このヴァイオリンは 私が側板を復元しました。

 

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old-violin-a-mono-lこれは私が 12年前に販売したもので、所有者の方の希望により側板幅の復元を中心とした整備を先日、 総費用 ¥ 1,000,000- で行なったものです。ニス補修前の資料写真ですから 側板の裏板側の復元部が 分かりやすいと思います。

この楽器は 私が販売したときには すでに内部の表板側ライニング幅が 5.0 ~ 6.2mmに対して 裏板側ライニングが 2.0mm以下となっていたり、側板幅に対してエンドピン穴が不自然な位置となっていて 製作時より削られ改変されているのがあきらかでした。

もちろん それは販売価格にも反映されていましたので 承知のうえで所有者の方は購入してくださいました。

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それでも このヴァイオリンは 楽器としての性能が良好でしたので 購入者の方は10年以上の期間、 購入時の状態で愛用されていました。

ところが、その後に 私の自作ヴァイオリンを購入され弾き比べるうちに 「 新品でオールドの音がさせられるという事は、はじめに購入した『 オールド・バイオリン 』はもっと凄い音がさせられますよね!」とお考えになり、「 この際ですから 費用は構わないので 徹底的な整備をお願いします。」となりました。

因みに この方は 原子炉技術関係者なので「 響胴内の空間形状を考えると‥ 側板は 調和可能な最大値としてください。」とのことでしたので 私がこの数値を決定しました。

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さすがに側板のほかに ブロック入れ替えやライニング、継ぎネック、バスバー交換、指板、ナット、サドル、駒、魂柱の作り直し、表板ブロック部修復や ペグ、テールピース、エンドピン交換など‥ 考えられるすべての変更をおこないましたので 組み立てて響きを確認するまで私は緊張し続けました。

しかしそれらは、整備後の音を聞いた瞬間に報われました。
それは 大きな達成感を私にもたらし、依頼者を十分に満足させるものでした。

それにしても 表板アーチが 20.7mm、裏板アーチが 19.1mm のヴァイオリンで 、側板幅がネック側 29.7mm で、エンド側が 32.9mm は凄かったです‥ 。

2016-10-18   Joseph Naomi Yokota