イタリア映画 『 マレーナ ( Malena ) 』 は 一生記憶に残ると思います。

2000年に公開された イタリア映画 『 マレーナ 』 ( Malena )は 歴史にのこる名作だと思います。 監督は1956年にシチリア生まれで、 16歳の時に2つの舞台演出と短編映画の監督をおこなって テレビ局 RAIの目にとまり 79年よりドキュメンタリー作品などの監督をし、 86年より映画監督にデビューし 『 ニュー・シネマ・パラダイス 』 や 『 海の上のピアニスト 』 などを製作した ジュゼッペ・トルナトーレさん。 サウンド・トラックは もちろん エンリオ・モリコーネさんです。 ジュゼッペ・トルナトーレ監督は 2作目の 『 ニュー・シネマ・パラダイス 』 以降は彼とコンビを組んでいます。 モリコーネさんは トルナトーレ作品の時は シナリオを書くのと並行して音楽作りをおこなっているそうです。 ジュゼッペ・トルナトーレさんが監督した作品では必ず音楽は注意深く使用されており、 『 マレーナ 』の劇中では マレーナの テーマのように 主人公のレナートが繰り返し1943年の流行歌 『 MA L’AMORE NO』 を 聞くシーンなどが とても効果的に使われています。

映画 『 マレーナ 』は主人公の13歳の少年 レナート ( ジュゼッペ・スルファーロ )の切ないあこがれの記憶によってノスタルジックな青春映画として整えられているとともに、撮影・美術・衣装・音楽などの主要スタッフが 『 海の上のピアニスト 』 から引き続き担当し アカデミー賞2部門にノミネートされるほどの映画としての完成度が高い作品です。
そしてこの映画はもう一人の主人公の 寡黙な美貌の女性 マレーナを演じた モニカ・ベルッチの 圧倒的な魅力とその存在感によって はじめて完成が可能であった、 彼女の映画でもあるといえるでしょう。 正確な言い方をすれば マレーナに憧れる少年の話ではなくて、少年の目を通して語られたマレーナの物語は だからです。

ご存知の方も多いでしょうが 一応ストーリーを書いておくと、 戦争が始まって間もない1940年晩春のシチリア島の海辺の街 カステルクルトで暮らす少年 レナートは12歳半でした。 彼は 近所の悪ガキたちと同じように 『 年上の女 ( ひと )』 であるマレーナに夢中でした。 彼女は海岸沿いの家に住み 結婚してすぐ夫が戦争に招集され 夫を想いながら一人暮らしを続け、 目の見えない父の面倒をみています。 はじめて マレーナを見た レナートは彼女の美しさに釘付けになり、 彼女の虜となりました。( 上の写真のシーンです。 ) ところが 彼女に魅入られたのは レナートだけではありませんでした。 そのころ 街じゅうの男達が マレーナに熱い眼差しを送っていました。 そして街の女たちは彼女に嫉妬の念をもち口ぐちに陰口を呟くのでした。 しかし マレーナは そんな周囲のことなど眼中になく夫のことだけを想っていました。 ところが ある日 マレーナのもとに夫の戦死の報が伝えられ、ただ一人の身寄りである父親が空爆で命を落とすという不幸が続き、 彼女の人生が一変していきます… 。 戦時下で生きていく術をなくした彼女は 街の有力者や進駐ドイツ軍将校に身をまかせるしかなくなり、それも行き詰まると彼女は悲惨な決心をします。 そして過去の自分と別れるために一人で髪を切るのです… 。 そうして彼女は 『 娼婦 』 となりました。

憧れの女神であるマレーナの人生が悲惨な転落の一途をたどっていっても、 幼い レナートは ただひたすら見守ることしか出来ませんでした。 映画の前半はレナートのあこがれと 妄想とがごちゃ混ぜになったような マレーナへの想いが展開し 思春期の性的欲望から 『 偏執的 』 以上に 『 変質的 』 だったりする行動まで含めて 想いが募っていきます。 後半ではこの思い入れの深さゆえ周囲に毒されないで 唯一の彼女の味方、 良き理解者になれます。 でも傍観者でいることしかできない彼は マレーナに手を差し伸べることができず 切ない思いをつづけます。

この映画はレナートとマレーナの実際の接点がない状態で延々と話が進み 彼は、すこし 『 偏執的 』 なくらいに後を追い 飽くことなく見つめ続けながら愛し続けますが 映画の最後でその世界を自ら壊すことによって その人が幸福になることを選択することで終わります。
映画の最終シーンで人間的に成長を遂げたレナートが はじめて…そして最後の接触をします。 マレーナが落とした果物を拾いあつめ… ことばを交わし目が合います。 彼女の後ろ姿に レナートは 『 お幸せに、 マレーナさん… 。』 とことばを掛け、 彼女を 振り返り、 振り返りながらはじめて彼女をみた浜辺の道で自転車を走らせます。カモメが舞う浜辺。 すばらしく 美しい映像です。

私はこの作品を 別の映画を渋谷の映画館でみたときのプロモーション・フィルムで 知り見たいと思いました。 まるで 映画の中の少年のようですが マレーナ役の モニカ・ベルッチさんの美しさに頭をなぐられたようでした。 プロモーション・フィルムの短いシーンですが惜しみなくさらされた彼女の圧倒されるような裸をいきなり愛してしまいました。
私は男性なので異性の方には恐縮ですが 顔立ちはもちろんあのすばらしい胸のふくらみや美しい手足や首筋に連なる生命力にあふれるからだには、すぐ自分の下半身が反応してしまうほどでした。  映画 『 マレーナ 』に出会う前には 古いお話しとなりますが、以前 映画でみた女性に一目みただけで愛してしまったことが一度だけありました。 それは私が大学生の時の話で深夜テレビで1972年に制作された パラマウント映画で 1923年生まれのフランコ・ゼフィレッリさん( 映画『 ロミオとジュリエット 』 で有名ですね。)が監督し制作された 『 ブラザー・サン シスター・ムーン 』 で彼女を一目みたときでした。  映画は カトリックのフランシスコ修道会の創立者である聖フランチェスコを生涯を題材にしたもので、舞台は13世紀のイタリア・アッシジで裕福な服飾商人の息子として育ったフランチェスコが信仰に目覚めてからすべてを捨てて 伝道生活に入っていくというお話しで、 主人公の フランチェスコを グラハム・フォークナーが好演し ローマ法王にイギリス・ロンドンに1914年に生まれ戦前から名優として知られた アレック・ギネスさん ( 『 マレーナ 』が公開された2000年8月に長い闘病生活の末 86歳で亡くなりました。)が見事にこなした名作です。

そのフランチェスコの心の姉妹となる クララ役の ジュディ・ボーカーさん( Judi Bowker )を見たときに私の心の声が 「 えっ!うそぉ…! 」、 「 かわいい!」のすぐ後は「 まいったなぁ…。」 「 いるのか…こういう娘( こ )が本当に…。」 そして映画からは完全に頭がはなれてしまい 「 本当にまいったな…