞記事です。

「 過去へ 」と題されたこの記事の終わりには
そう考えると、私たちの日常はだんだん貧しくなっているようにも思える。極端な例では、あの輝かしい音を響かせるバイオリンの名器は、18世紀からあと二度と私たちの手から生まれなくなった。今後、あの音は失われてゆくだけだ。と書かれています。

ジャーナリストであり西洋音楽史の研究者でもある 梅津時比古さんは、現在 桐朋学園大学学長でもあるようですが、私はこの記事を目にしたとき『 流石‥。』と思いました。

もう 20年ほど経ちましたが、私はこの頃から ”オールド・ヴァイオリン” の音響システムは『 原則に従うことで ヴァイオリンの諸部分が相互に補完しあうバランスを礎とした仕組 』にあると考えるようになりました。

2003年 9月29日  16:45頃

そして、このように ”オールド・ヴァイオリン” の音響システムに関する検討を経た後の 2004年11月11日 に本格的な復元楽器の製作に着手しました。

Violin –  Joseph Naomi Yokota ,  Tokyo  2008年

この研究は “オールド・ヴァイオリン” や “オールド・チェロ” などを精査し、仮説を立てそれを製作に反映し‥ その結果から 再び検証と仮説を進めるもので、私は あくまで楽器としての性能の復元をめざしました。

因みに、この研究が終了したのは 2015年12月26日 でした。

“オールド・ヴァイオリン”の 音響システム

イタリア製・新作チェロの性能を”鍛造鉄釘”で改善しました。

弦楽器製作者は自作楽器に全力を傾注します。しかし、そのチェロを購入した演奏者も同様です。
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先週のことですが、2023年10月に私が販売した新作チェロの所有者さまからの強い要望で 3月25日に”鍛造鉄釘”をネックブロックに埋め込みました。
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このチェロは整備後 2026年3月27日に引き渡してあり、”鍛造鉄釘”設定での演奏会デビューは 4月19日(日曜日)にTOPPANホールで、ベートーヴェン弦楽四重奏曲 第15番 イ短調(op.132)などが最初となります。
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もちろん、私は ステージ上のチェロ奏者から 22mほど離れたホール最後部で聴きます。緊張する仕事でしたが、かなりの整備費用を承知の上で依頼してくださった演奏者の方に感謝するとともに、キャリング力の強さを演奏会場で楽しみたいと思います。
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Joseph Naomi Yokota

“BAR 黒い月”と”The Cold Song” (1982年), Klaus Nomi

ふと思い出した 1980年代の話しです。
渋谷に”黒い月”というBARがありました。

今は更地になっている東急デパート本店の向かいで、三階の銅板扉を開くと バーテンダーの梨花子さんが迎えてくれて、静かな時間がすごせました。

扉の右側にはVHSモニターがあり、無音で映像が流されているのですが 時折 音声をONにしていました。

ある日の夜、パントマイム・アーティストのジョーイ・アリアスとクラウス・ノミ( 1944-1983 )さんの 「コールド・ソング」の映像が音声ありで流れていました。彼は 強烈な印象を残し1983年にエイズにより39歳で亡くなったばかりでした。

この曲は、バロック様式の歌曲で、ヘンリー・パーセル( 1659-1695 ) が作曲した「アーサー王」( 1691年 )の中の「The Cold Song」のカヴァーだそうですが、時折 私の頭のなかでフラッシュ・バックします。

「The Cold Song」

汝は何の力か?
私を眠りの底より
起き上がらせる者とは?
しぶしぶ のろのろと
永遠の雪の寝台から
見えぬか、これ程がちがちで
ひどく年老いた姿が?
厳しい寒さにとうてい耐えられぬ…
私は殆ど動けぬ
息もできぬ
私は殆ど動けぬ
息もできぬ
どうか
どうか私を
元の凍てつくままに…
どうか私を
元の凍え死にゆくままに

 

遠くからですが、「 彼に 平安がありますように。 」祈ります。

 

 

Joseph Naomi Yokota

表板の起伏が少ないヴァイオリンに合う最良バスバーについて


November 22, 2025 / 17:39   
Weight without parts  330.0g
●  Weight without chinrest  371.1g
Total weight with chinrest  415.6g

“表板の起伏が少ないヴァイオリン”のためにバスバーを製作するのは本当にスリリングです。

当然ながら それらの作業はレスポンスや響きが直接的に確認できない、表板がはずされた状態で実行されます。

ですから、担当する人には 起伏が少ない表板に直交するバスバーの自在性のゆえに 、性能についての”構想力”がより問われることになるからです。

ともあれ、先日のことですが “表板の起伏が少ない新品ヴァイオリン”を改作して、私としての最終的な検証実験をおこないました。

① 検証ヴァイオリンの完成日 2025年11月30日
② 所有者に納品した日 2025年12月2日
③ ピアノ三重奏曲演奏会 2025年12月17日
④ 経過観察

それは、改作したヴァイオリンに弦を張って仕上げてから 3週間後に、その新品ヴァイオリンを演奏会で使用するという なかなか緊張する仕事ではありました。

Violin adaptation completed : November 30, 2025
Bass-bar height 14.8mm / Arch height 16.0mm 

December 28, 2025
これは、そのヴァイオリンが完成してから 1ヶ月後の響きです。

( ●  この投稿の最後に December 17, 2025 の昼過ぎに演奏会場で( スイッチを入れたばかりの空調機ノイズがあります。 )キャリング力を確認するために録画したものも参考として置いてあります。 )

因みに、私が このテーマに取りかかったのは2021年のことでした。この時 私は1994年製ヴァイオリンに、“27年前”に入れられたオリジナル・バスバーの交換などを依頼されたのです。

Gio Batta Morassi ( 1934-2018 ) Violin, Cremona 1994年

そのヴァイオリンは表板アーチが高さ16mmで 全体感として重く感じられ、響胴アーチも 剛性のキャラクター設定が難しい”起伏が少ないタイプ”でした。

Gio Batta Morassi( 1934-2018 )  Violin, 1994年
Bass-bar height 14.0mm  /  Weight of the top plate  81.5g ( including bass bar 4.9g )

Fingerboard  68.0g  /  Nut  1.0g
Head( after tuning peg holes ) and neck  71.0g
Total neck weight 140.0g

Weight without parts  405.0g
  Weight without chinrest  455.0g
Total weight with chinrest  521.0g

さて、少し話がそれますがこの時の視点についてお話しさせてください。

私はヴァイオリンやビオラ、チェロの音響上の特質は”共鳴( レゾナンス )”にあると考えています。それは、駆動部である弦の振動エネルギーが 従動部の”変換点”となるゾーンに留まり続けているつかの間だけ生じるものと考えられます。

駆動部である弦の振動は進行波と反射波で成立しており、下記の特徴があります。
●  P波 = 一次波( Primary wave : プライマリー波 )
速度が速く、最初に到達し、縦波であり、波の進行方向に縮んだり( 圧縮 ) 伸びたり( 膨張 )する動きをします。これは 固体、液体、気体のすべてを伝わります。
●  S波 = 二次波( Secondary Wave : セカンダリー波 )
速度が遅く、P波の後に到達し、横波であり、物質を上下に揺らす動きをします。基本的には固体のみに伝わります。

そして、従動部の”運動”では てこ原理による 振動波の増幅と、”変換点”にあたるゾーンの”ゆるみ”が生みだされています。

ですから、弦楽器においては 部位ごとの重さと”対”となるバランス、回転中心設定、回転半径、そして”力のモーメント”( 物体に加わった力が物体を回転させるときの力の大きさ )が重要と考えられます。

これらの事を念頭にオールド・ヴァイオリンなどを検証した結果、私は ペグや魂柱などのパーツを全て外した状態での標準的なヴァイオリン重量( Weight without parts )は 330g~340gであると考えていました。

●  ヴァイオリン( パーツ無し )において”対”をなす部位の重さ比率

  • ヘッド部、指板を含むネック側と響胴の重さ比は 1 : 2  ( 330gとした場合 110g : 220g )
  • ヘッド部をなす渦部( Volute )とペグボックス部の重さ比は 1 : 1  ( おなじく参考値で 18.3g : 18.3g )
  • ルネサンス期までのヘッド、ネック部と指板の重さ比は 2 : 1  ( 73.3g : 36.7g )
  • 響胴部をなす表板とそれ以外( 裏板側 )の重さは比は 1 : 2  ( 73.3g : 146.7g )

ともあれ、表板設定などにより… 絶不調に陥っていたヴァイオリンを、最良のレスポンスや響きが生じるようにとのことでしたので、私にとって この時の仕事は難問でした。
2021年 Bass-bar height 13.4mm  / Weight of the top plate 81.0g ( including bass bar 4.4g )

そして 熟慮の末に、高さ14mmであったバスバーを 高さ13.4mmのものに入れ替え、想定したような性能で仕上げました。2025年 Bass-bar height 14.8mm  /  Weight of the top plate72.7g ( including bass bar 6.1g )

それから時が経ち、ヴァイオリン、ビオラ、チェロでバスバーをいくつも製作し さらに検証を進めた結果、レスポンスや響きのキャリング力を高めるためには、やはり 高さを最大化することが重要だと確信するようになりました。

そこで 解決策として、私は ”仮想交差節”という考え方を導入しました。

2025年 November 15, 0:18  Bass-bar height 14.8mm / Arch height 16.0mm / Weight of the top plate72.7g ( including bass bar 6.1g )
It is perpendicular to the surface on the F-hole side.

Joseph Naomi Yokota  Cello, Tokyo anno 2025 /  Arch height 32.0mm / Bass-bar height 29.6mm  Antonio Stradivari  Cello,  “The Stauffer-ex Cristiani”

VIENNA micro-CT LAB  /   “Old violin”
Antonio Stradivari  Cello, “The Stauffer-ex Cristiani”, 1700年

バスバーの”大型化”は、チェリストのロンベルクが 1840年に出版した”チェロ奏法”の参照図のように、19世紀には既に ひとつの選択肢となっていました。

Method book “Violoncell Schule”, 1840年刊

Method book “Violoncell Schule”, 1839年著 / Bernhard Heinrich Romberg ( 1767-1841 )
June 26, 2024 / 12:42   I made a “bass bar” for a violin.
ところで バスバー設定は、外から確認しにくいので演奏者に問題とされることは少ないようですが、2024年にバスバーを製作したこの楽器のように、実際にはヴァイオリンやチェロの不調の原因となっている場合も多いようです。

   

チェロの実例をあげてみます。これは 1989年に東京、東五反田で受注製作されたチェロですが、演奏による表板変形破損が何度も生じ、その度に 製作工房で緊急修理や改修が加えられました。

   

それでも 不調が解決できなかったので 所有者の判断により、2024年でしたが、私にバスバー交換などが依頼されることになりました。この時にチェロに入っていたバスバーは “27年前”の1997年に作られたものでした。

また、下写真の1700年頃製作されたオールド・チェロの場合は、1986年に取り付けられたバスバーが 外から見て0.4°右回転しかしていない設定だったために、ネックとの連動が不十分で キャリング力が思わしくありませんでした。

 

そこで、2023年( 前バスバーから”37年後” )に私が 1.2°右回転のバスバーを製作して 良好な状態にもどしました。これを 外から見たイメージとなるように下に左右反転画像としてならべてみました。

     

ネックとバスバーが対応しながら響胴に”ねじり”が生じるために、バスバーが垂線方向に対して適度な角度であることが重要であることを理解していただけるのではないでしょうか。

因みに、オールド・ヴァイオリンに取り付けられたバスバーにも このように大きく右回転させた事例も存在しています。

     

このようにバスバーを大きく回転させたものは “Viol属”などで よく見られますが、”ヴァイオリン属”では19世紀になると急激に少なくなりました。それと、参考例として 他のバスバー画像も少しならべておきます。

Antonio Stradivari ( ca.1644-1737 ) Violin,  “Auer”  1699年Antonio Stradivari ( ca.1644-1737 )  Violin, “Conte de Fontana” 1702年Antonio Stradivari ( ca.1644-1737 ) Violin, “Provigny” 1716年Leopold Widhalm( 1722-1776 ) Violin,  Nurnberg‘Pietro Guarneri’ of Venice( 1695-1762 )  Violin, “Baron Knoop” 1740年Santo Serafin( 1699-1776 ) Violin,  Venice 1740年
Giovanni Battista Guadagnini( 1711-1786 )  Violin “Kleynenberg”, Torino 1783年

このような構造になっているために、弦楽器の響胴は 表板の材質やアーチ形状、F字孔の設定などと、バスバーのネック相対角度や傾斜角度 そして“厚さ”“高さ”などの剛性条件と、表板をゆるませる機能が調和する必要があり、上手くいかなかった時にはバスバー剥がれなどの不具合まで起こします。

工場製新品で販売し“1ヶ月後”に剥がれたヴァイオリンのバスバー

たとえば 下写真の”バスバーが外れた”ので、私が “12年後”に修理を依頼された、ピグマリウス”REBIRTH”リバース シリーズの 2001年製ヴァイオリンのような破損です。Pygmalius “REBIRTH” Series  Violin, 2001年 / Bass-bar thickness 6.4mm / Bass-bar height 11.6mm    

写真でわかるようにバスバー両側が完全に剥がれていて、指板下の表板ジョイント部も 140mm程にわたり開いていました。


このとき、中央ジョイント剥がれを撮影するために 表板をさわっていたら『パキッ 』という音とともにバスバーが外れてしまい、この景色となりました。表板を開けなければ このバスバーは響胴のなかで脱落し 「カラカラ」と音をさせていたはずです。  Pygmalius “REBIRTH” Series  Violin, 2001年
  Weight without chinrest  410.0g

これが脱落したバスバーをE線側から見たものです。
Pygmalius “REBIRTH” Series  Violin, 2001年
Weight of the top plate78.9g ( including bass bar 5.9g )

このバスバーは 長さが 275mm、 上下スペースがネックブロック側 39mmのエンドブロック側 40mmで、厚さは 写真向かって左のネック側端が 5.5mmで駒部 6.4mmのエンドブロック側端が 5.8mmです。

そして バスバーの高さは、駒部が 11.6mmで両端が 4.5mmとしてあり バスバーが厚すぎたことで極端に剛性が高まり この高さでもアウトとなりました。

なお、このヴァイオリンのあご当て無しでの重さは 410g程で、そのうちバスバーの重さは 5.9g、 バスバーがない状態の表板は 73gでした。

悲しい状況証拠ですが、この”ピグマリウス”は 響胴の変形疲労のために、魂柱( Soundpost )が立っていた部分が表板、裏板ともに窪んでいました。これこそ、バスバーが響胴と調和しておらず”鳴らすと壊れてしまうヴァイオリン”の典型例だと思います。


Pygmalius “REBIRTH” Series  Violin, 2001年

製作されてから わずかの期間しか経過していないのに”満身創痍”といった状況ですね。

そして、2008年にバスバーの高さが 15.0mmで製作されたヴァイオリンで、“16年後”の2024年に表板が扁平となりバスバー両端が剥がれたのも同様な事例となります。

December 15, 2024  /  Genji Matsuda Violin, Newark 2008年
Weight without parts  361.3g
●  Weight without chinrest  406.7g
Total weight with chinrest  472.5g

       
December 15, 2024  /  Genji Matsuda Violin, Newark 2008年

バスバーの尾根を尖らせ三角断面とする工夫をもってしても、その高さが 15.0mmもあると 表板の振動と適合させるのは難問です。

それは、上の写真に写っているバスバー両端の剥がれぐあいからも判断できるのではないでしょうか。

December 15, 2024  /  Genji Matsuda Violin, Newark 2008年

また、このようなバスバー端の剥がれを嫌って 現在、修理中のヴァイオリンのように、製作時に バスバー端に”剥がれ防止ニカワ”を垂らして剥がれを阻止したものもあります。

December 5, 2025  /  16:33  Violin, 1980年頃
Weight without parts  414.5g
  Weight without chinrest  460.0g
Total weight with chinrest  510.3g

しかし、これらのバスバー剥がれは表板の”つり合いの破れ”が原因ですから、そのニカワ加工により歪がより増大し バスバーが反対側( 上写真 サドル中央左 )の割れを誘引したり、中央の継ぎ目が開いたりします。このヴァイオリンは30年以上使用されていなかったために、製作されてから“45年後”にバスバーが入れ替えられたことになります。

1980年頃 Violin, bass-bar height 13.2mm  /  Weight of the top plate90.6g 

December 5, 2025 / 16:40  Violin, 1980年頃

December 23, 2025 / 19:32

それから、Charles J. Rufino氏が 2008年に製作した ビオラ( 402mm ) は、魂柱のめり込みからも分かるように 使用して数年で疲労変形が進み鳴らなくなりました。

そのため 困り果てた所有者の依頼により、製作されてからわずか6年後でしたが…  私がバスバー交換などを実施しました。

Charles J. Rufino  /  Long island, New york : Viola( 402mm ) 2008. Bass-bar height 14.9mm  / Bass-bar thickness 6.0mm / Weight of the top plate101.1g / Weight without parts 530.0g
●  Weight without chinrest  592.0g

Viola( 402mm ) Bass-bar height 15.0mm / Bass-bar thickness N5.4mm – B5.6mm – E5.5mm / Weight without parts 495.0g
  Weight without chinrest  555.4g


これが、2013年12月に “自由ヶ丘ヴァイオリン”において 製作したバスバーです。このビオラは 私が定期整備を担当しており、2026年現在でも良好なレスポンスや響きを発揮しています。

   

左:  疲労破損模型  /  右:  修復後資料( 左右反転画像 )


“応力つり合いモデル”

ともあれ こういった不具合を生じさせないように、私は “ねじり”を阻害しない配慮をしながら バスバーの最大化を進めました。

Antonio Stradivari (ca.1644-1737 ) Cello “Stauffer / ex Cristiani” 1700年

July 30, 2023  “Old Italian Cello, ca.1700”  :  Arch height 33.6mm / Bass-bar height 27.9mm
February 13, 2024  Cello “adaptation” made around 1989 : Bass-bar height 27.9mm  Joseph Naomi Yokota  Cello, Tokyo anno 2025 / Arch height 32.0mm / Bass-bar height 29.6mm 

例えば 半年前に製作したチェロのバスバーは 高さ29.6mmで、それなりの”大型バスバー”となっています。

これは 自作チェロですから 不連続形状アーチの剛性も、意図的に設定しています。ですから表板アーチの頂点などと 内部のバスバーは初めから適合する設計となっています。

Joseph Naomi Yokota  Cello, Tokyo anno 2025
Joseph Naomi Yokota  Cello, Tokyo anno 2025

このときに大切なのは、バスバーの頂点位置を二つのF字孔下端を結んだラインと、全長の1/3分割ラインに挟まれたゾーン付近まで下げて、強い非対称型として 響胴の”ねじり”を誘導することです。Joseph Naomi Yokota  Cello, Tokyo anno 2025

また、バスバー自体が単純な板状でなく”ペンデンティブドーム”や”ダヴィンチ橋”のように「積層」されている、あるいは不連続に接合され 節として機能するポイントと、特定方向からの応力に対応した“ねじり”が生じやすい部分とに彫り分けてある必要があります。

  “仮想交差節”という考え方

   

これは 一見しても識別しにくいでしょうから、参考として 上の 2025年自作チェロのバスバー写真を縦方向だけ5倍とした画像を下にあげておきます。

それから、このように彫り込む以外の技法として、下のドイツ製ヴァイオリン・バスバーのように 加熱した針状の治具で 点々と突き刺し、このポイントで”ねじり”を誘導したものもあります。

下写真のバスバーを 縦方向のみ5倍にした画像
同様に 1870年頃のヴァイオリン・バスバー画像を縦方向のみ5倍にしたものも上げておきます。
Giovanni Baptista Guadagnini ( 1711–1786 ) “Tener viola” Original bass-bar 1757年
February 13, 2024 21:25 /  Cello bass-bar / “adaptation” made around 1989 : Bass-bar height 27.9mm February 13, 2024 21:25 /  Cello bass-bar
October 30, 2025 17:05 / Violin bass-barOctober 30, 2025 17:05 / Violin bass-bar  ( November 8, 2025  “改作”したヴァイオリン )

なお、このような機能設定は 表板が平らな弦楽器の力木や 鍵盤楽器の響胴にも見ることができます。Lute  /  CHRISTOPH KOCH  1654年

たとえば、リュートやマンドリンのような平面響板弦楽器では、表板内側に取り付けられたバスバー端がサイド側と接触しないように製作されます。

つまり これらの複数バスバーは平面響板である表板にのみ作用するように設定されているわけです。

そして、響胴のサイドとスペースを設け 剛性を上げない設定はハープシコードにも見ることができます。

“Mandolin” /  Castello Sforzesco ( Milan ) ,inv. No. 212 from 1759.

それから このマンドリンでいえば、弦方向に直交する関係とされた複数のバスバーがそれぞれ適度に傾斜していて”非平行”に取り付けられています。

これは ヴァイオリン属も含めた多くの弦楽器が”非対称”で製作された理由でもあります。

このように、ハープシコードの場合でも 底板に取り付けられた複数の横木がそれぞれ適度に傾斜しており”非平行”としたバランス設定を見ることができます。

なお、この横木端には下写真の製作中のものとおなじようにスペースが設けられ、側板と接続することで剛性があがりすぎて”ねじり”が阻害されることのないように工夫されています。

ところで、ハープシコードの場合 この複数の横木の上に響板が置かれますので、この横木は”インシュレーター”の役割をもっています。

そもそも… なのですが、楽器にとって固有振動を安定的な響きに役立てるのは 意外と難儀です。それは 音響機器のスピーカーで 簡単に検証できます。

音響機器のスピーカー性能にこだわる人は、下に”インシュレーター”と呼ばれている敷物を挟んだりします。小さなスピーカーでも 机や床とスピーカーの間にインシュレーターを挟むと音が良くなります。
From a Facebook post dated October 1, 2025

なお、インシュレーターの置き方には4点支持と3点支持があります。4点支持はいうまでもありませんが、3点支持はスピーカー正面に対して次のどちらかを選びます。

  

このような、スピーカーの固有振動を妨げない工夫により 響きは豊かにできます。

振動体について このようなイメージがあると、楽器の固有振動に関しての気づきを たくさん得ることができます。¹ Grand Piano by “Erard” Paris, 1844年

“The Liszt House” in Weimar / “C. Bechstein Pianofortefabrik” Berlin, 1860年頃   Franz Liszt( 1811-1886 ) / Carl Bechstein( 1826-1900 )


たとえば、グランド・ピアノに採用された足の数は、スピーカーに敷くインシュレーターの3点支持と似ていると思います。インシュレーター ( insulator )とは、何らかの作用の遮断を目的として用いる”絶縁材”を意味します。

それと、足部の断面形状は 振動が”密”から”疎”へ移っていく現象を鑑み、円錐形と節となるリング状の突起やくびれが組み合わせてあり、さらに先端部をキャスター状とすることで ピアノが床を鳴らしても、 床からピアノ本体の方向には振動が戻りにくい設定となっています。血管の静脈弁みたいですね。

大事なことですが、電線をながれる電流などと同じように横波( S波 = 二次波 / Secondary Wave )は 進行波、反射波とも中心部ではなく 外辺部を通ります。ですから これらの装飾にみえる凹凸は、想像以上に 響きに直結しているのです。

Grand Piano by “BLÜTHNER”  Leipzig, 1870年頃Grand Piano by “Maison Erard” Paris, 1891年Grand Piano by “Maison Erard” Paris, 1897年
Grand Piano by “Maison Erard” Paris, 1906年
( Custom-made with the chrysanthemum crest. )
° Grand Piano by “Erard” Paris, 1914年º Grand Piano by “Erard” Paris, 1914年

“Grand piano legs”

さて 話をもどしましょう。上のマンドリン内部のバスバーは小部品ですから多少傾斜していても“非平行”であっても 、一見しただけでは 大きな意味を持っているように思えないのも仕方がないかもしれません。

しかし、底板に付属するとはいえ 同様な設定であるハープシコードの横木には その曖昧さがありませんので、意識的にランダムな現象に対応する”ねじり”設定であると理解ができるのではないでしょうか。

上図の赤色で表したヴァイオリンや チェロバスバーに”仮想の複数バスバー”が交差するポイント仮想交差節 6~7カ所で、その断面形状… 特に尾根部の不連続成形をもって 表板のねじりを誘導するという発想はなかなかすばらしいと思います。

その私も 1800年代のものと推測できるバスバーをいくつか観察していて その不連続性に気がついたときは、その有効性に関しては半信半疑でした。

しかし、実際に試みたときに それは杞憂であるとわかりました。

技術的にも左手で表板を水平に保持し軽くゆらして反応をみながら、望ましいと考えられるポイントを彫り込み、表板のゆれ方が より”しなやか”であるように工夫するだけですので それほど難しくありませんでした。

知られているように、ヴァイオリンの黎明期に作られたバスバーは長さも短く、厚さも3.5~5.2mm辺りで、高さも5.0~6.5mm程だったようで、当初は表板の剛性を極端に高くするものではありませんでした。

しかし、1600年ころから器楽合奏の需要が増加したことに対応する工夫のなかで バスバーの長さはもとより、厚さ、高さ、そして尾根部頂点もふくめた断面形状に 変更が加えられていきました。

そのなかで 非対称バスバーが着目されたようで、 1721年製ガリアーノ・ヴァイオリンに入れられたバスバーのように、すでに18世紀初頭には採用する弦楽器製作者がおり、20世紀初頭までのヴァイオリンなどで 時々 見ることができます。Old Cello

そのような事柄を念頭に置いた上で、私は 検証実験として2020年製 表板アーチが16mmの”起伏に乏しいタイプ”として製作された新品ヴァイオリンを改作し、バスバーを 高さ14.8mmで作り響きなどの確認をおこないました。

●   Let’s go back two months.
2020年 Violin, September 25, 2025 / 9:27
I started remodeling on this day. 

Weight without parts  375.0g
2020年 Violin, September 27, 2025 / 15:26Gio Batta Morassi( 1934-2018 )  Violin, 1994年 
Body weight  265.0g  ( Weight of the back side body  183.5g  )
2020年 Violin, September 24, 2025 / 18:22
Body weight  239.5g  ( Weight of the back side body  156.5g  )
2020年 Violin, September 24, 2025 / 18:46
Fingerboard  70.6g  /  Nut  1.0g
Head( after tuning peg holes ) and neck  64.7g
Total neck weight 136.3g
2025年 Tokyo.  October 8, 2025 16:48 
Fingerboard  51.0g  /  Nut  0.6g
Head( after tuning peg holes ) and neck  56.9g
Forged iron nails  3.75g → Neck side( estimated ) 1.5g
Total neck weight 110.0g
November 16, 2025 / 15:51 
Body weight  220.0g  ( Weight of the back side body  147.3g  )

2025年 Tokyo.  The thinnest zone is 2.1mm, and the thickest zone is 3.7mm.November 8, 2025  

  因みに、私が製作したこのバスバーには”仮想交差節”が 6カ所あります。
November 08, 2025 / 11:44    Weight of the top plate72.7g ( including bass bar 6.1g )

●  “焼成釘穴”に鍛造鉄釘を埋め込む工程

2025年 Tokyo.  November 14, 2025  15:55  /  Violin
November 14, 2025  20:22   /  Weight of forged iron nails 40.8mm-1.6g / 30mm-1.12g / 26.7mm-1.03g  Total 3.75gNovember 14, 2025  21:01
November 14, 2025  21:02
November 14, 2025  21:03
November 14, 2025  21:04November 14, 2025  21:06
November 14, 2025  21:06
November 14, 2025  21:13
November 14, 2025  21:14
November 14, 2025  21:20
November 14, 2025  21:21
November 14, 2025  21:22
November 14, 2025  21:24

この実施例は 撮影のために 23分間ほどかけています。通常は、鍛造鉄釘の温度が急激に下がるので、手元周りに必要なものを配置して素早くおこない、 15分程でこれらの工程を済ませます。

私が、2025年に製作したチェロに鍛造鉄釘を埋め込むときも、このヴァイオリンと同じやり方で、埋め込む鍛造鉄釘そのものを加熱して釘穴の成型をおこないました。

April 26, 2025 5:04  /  Location of forged nails

 

November 13, 2025 / 11:21   Body weight  220.0g 
November 17, 2025 / 14:36  Weight ( without parts )  330.0g
November 28, 2025  :  Violin completed
Weight without parts  330.0g
●  Weight without chinrest  371.1g

November 30, 2025 / 17:47
Total weight 415.6g ( Includes chin rest  46.0g )November 30, 2025 / 17:48

November 30, 2025  17:49
Total weight 415.6g ( 369.6g+Chinrest 46.0g  /  Dominant strings & 0.26 Gold brokat E )

The 14.8mm bass bar violin was handed over to the violinist on December 2nd. It will then be used next Wednesday ( December 17th ) from 7pm for a concert of Ravel and Debussy sonatas and piano trios. I’m looking forward to enjoying the sound of the violin from my seat in the hall.

December 17, 2025

December 17, 2025 / 13:10
Preparations for the concert begin.

The air conditioner, which has just been turned on, it makes a driving noise.

Program

  1.  モーリス・ラヴェル( 1875-1937 )  / ヴァイオリン・ソナタ ト長調 ( 1927年 )
  2.  モーリス・ラヴェル  /  ヴァイオリンとチェロのためのソナタ ( 1922年 )
  3.  クロード・ドビュッシー( 1862-1918 )  /  チェロ・ソナタ  ニ短調 ( 1915年 )
  4.  モーリス・ラヴェル  /  ピアノ三重奏曲  イ短調 ( 1914年 )December 17, 2025   20:26

 

It was a good concert.
We enjoyed it.

 

Joseph Naomi Yokota.

CREED

This year marks the 1,700th anniversary of the Council of Nicaea.
In times of faith crisis, we sing the Nicene-Constantinopolitan Creed to thank God for giving us this wonderful faith.

Joseph Naomi Yokota