18. 移動波源のための工夫

 

 

 

 

 

 

18ヶ所めのチェック・ポイントは 右F字孔にあります。  そして、これを見るにはF字孔の震え方を理解している必要がありますので その説明のために上図にいくつかの ” 節 ” を白線と白点線で書き込みました。  ここには焼いた針でつけた ” 焼痕 “が点々と並んでいてその端には ” 刻み目 “( the nick )が見えます。  これは 左下図の音叉にみられる 『 節と腹の関係 』と同じように” 節 ”( THE BASE )の外側が明瞭な  ” 音 ” をつくりだす為の工夫です。  この図に複数の ” 節 ” があるのは F字孔は ラインAからラインBの方向に向かって振動ゾーンが ” 移動 ” しながら ” 基音 ” を変化させ ラインBから先は 固定端反射の現象も利用して 一気に高い音域の楽音を発生させる工夫がされているからです。  このゾーンには詳しくみると 『 そこまで …!』 と思うほど細かい加工がされていたりします。 例えば 『 音波は縦波なので壁に垂直に入射するときは固定端反射となる。』 という物理現象が頭にあって上の写真を観察すると 「 比重 7.65 」の文字左横の白丸の下の ” スジ状焼痕 ” や、その外側の二つの ” スジ状焼痕 ” は 『 からの反射波が垂直に入射し固定端反射となるように加工されている。』 と考えられます。 拡大図でみると違和感がないでしょうが 実際の大きさは 米粒レベルの細やかさとなっています。

 この説明に使用させていただいた Andrea Amati ( c.1505~1579 )が 1566年頃制作したヴァイオリン ” Charles Ⅸ of France ” ですでに これらの指摘した要素が完全なかたちで取り入れてあるのを私は 実に興味深いと思います。

 

F字孔の震え方は 簡単に実験が出来ます。 皆さんが寝具にお使いの シーツ( 縦長で薄い方が望ましいのですがタオルでも代用できます。) を広げて 下左の四角形図の 点Aと点Bを両手で持ち 、点Aがあまり揺れないようにしっかり持って 点Bを持つ手を上下に振ると対角の点Dが激しく波打つのが確認できます。  これは三角フラッグの先端が激しく揺れるのと同じ現象です。 物理では点Dが揺れるのを 『 反射波 』による現象と説明します。

そして上左図( 青色 )の点Dも 点B側から周り込んで来た波が 一気に集約され空気を激しく震えさせるように設計されています。

点Dが 最初に激しく波うちます。

弦楽器の響きの内で 『 高い音域 』 は F字孔周りに集まっているので、細やかに観察してみてください。
そうするとオールド・ヴァイオリンでは 18ヶ所目のチェック・ポイントである 『 F字孔周りに進行波が音を生み出し易いようにや、固定端反射を意識した加工 』 が入っています。