弦楽器工房からのアドバイス ( バイオリンのアジャスターについて。)

ヴァイオリンに限りませんが ‥ 今日では 弦はもとより肩当て、あご当てや テールピース、エンド・ピン、松脂など多くの関連製品が 考案され発売されています。

そこでこの投稿では ヴァイオリンのE線に使用されるアジャスターを例として、私の判断の仕方についてお話しをしようと思います。

冒頭の画像は17年前の 1998年に私が購入した チタン製の軽量アジャスターです。

この時期に一般的に使用されていたアジャスターは アーム式が 4.8g ~ 6.4g 位で ヒル型は3.0g ~ 3.8g でしたので、このチタン製アジャスターの 2.2g は画期的な軽さでした。

私はこの新製品に関する情報を耳にするとすぐに 5個取り寄せて( 当時‥このアジャスターは『 えぇ~ っ!』という声が出るくらい高価でした。)性能試験をおこないました。

メーカーの説明では軽量であることで E線の響きが良くなるとのことで‥ 実際に 私も 7台のヴァイオリンで良好な結果が確認できました。
そこで次の段階として私は ヴァイオリニストの方におすすめして使用していただきました。
これにより音響上の効果がさらに確認できましたが しばらくしてこの方から『 ネジ部の摩擦のためにネジが重く 演奏中の微調整が不安です。それと‥ 取り付けた時より響きが落ちた気がします‥ 。』との申し出があったので ゲッツ( Conrad Götz )のヒル型アジャスターに再交換することになってしまいました。

このため私はこのチタン製アジャスターの使用を中止してお蔵入りとしました。
私にとって 残念な記憶ですが‥ この時にゲッツのアジャスターの検証を実施しました。

ここから そのお話しをさせていただきます。

ゲッツ( Conrad Götz )のヒル型アジャスターは上写真のようにゴールド、シルバー、ブラックの 3種類が販売されていて 重量はどれも 3.6g です。

私は これらのアジャスターを同じヴァイオリンに取り付けて それぞれの響きを確認してみました。そしてこの比較実験によりゴールドが E線の響きを一番強めることなどが確認できましたので‥ その理由の検討をおこないました。

 

あれからだいぶん月日が経過しましたが 私は現在でもこの事例は ネジ部のゆれ方の差が私が実験に用いたヴァイオリンの響きの差を生じさせたと考えています。

さて、その検証方法です。
上写真のように 3種類ともネジ部の重さは 1.1g です。

小さいネジですから色以外に違いはなさそうですが‥ 下の写真のようにネジ部下端をつまんで振ってみてください。 実験してみると 思った以上にゆれ方の差があることが確認できると思います。


この実験では3個とも 1.1g なのにゴールドが 最も重く ついでブラック、そしてシルバーは軽く感じました。

私はこの原因は上写真にあるようなつまみ部の微妙な”立体的形状の差” とメッキ部と基金属の比重差などが影響しているのではないかと推測しています。

現在このアジャスターは Amazonで 1個が 1600円程度で購入可能ですので 興味がある方には 同じような比較検証実験をおすすめしたいと思います。

ここまでお話ししましたように 私はアジャスターはテールピースのゆれ方に影響することで弦楽器の響きを左右しているパーツだと考えています。

アジャスターネジ部には ラインストーンを貼るタイプや GEM STONEのような商品から‥ その下にあげさせていただいた高額商品までいろいろあるようです。

私もそれなりに試してみましたが‥ これらの製品による効果をもとめるのであれば‥ その響きはテールピース由来であることを意識してその設定をそれぞれの弦楽器の特性に適合させる工夫をしたほうが 安定的でより効果的な響きが得られると考えるようになりました。


天然石アジャスターネジ GEM STONE /Adjuster Screw #11408 パール
( スクリューのみ ) for Wittner 906-044  税込 2,500円


( 装着事例 )
 
Adjuster Screw with GEM STONE  for Wittner 902/904 シリーズ(  税込 2,000円 )
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ヴァイオリン・ビオラ用 グリーンアゲート+ピンクジルコニア
価格 ¥10,500( 税込¥11,340 )

 


チェロ用セット レッドアゲート+シャンパンガーネット
価格 ¥35,000( 税込¥37,800 )

http://office.chatblanc.biz/index.php?%E3%83%90%E3%82%A4%E3%82%AA%E3%83%AA%E3%83%B3%E3%83%BB%E3%83%93%E3%82%AA%E3%83%A9%E7%94%A8

冒頭でご紹介した 重量 2.2gのチタン製軽量アジャスターネジ部は 下写真のように 0.7g でした。 私は これもゲッツの 1.1g 達と同じようにゆらしてみました。ねじ質量は ゲッツ・アジャスターネジより0.4g 軽いのに 私は逆にゲッツ・ゴールドネジより重く感じました。

結局‥ 私は 1998年に評価した軽量アジャスターの響き特性も下写真にあるように 厚めのつまみ部のゆれの強さによるテールピースのゆれの変化によるものだったと思っています。

さて ここで 私が31年間で学んだ重要な経験則を書かせていただきます。
ヴァイオリンやチェロはアジャスターのゆれ条件を変えることで、テールピースのゆれ条件が変わり響胴に加わる応力も変化し しばらくの間 響きに輝き感が増したりすることがあります。

この変化はしばらく鳴らし続けると響胴の応力モードが切り替わる(  響胴が変形し終わる )と同時に効果が消えてしまう‥ というケースに つながります。

それから 弦楽器それぞれの特性にもよりますが‥ アジャスターにより ヴァイオリンの E線の輝きが増したと喜んだ次の瞬間に となりの A線や D線の音量が落ちてしまったことに気がついたり、低音側の残響が短くなってしまって響きが淡泊になってしまった事もありました。

私は ヴァイオリンなどの弦楽器にとって 4本の弦の音量や音色がそろうことはある意味では高音がさえる事以上に大切なことで‥ 弾き込むと鳴りがつまってしまったりしないようにパーツを響胴と調和させることを考慮するべきと考えます。

これによってあなたのヴァイオリンも驚くほど美しい響きをうむはずと‥ 私は信じています。

では、本日はここまでとさせていただきます。
ありがとうございました。

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Josef Naomi Yokota

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